1年生から意識したい、答えを出すより大事な「算数の意味・しくみ」
「1年生の単元は簡単だし教えられるから見直さなくても大丈夫」ではない!?
1年生の算数というと「まだ簡単だから、まさかつまずいてはいないだろう」「中学年や高学年になって単元が難しくなってから見直しをしていけばいいのでは」と思うご家庭が多いと思います。しかし、中高学年のつまずきを減らす重要なポイントが「1~2年生の単元」のなかにあるのをご存じでしょうか。
実はこの算数、6年間を通して「考え方の基本」「性質」「しくみ」をつなげて、新しい発想を盛り込みながら少しずつ難しくなっていく教科です。各単元の計算ができて答えが合っていれば安心、ということではなく、その計算や単元の意味やしくみをしっかり理解しているかどうかの方が重要になります。
そこで、学年が上がる前の春休みには「性質・しくみ」をわかっているかどうかの振り返りをぜひ意識してあげてほしいのです。どうしてもテストでは「答があっているかどうか」を見ていくので、正解できているかどうかばかりに目がいってしまうかもしれませんが、ここをおざなりにしてしまうと、前の学年で解けていたのにいつのまにか分からなくなってしまうこともあるので注意が必要です。
それでは1年生から具体的に見ていきましょう。
足し算・引き算の「式の意味」を言えるかどうかをチェック
1年生と言えば「足し算、引き算」が大きな単元になります。「うちの子は繰り下がりが苦手だな」「繰り上がりが確実ではないかも」くらいなら思い当たる部分もあるかと思いますが、「足し算とは何をすることか」「引き算は何をすることか」について、子どもは説明できているかどうか、聞いたことありますか? パッと思い浮かぶのは「足す」ならある数に「加える」「増やす」、「ひく」ならある数から「減らす」と親の方もざっくり思っている部分だと思います。
足し算・引き算には2通りの意味がある
実は、足し算は「A増える」「Bあわせる」もので、引き算は「A減る」「Bちがい」を求めるものです。そういわれると「まあ、たしかに」と思われるかもしれませんが、実はこのAとB、決定的な違いがあります。
Aの「増える」は、例えば「いちごが3つありました。もう1つもらったら全部でいくつですか」。「減る」なら「いちごが3つありました。1つ食べたら残りはいくつですか」という問題。このふたつの問題は「いちご3つ」という数をもとにして、いくつの増減があったのかを足し算や引き算で考えることができます。
子どもには難しいのですが、親御さんに感じてほしいのは「いちごの1人称の問題」ということです。「いちごが」いくつ増えたか減ったか、という問題です。
★いちごの問題①
一方、Bの「あわせる」は、例えば「花子さんがいちごを3つ、太郎さんが1つ持っています。あわせていくつですか」。「ちがい」なら「花子さんがりんごを3つ、太郎さんが1つもっています。ちがいはいくつですか」という問題になります。これは花子さんと太郎さんそれぞれの数を合わせたり、比較をして差を出したりする問題で、これも足し算引き算で求めることができます。
これもお子さんには直接言わなくていいのですが、親に知っておくべきは「花子さんと太郎さんの2人称の問題」だということ。そう考えると問題の質が全然違うことがお分かりになると思います。
式の意味の違いを知っておくわけ
このように、単に足し算・引き算と言っても「意味が違う2通りの問題がある」ということを分かっているかどうか、子どもに確認してほしいのです。単に増えるのか、合わさって増えるのか。単に減るのか、比較して違いを出すのか。
なぜなら、式の意味を知っておく習慣があれば、2年生のかけ算が出てきても、3年生の割り算が出てきても、その計算が持つ意味を考えようとするからです。式の意味を考えることができれば、問題を前にしたときに公式や解き方に当てはめることはせず「問題の意味が○○だから式は○○になる」を考えるようになります。
親御さんにしてほしい声かけはとてもシンプルです。
「いちごが増えたね(減ったね)」
「花子さんのりんごと太郎さんのりんごがあわさったんだね」
「いちごの数のちがいは2つなんだね」
これでいいので、子どもに何の式を作るかが見えるようにサポートしてあげてください。
足し算・引き算の式の意味は中高学年で生きてくる
補足ですが、Aのような問題は、5年生で「単位当たりの大きさ」「割合」が出てくるときに「もととなる数」を体感するのにつながります。また、Bのような問題は高学年の「和差算」で活用されていきます。
どちらも1年生から子どもへの声かけで算数感覚が育つので、ぜひ問題を見て計算の意味を確認する、と意識してみてください。
繰り上がり・繰り下がりの対処法は、親の声かけで
一方、繰り上がりや繰り下がりは「ケアレスミス」にあたるので、計算の中で「-7」を間違えるなら、「-7の計算を解き慣れるよう声をかける」など意識すれば大丈夫です。計算間違いはやりながら克服できるので、苦手な数字、苦手な計算は子どもの筆跡を見てみてください。どこかに計算ミスのあとがあれば、声をかけることで子どもの注意力が上がるので、いずれは直っていきます。計算技術は学校のドリルでもよくやっているので、「どこが間違いやすいか」を見て対策をしてみてください。
でも、意味やしくみは算数の中で大きな存在にもかかわらず「テストで〇だったから」と忘れてしまう部分。こちらのほうを意識して確認することの重要さ、これを親が知っているかどうかは大きいですね。
低学年から意識したい「位取り」の感覚
1年生でもう一つ確認するところを上げるとしたら、「位取りの意識を高めておく」ことです。位取りとは、1の位、10の位、100の位……のことですが、大きな数や小さな数の両方で生きる大切な感覚です。
例えば位取りがよくわかってない例として、以下のようなものがあります。
位取りがどんなことにつながるかというと、例えば3年生の小数で「15は0.1が何個?」という問題を解くときや、多くの子どもが苦手とする「単位換算」でも苦労してしまいます。
計算の多くは10進法、時計は60進法
そもそも計算や位取りは「10進法というルールで考えているんだよ」と知らせることも大切です。そこを知っていれば、のちの時刻や時間を考える単元で「60進法」があると知ったときに「数の世界はいろいろな位の上がり方がある」と分かるけれど、知らなければ唐突に「60進法がなぜ急に出てきたのか」と思ってしまいます。
小さな声かけですが「今やっている計算は10進法って言うんだよ。10ごとに位が一つ上がるでしょう?」をはさむのとはさまないのとでは育つ数の感覚は全然違います。
足し算引き算でも位取りの感覚が身につく
この位取りの感覚は本来1~2年生で意識させないことが多いのですが、足し算引き算をするときにサクランボ計算をすると位取りの感覚が身につくのでおすすめです。