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子どもは言葉の意味よりも言い方・雰囲気で感じ取る
子どもに声かけはしてみるものの、親が言いたいことが伝わっているのか疑問に感じることもあるでしょう。ですが、声かけは、メッセージだけではなく、「あなたを気にかけているよ」という気持ちを伝える役割があります。声をかけることそのものに、大切な意味があるのです。
また、子どもはその内容よりも、怒っているとか、楽しそうとか、親が話す表情や言い方を見ています。誰だってたびたび怒られたり注意されたりすると嫌な気持ちになり、効果も薄くなります。叱るのはここぞというときにして、普段はやわらかい表情で、ポジティブな雰囲気の声かけを意識したほうがいいでしょう。
親と子は対等な立場であるとふまえた声かけを
ポジティブな声かけをするために必要なのは、親が気持ちの余裕を持つことです。日々子育てに仕事や家事で忙しいと思いますが、わずかな時間でも、心の調整ができるもの(下記・心得3か条)を見つけておきましょう。
また、“親は子どもより上の立場ではない”という意識も大切です。どんなに小さい子どもも、親とは別の人格を持ったひとりの人間です。会社の同僚や友達だったらどんな声かけをするか考えてみると、親が一方的に指示をしたり、頭ごなしに怒ったりするような言い方は出てこなくなり、自然とポジティブな表現に変わるはずです。
ポジティブ声かけの心得3か条
①子どもに決めてもらう
親が決めるのではなく、選択肢を示したうえで、どっちにするかは子どもに選んでもらいましょう。「こっちを選ぶとこうなるよ」と判断材料も伝え、自分で考えて判断する経験をさせましょう。
②「他人の子どもならどう声をかけるか」を考える
他人の子どもが失敗したとき、頭ごなしに注意せず、まずは「大丈夫?」と心配しますよね。そういう対応をわが子にも続けていると、子どもも親から言われたことを前向きに受け取れるようになっていきます。
③親が心を満たすことも大切に
おすすめは、ママパパ自身が好きな食べもの・場所・本・人・音楽・香りなど、自分の心を満たすものを6 種類見つけておくこと。あらかじめ決めておくと、時間がない中でも工夫して日常に取り入れることができます。
やめなさい!いい加減にして!と言いたいときのポジティブ言い換え術
とっさに強い言葉が出てしまいがちなシチュエーションも、ポジティブ言い換え術を知っておくと、余計な親子のもめごとが避けられそう。
✕「またやったの?」「前も言ったよね?」
【言い換え】大丈夫?
失敗を繰り返したとき、子ども本人も「やっちゃった…」と思っているはず。「大丈夫? 次はコップをこっちに置いておこうね」など、具体的な対策について伝えてあげたほうがいいですね。
親が想定するよりゆっくりかもしれませんが、子どもは確実に成長しています。しばらくは同じことを繰り返すかもしれませんが、いずれやらなくなりますよ。
✕「危ないからやめて!」
【言い換え】「あ、あれなんだろう?」
高いところに登るなど、危ないことをするのは「遊びたい」という気持ちから。だったら止めるより別の遊びに視点を動かしてしまうほうが得策です。「あれ何だろう。見に行こう」と誘いましょう。
「危ない!」という注意は、本当に危険が身に迫っている緊急事態で使うからこそ効果を発揮するものなので、普段はできるだけ使わず、別の声かけに言い換えてみて。
✕「忙しいから今は無理!」「後にして!」
【言い換え】「わあ!すごいね!」
「見て!見て!」の要求がしつこいとき。親も集中して作業をしているとつらいでしょうが、ほんの数秒手を止めて見てあげるだけで子どもは満足するものです。
もし「一緒にやろう」「手伝って」と言われたら「ごめんね」と謝り、「後でやるね」でいいでしょう。ただし、約束は必ず守ってあげてくださいね。
✕「おもちゃは順番に使うよ!」
【言い換え】「………(何も言わない)」
友達やきょうだいと物を取り合うこともひとつの学びなので、まずは見守りましょう。ただし、手が出てしまったときにはすぐに止めてください。
おすすめは、日頃から親が子どもに対して「先にどうぞ」と譲り方を示すこと。そうすると子どもが譲ってもらえる喜びを感じて、同じ行動ができるようになります。
早くして!と言いたい時のポジティブ言い換え術
子どもには子どものペースがあるとわかっていても、いつでも子どもに合わせるのは難しい……。でも、こんなふうに言い換えると親の気持ちもラクに!
✕「食べないならもう片付けちゃうよ!」
【言い換え】「少し減らそうか」
食事の際、食べるのが遅いと親としてはやきもきするでしょうが、ゆっくりなのがその子のリズム。声かけで子どものリズムを崩してしまうよりも、急がなくてすむように量を減らすとか、テレビを見てしまうなら消すとか、環境を変えていくほうがいいでしょう。注意をしなくてもいい仕組み、仕掛けづくりも大切です。
✕「パジャマで幼稚園に行くなんて言わないで、早く着替えなさい!」
【言い換え】「本当にそれで行くんだね?」
子どもが大人と大きく違うのは、ボキャブラリーと経験が少ないこと。親は経験して知っている望ましくないことも、子どもは経験してはじめて学ぶものです。一応「それを着ていくと恥ずかしいかもよ」とアナウンスはしておいて、子どもがそれでもいいと言うなら自己責任ということにして見守りましょう。笑える思い出のひとつになるかもしれません。
✕「早く決めないと先に行っちゃうよ!」
【言い換え】「どっちにする?」
たくさんの選択肢から選ぶのは大人も子どもも悩みます。ここは選択肢を減らすのが一番。10個選択肢があるならトーナメント形式にして、ふたつずついいほうを選ばせて、最終的に一番いいものを決める。そうすると子どもの趣味嗜好も見えてきます。
選んだものを後から「それは高いから無理」と否定するのは、子どもが混乱するのでやめましょう。
✕「公園に来たんだから、友達と遊んでおいで!」
【言い換え】「〇〇ちゃんが何しているか見に行ってみよう」
ひとり遊びに夢中になっている子は無理に友達と遊ばせる必要もないのですが、友達の輪に入るきっかけがつかめないようなら親が間に入るのも方法のひとつです。
お友達の近くに呼び寄せて、「大きなお山を作ってみようか」と親が誘い、「ふたりでここを手伝って」と一緒にできる共通の遊びを提案します。ふたりの遊びが軌道に乗ったら、親はその場を離れていいでしょう。
子どものタイプ別ポジティブ変換
わが子に対して「ちょっと育てにくい」と感じているおうちの方もいるかもしれません。ですが、「育てにくい」と言われたお子さんも、みんな個性を活かす道で活躍しています。
ほんの少し視点を変えるだけで、困った性質も子どもの長所に変換できるはずです。花の姿を知らずにまいた種のように、その成長をワクワクしながら見守ってください。
落ち着きがない → 行動力があって最高!
興味があるものを見つけて、そこに向かって動いていけるのは行動力があるから。すぐに飽きてあっちこっちに行っているように見えるけど、それは自分が深く入り込めるものを探索しているから。
そのうち親の目から見て「ほかのものより長く興味を持っている!」と思えるものが見つかるはず。子どもが入り込めるものを一緒に探して。
こだわりが強い → 専門家として大成するかも!
こだわりが強い子は、いくつもの作業を同時にこなすマルチタスクではなく、ひとつのことを徹底的につきつめるシングルタスク。何かの領域で専門家になる人が、このタイプです。
遊びでも何でも本人の心ゆくまでやってみることで「ここまでやると疲れる」と気づいて調整できるようになったり、将来につながる能力開発になったりします。
失敗を怖がりすぎる → 相手の気持ちがわかる!
失敗を怖がるのは、先を見据えることができている証拠。慎重に物事を進めてリスクヘッジをする能力があるのです。
また、こういう繊細で傷つきやすい子は、感受性が強く相手の気持ちがわかる子です。親が心から喜んだり楽しんだりしていることを敏感に感じ取るので、親子で一緒に楽しむ経験や、率直な言葉で褒める機会を増やすと良いでしょう。
教えてくれたのは
『めばえ』2022年9月号 イラスト/石塚ワカメ 文/古川はる香 構成/童夢
親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。
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再構成/HugKum編集部