不登校児の増加は、大人の無理解も問題。「登校拒否」を文字った「トーキョーコーヒー」が悩める親子の活動拠点に

不登校児童の増加に伴い、それに向き合う周囲の大人たちの取り組みも多様化してきています。とかくネガティブに捉えられ、「とにかく学校に復帰すること」が解決のゴールとされがちだった不登校の取り組みに、革命的なビジョンで向き合うムーブメントも。そんな活動拠点となる「トーキョーコーヒー」が目指す、癒し(リトリート)と学び(アップデート)のアクションとは。HugKumの村上詩織ライターが取材しました。

不登校の問題は大人の無理解

もし、平日の昼間に小学生の親子が歩いている姿を見かけたら、どのように感じますか?「あれ、学校は?」「なんで行かないんだろう」と無意識に思う大人は少なくないのではないでしょうか。

かくいう私もかつてはそのひとりでした。でも、不登校について知れば知るほど、その考えは時代遅れだと気付かされました。

2021年には小中学生の不登校が20万人を超え(長期欠席40万人以上)※1、問題視されている不登校。果たして、問題は子どもにあるのでしょうか。学校という居場所が自分に合わないと訴えている子どもがこんなにもたくさんいる事実。合わなくなったのは子どもたちではなく、日本の教育スタイルの方かもしれません。未来を担う子どもたちの声に耳を傾け、変わっていかなければならないのは大人たちのほうなのです。

「トーキョーコーヒー」は、そんな大人の無理解をアップデートさせる可能性を秘めています。

※1  参考:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査

トーキョーコーヒーとは?

半年に1回ほど開催される「大人の学びと交流のお祭り」カンファレンス。全国の主宰者・認定者・拠点を持ちたい人・トーキョーコーヒーに興味がある人など、誰でも参加できる。
半年に1回ほど開催される「大人の学びと交流のお祭り」カンファレンスの様子。全国の主宰者・認定者・拠点を持ちたい人・トーキョーコーヒーに興味がある人など、誰でも参加できる。

トーキョーコーヒーは、2022年8月にアトリエe.f.t.代表、スカバンドDOBERMANのボーカルなど多方面で活躍されている吉田田タカシさんによって立ち上げられました。

トーキョーコーヒーとはじめに聞いて私は「コーヒー屋さん?」と思いましたが、コーヒーには関係なく「とーこーきょひ(登校拒否)」の文字を入れ替えて名付けられたものです。

不登校問題は「大人の無理解」という視点から日本の教育について考え、ムーブメントを起こそうと「大人同士が対話し学び合う場」と「子どもが日中に安心して居られる拠点」を提供しています。

不登校に悩む親だけでなく、大人が楽しめる場所を作りたい

無表情で「死にたい」と言われ、やっと気づいた大切なこと

4人の子どものママでもある平野さん。平野さん自身、子どもが高校生の頃に「学校に行きたくない」と言われ戸惑った経験があるそうです。その時は悩み苦しくて、誰かに相談しようと思ったり、インターネットで調べたりしようとも思わなかったといいます。

はじめはなんとか子どもを学校に行かせようと、必死に声かけをしていました。でも、学校に行かせようとすればするほど、子どもの表情が無くなっていく…笑いもしない、泣きもしない、怒りもしない…そして無表情で「死にたい」とつぶやく。そんな子どもの姿を見て「そうまでして学校にこだわる必要があるのか?」と、気持ちが変わったそうです。道はひとつではないと気付き、サポート校へ転校、20歳を迎えた子どもは今では自分の道を笑顔で歩んでいます。

大人が楽しめる場所があれば、子どもも安心して意欲を高められる

筑紫野筑前(福岡)の子どもたち。親たちの活動のそばで、いつの間にか大きな地面キャンパスにお絵描き。子どもたちの「やってみたい!」が尊重される、安心できる居場所。
筑紫野筑前(福岡)の子どもたちの様子。親たちの活動のそばで、いつの間にか大きな地面キャンパスにお絵描き。子どもたちの「やってみたい!」が尊重される、安心できる居場所。

不登校経験から、不登校に悩む親が涙ながらに語り合うのではなく、楽しく活動をしながら語り合えるような場所を作りたいと思っていたところ知ったトーキョーコーヒー。平野さんは、すぐさま拠点の主宰者となる手続きをしたそうです。

先日、私もトーキョーコーヒーのイベントに参加させてもらいました。そこで出会った3人のママに不登校経験についてうかがったところ、はじめは不登校に悩んでいたものの、良き理解者との出会いや環境の変化によって、親子ともに落ち着ける居場所を見つけたそうです。

子どもが学校に行っていないことを、誰かに見られて何か言われることが嫌で、親も子も引きこもりがちになってしまうケースは少なくありません。まずは理解者と出会える一歩を踏み出せるよう、トーキョーコーヒーは不登校経験の有無を問わず、門戸を広くイベントに参加できるようになっています。

トーキョーコーヒーは大人と日本の意識を変える場所

不登校経験の有無に関わらず参加できる

筑紫野筑前(福岡)の「スパイスカレーワークショップ」の様子。本場ネパールでカレーの作り方を習得してきた方をお呼びして、みんなでカレー作り。
筑紫野筑前(福岡)の「スパイスカレーワークショップ」の様子。本場ネパールでカレーの作り方を習得してきた方をお呼びして、みんなでカレー作り。

トーキョーコーヒーはもちろん、不登校で悩む親子や、不登校を経験した親子が語り合い、情報を共有する場所でもあります。一方で、参加者を不登校経験者に限定しているわけではありません

平野さんや、トーキョーコーヒーに参加している方々のエピソードをうかがうと、例えば

・「学校に行きたくない」と子どもに言われたときの親の対応
・子どもが安心できる居場所の選択肢が地域で統一されていないこと
・祖父母やママ友など周囲の大人からの目
・教員と親、地域との連携

など、大人の意識や環境・システムに関することで悩んでいました。これらは、不登校経験の有無にかかわらず、多くの大人の意識を変えなければ改善されない問題です。

これらの「大人の無理解」についてはこちらの記事が参考になります。

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まずは不登校を知ることからはじめる

拠点ごとに、その取り組みは多種多彩です。例えば平野さんが運営する福岡城南の拠点では、フラワーBOXワークショップや、カラーセラピー体験会などを開催しています。自然豊かな場所にある拠点では、みんなで釜戸ご飯を食べたり、自然素材を使って子どもたちが自由に遊べるプレイパークが開催されたり…とにかく、大人も子どももワクワクするイベントが盛りだくさん!

一見、不登校とは無関係のイベントに思えるかもしれません。でも、それこそがトーキョーコーヒーなのです。

奈良県生駒市の拠点の活動は関西テレビにて紹介されました。関西テレビの支援を受け、2023年6月30日まで寄付型のクラウドファンディングに挑戦しています。

全国に理解ある大人が増えるように

まずは大人が楽しんで集まることができる場所であること(もちろん子どもと一緒に参加もOK)。仲間と一緒に楽しむことで自分の心を整えつつ、子育てや教育について語り合い、大人の考えや意識をアップデートさせていく。そんな大人が日本中に広まれば、戦後から変わらない日本の凝り固まった教育スタイルを変えることができるはず!

2023年6月現在、全国に260箇所以上ある拠点を、さらに500箇所、1000箇所と増やしていくことで、日本全国の大人が不登校の現状と、変えていかなければならない問題を認知し、変革の流れを起こすことが期待できます。

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お話を伺ったのは

トーキョーコーヒー福岡城南 | 平野りかさん
我が子が不登校になり「不登校の親」を経験したことから、不登校の子を持つ保護者の居場所を作りたいと思っていたところに、トーキョーコーヒーが目の前にやって来たという感覚のままに2022年12月にトーキョーコーヒー福岡城南の拠点を登録。現在、福岡市城南区の雑貨店 マムフルーレットにて月一回のイベントと、テーマを決めてお茶を飲みながらおしゃべりする「お茶べり会」を週一回開催している。
薬剤師であり心理カウンセラーの資格を有し、心理学や傾聴の学びを続けており、お茶べり会において「きちんと話しを聴ける人」であることを心掛けている。26歳、24歳、20歳、14歳の四人の子を持つ母でもある。

取材・文/村上詩織

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