言葉を変えると肯定的な見方ができるように
「声かけ変換」とは、普段なにげなく口にする言葉を、相手に寄り添った言葉に言い換えるコミュニケーションです。
どんな言葉を使うかによって、親の子どもに対する見方は変わっていきます。「うちの子はダメな子」ではなく「うちの子は大丈夫」と思って言葉を選べば、長所にも自然と目が向くもの。ほめ方や叱り方で悩んでいる場合は、声かけを肯定的な言葉に変換すると子どもに伝わりやすくなり、かつ、おうちの方も前向きな見方ができるようになります。
1~3歳のうちは言葉以外の要素も大切
1~3歳の子どもは言葉の意味をまだ十分には理解できないので、下の4つのポイントを意識すると、おうちの方の気持ちが伝わりやすくなります。
「声かけ変換」は、「こういう言い方をしなければダメ」というルールではありません。大切なのは、親子がともに無理せずにありのままを認め合いながら楽しく過ごせるようにすること。完璧を目指すのではなく、わが子に合った声かけを気長に探していくつもりで、肩の力を抜いて取り組んでみてくださいね。
声かけをするときの4つのポイント
①表情ははっきりと
嬉しいときはニコニコ笑い、怒るときは厳しい表情にして、喜怒哀楽の感情をはっきり示しましょう。子ども向け番組のお兄さん・お姉さんの表情をお手本にして、オーバーなくらいが伝わりやすいです。
②声のトーンにメリハリを
子どもを注意するときは、しっかり目を見て落ち着いた低めのトーンの声で話すと、大きな声を出さなくてもわかってもらえることが多いです。普段は穏やかなトーンの声で話し、ここぞというときだけ低い声にすることで、「いつもと違う」というギャップを演出しましょう。
③ボディランゲージも交えて
1~3歳児には、言葉で説明するだけでは具体的なイメージが伝わりにくいことも。「あと3回だけ」と伝えるのであれば、指を3本立てて、1回終えるごとに指を1本ずつ減らしていくなど、目に見える動作を交えるといいでしょう。ほめるときに頭をなでるなどのスキンシップも効果的です。
④物理的工夫も忘れずに
子育てでは、言葉で注意するのでは間に合わないときもあります。お風呂場のドアには鍵をつける、電気ケトルや薬は手が届かないところに置くなど、事故が起きにくい環境をつくる工夫も大切です。
声かけ変換にチャレンジ!
この記事では、変換前の声かけを「Before」、変換後の声かけを「After」として紹介しますが、どちらの声かけでもおうちの方が子育てをがんばっていることに変わりはなく、「Before」が悪い例で「After」が良い例というわけではありません。
「Before」の声かけでは伝わらなかったり、モヤモヤした感情が残ったりする場合には、子どもとおうちの方の双方を追い詰めずに効率的に伝える方法として「After」の声かけも参考にしてみてください。
ほめ方編
Before「スゴイね!エライね!」→After「 ○○できたね/○○しているね」
「スゴイね!」という声かけも決して悪くはないのですが、ほめるときは見たままの様子を言葉にすると、ほめ方がワンパターンにならずにすみます。拍手やハイタッチをする、頭の上で腕で大きく丸をつくるといった動作も交え、おうちの方も一緒になって喜びましょう。
Before「これくらいできて当たり前」→After「よくがんばったね」
生活習慣をひとつずつ覚えていく段階にある1~3歳の子どもにとって、「できて当たり前」ということはありません。ほめる基準となるラインを下げ、「今日も歯みがきをがんばったね」といった声かけをしていくと、普通の一日でも子どもをたくさんほめることができます。
Before「 ○歳なら、みんなできてるよ」→After「 少し前よりだいぶできるようになったね」
育児書などに書かれている「○歳ならこれができる」というのは目安なので、気にしすぎなくて大丈夫です。周囲と比較せず、その子自身の成長に目を向けると、「先週できなかったことが今週はできている」といった成長が見えやすくなります。
Before「わがままだなあ」→After「 意志が強いね」
子どもの短所は、見方を変えれば長所になることも。「落ち着きがない」は「行動力がある」、「デリケート」は「感受性が豊か」というように、長所と短所をセットにして肯定的に見ていくと、おうちの方自身の気持ちが楽になるはずです。
叱り方編
Before「○○しちゃダメ!」→After「△△しよう」
幼い子どもは「ダメ」と言われるだけだと、どうすればよいのかがわかりません。「お友だちのおもちゃを取っちゃダメ」と言う代わりに、「おもちゃを貸してって言ってごらん」と、やってほしい行動を具体的に教えるようにすると、子どもは言われたことを行動に移しやすくなります。
Before「静かにして!」→After「 これくらいの小さい声でお話ししようね」
乗り物の中や公共の場などで子どもに静かにしてほしいときは、どう振る舞えばよいのかのお手本をおうちの方が示しましょう。おうちの方がヒソヒソ声で話すようにすると、子どもはどれくらいの大きさの声で話せばよいのかがわかり、おうちの方の真似ができるようになります。
Before「ちゃんと片づけて!」→After「おもちゃはこの箱に入れてね」
「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」といった曖昧な言葉を使うと、どういう状態ならよいのかが子どもには伝わりにくいことも。「ちゃんと」とは、何をどうすることなのかを具体的に指示しましょう。
Before「早くしなさい!」→After「ゆっくりでいいよ」
「早くしなさい」と言ったところで、子どもが急にテキパキ動けるようになるわけではありません。おうちの方は最初から「ゆっくりでいいよ」という心づもりで行動し、洗濯物をたたむなど他のことをしながら待つほうがストレスを減らせます。
Before「なんで、こぼすの?」→After「 こぼしたら、ぞうきん
で拭けばいいよ」
子どもも大人も、失敗を経験しながら成長していくものです。「失敗したらダメ」と教えるのではなく、失敗したときは「どうすればよいか」を伝えていきましょう。こぼしたときの後片づけでイライラしてしまうのを防ぐには、テーブルに食事用のマットを敷くなどの工夫をしておくと効果的です。
Before「 にんじんも食べなきゃダメ!」→After「 にんじんさんが食べてほしいって言っているよ」
子どもは物語の世界を身近に感じやすいので、身の回りのものを擬人化した声かけをすると、そのものの気持ちを考えた行動が取れるようになることが多いです。衣類や歯ブラシのキャラクターの絵を擬人化した声かけで、着替えや歯みがきを促すのもおすすめです。
Before「もう~、ダメって言ってるでしょ~(苦笑)」→After「や・め・て!」
1~3歳児は、言葉の意味よりも、おうちの方の表情で何を言おうとしているのかを判断することが多いので、笑いながら「ダメ」と言われると混乱してしまいます。「やめて!」「ダメ!」と伝えるときは、優しい言い方はせずに真剣な表情で伝えましょう。
大場さん自作カード
失敗したときの対処法を絵で示したカードを用意しておいて、そのカードを見せながら「こうしようね」と教えるのもおすすめ。
「おうち標識」を作るのもおすすめ
禁止事項を伝えるときは、言葉で「ダメ」と言うだけではなく、目で見てわかる工夫をするとより効果的です。触ってほしくないもの、上ってほしくないところなどには手作りの標識を貼っておき、その標識を指し示しながら「ダメ」と言うと伝わりやすくなります。
大場さん自作カード
自分にかける言葉編
Before「自分はダメな親だ」→After「 自分はがんばりすぎている親だ」
子育てをしていると「完璧な親にならなければ」と考えがちですが、完璧を目指す必要はありません。改善すべき点があったとしても、おうちの方が自分自身を責める必要はないので、「自分はダメだ」と感じたら「がんばりすぎているんだな」と考えて心身を休めましょう。
Before「 あれも、これも、ちゃんとさせなくちゃ!」→After「 これって、今すぐ、どうしてもできないとダメ?」
今はイヤイヤがひどくて、ひとりではできないことがたくさんあったとしても、大人になっても同じ状態が続いている人はいません。1~3歳のうちは身の安全に関わるルールが守れれば大丈夫と考え、やるべきことに優先順位をつけましょう。
Before「 がんばります/がんばらせます」→After「できません」
子育ては、自分だけで抱え込まず、早めに「できません」と白旗を上げて助けを求めることも大切です。「ここまではできるけれど、これ以上は無理」という線引きを明確に。
Before「 これでは将来が心配」→After「なんとかなる」
子どもは可能性に満ちた存在で、短所も含めて「その子らしさ」です。先回りして心配しすぎずに、「なんとかなる」という楽観的なまなざしで、成長を見守っていけるといいですね。
教えてくれたのは
「楽々かあさん」の名前で発信。「声かけ変換表」は14万シェアを獲得。
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再構成/HugKum編集部