畳の構造と張替えが必要な理由
畳は、主に三つのパーツで構成されています。まずは畳の構造や経年劣化による影響、対策について解説していきます。
畳は主に3つのパーツでできている
畳は大きく分けて、三つのパーツで構成されます。一つ目のパーツは「畳床(たたみどこ)」です。畳床は畳の芯となる部分で、次の三つの素材があります。
稲藁を用いた「藁床」、ポリスチレンフォームを藁と藁の間にはさんだ「藁サンド」、ポリスチレンフォームとインシュレンボード(細かい木材を圧縮したもの)を使った「建材床」です。
二つ目のパーツが「畳表(たたみおもて)」です。畳の表面を覆うゴザのことで、横糸のい草1本に対して、複数の経糸(麻や綿、県証糸など)と編み込んでいきます。
三つ目のパーツが「畳縁(たたみべり)」です。畳の側面に縫い付けられた生地で、さまざまな色・柄のバリエーションがあり、畳表の補強などの役割を果たします。
畳は経年劣化する
畳は、年数が経つにつれて劣化していきます。特にダメージを受けやすいのが畳表で、ペットがひっかいたり、掃除機をかけたりすることによる摩擦などで傷んでしまうのです。
また、梅雨の時期の湿気も畳表を傷める原因です。畳の上に布団や座布団を長時間置くと湿気がたまり、それを畳が吸収してカビなどが発生することがあります。
どんなに丁寧に畳を使用していても、生活していくなかでの経年劣化は避けられません。そのため、畳は定期的に張替えなどのメンテナンスを行う必要があるのです。
【方法別】畳の張替え時期の目安
畳の張替えには、三つの方法があります。それぞれの方法を解説するとともに、張替え時期の目安もあわせて紹介します。
裏返しを行う目安
一つ目の張替え方法が「裏返し」です。これは、単に畳をひっくり返すことではありません。裏返しとは、畳表の部分を一度はがし、ひっくり返して固定したうえで、畳の表面を新品に近い状態に戻すことを指します。
畳表に日焼けで生じる色あせや摩擦による擦れなどが目立ち始めたら、裏返しを行いましょう。具体的な時期の目安は「新品の状態から2~5年程度経過した後」です。
裏返しを行えば、数年間は快適に畳を使えるようになります。
表替えを行う目安
二つ目の方法が「表替え」です。表替えとは、畳床は残して畳表および畳縁を新しく交換する張替え方法です。
表替えを行う目安となる時期は、「新品の状態から4~7年程度経過してから」もしくは「裏返しを行ってから5年程度経過したぐらい」です。
畳が傷んでいても気にせず使い続ける人もいますが、表替えについては遅くとも10年経過するまでには行ったほうがよいとされています。
新調する目安
三つ目の方法が「新調」で、文字通り、畳を丸ごと新しくすることです。新調を行うのは、「新品の状態から10~15年程度経過したころ」が適切なタイミングといえます。
畳は10~20年程度経過してしまうと、畳表はもちろんのこと、畳の芯となる畳床も傷んでしまいます。畳床が傷むと、畳の上を歩いたときにへこみが気になるようになるため、へこみが起こるようになったら新調するようにしましょう。
畳の張替えの費用相場と所要時間は?
自宅の畳が傷んでいて張替えを検討している人にとって、どれくらいの費用がかかるのかは気になるポイントでしょう。畳の張替えの費用は、張替えを行う位置と畳に使われる材質によって大きく異なります。
一般的に、裏返し・表替え・新調の順番に費用が高くなっていきます。良質な素材で畳を作れば、畳一枚の値段も高くなるでしょう。ここでは、畳の張替えの費用相場と、張替えにかかる時間について解説していきます。
裏返しの場合
裏返しの費用は、畳1枚につき3,000~9,000円が相場となっています。とはいえ、畳の張替えを行っている専門業者によっても費用は異なるので注意しましょう。裏返しにかかる所要時間について、多くの場合は1日で済みます。
なお、表側の劣化だけではなく裏側までシミや色あせがあったり、前述した張替え目安の5年を超えていたりした場合には、裏返しではなく表替えを勧められることもあります。
表替えの場合
表替えの費用は、畳1枚につき4,000~2万円程度が相場となっています。費用に幅があるのは、畳表で使われる「い草」のグレードによって価格が変わってくるからです。
例えば、国産の高級い草を使う場合は畳1枚につき約1万4,000円、外国産の安価なものであれば畳1枚につき約6,000円といった具合に、価格に大きな差があります。
高品質のものは劣化しにくく、安価なものになると劣化しやすいため、安さをとるか耐久性をとるかは慎重に検討しましょう。なお、畳表と畳縁を新しくするので作業に時間がかかると思われがちですが、実際には表替えも1日で済む場合がほとんどです。
新調の場合
畳の新調にかかる費用は幅が大きく、畳のグレードも大きく影響します。具体的には、安い場合で畳1枚につき7,500円程度、高くなると3万円以上もかかります。
自宅の和室が6畳ですべて新調するとなると、4万5,000~18万円程度かかる計算です。丸ごと新調するのは費用がかかるため、枚数をしぼって交換するのがよいでしょう。
新調は他の張替え方法よりも手間がかかるため、2日~2週間程度の時間が必要となります。
畳の張替えに関するQ&A
ここからは、畳の張替えに関するQ&Aを紹介します。畳の張替えを検討している人にとって役立つ内容なので、ぜひチェックしてみましょう。
張替えに適した季節ってあるの?
畳の張替えに適している時期は、「4~5月」もしくは「9~11月」とされています。この時期は気候と湿度が比較的安定していて、畳への影響が少ないからです。
張替えが多くなるタイミングを季節ごとに見ていくと、春は引っ越しや新生活のスタートなどの時期であるため、そのタイミングで畳を張替える人が多くなります。夏は、湿度の多い梅雨が明けてから張替える人が増えます。
秋は、空気が乾燥していて気温もちょうどよいため、畳の張替えには適した季節です。冬は、気温が低く乾燥していることからカビの繁殖が起きにくく、張替えに適しています。特に、12月はボーナスが支給される人も多いため、金銭的にも張替えがしやすい時期といえるでしょう。
畳の張替えはDIYできないの?
結論からいうと、DIYすることは不可能ではありませんが、やはりプロである専門業者に任せたほうがよいでしょう。
畳のDIYで必要な工具などを揃えるとそれなりにお金がかかるため、専門業者に依頼するより費用がかさむケースがあるのです。
新調の場合は裏返し・表替えより簡単に思えますが、サイズ間違いや仕上がりに納得できないといったことも想定されます。そうなると、結局は専門業者に対応してもらうことになり、費用も時間も余計にかかってしまうでしょう。
畳の張替えはどの方法であっても、はじめから専門業者に依頼するのが得策であるといえます。
賃貸物件の場合はどうしたらいい?
賃貸物件の畳の張替えにかかる費用は、原則として大家や管理会社が負担することとなっています。ただし、賃貸契約書に借主が費用を負担すると明記されている場合は、借主負担になるので注意が必要です。
また、借主が過失によって畳を汚した場合や、善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)を怠った場合においては、借主が畳を張替えなければなりません。
入居時の契約内容や借りている間の扱い方によって、畳の張替えを行う人が変わるので、きちんと確認するようにしましょう。
参考:民法 第四百条(特定物の引渡しの場合の注意義務)| e-Gov法令検索
畳の張替えは適切な時期に行おう
今回は、畳の張替えに焦点をあてて解説してきました。畳は長い間使用していると、どうしても経年劣化などが起き、傷んでしまいます。そのため、適切な時期に適切な方法で張替えを行うことが大切です。
紹介した内容を参考に、自宅の畳の張替えを検討してみてはいかがでしょうか?
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文・構成/HugKum編集部