江戸時代の大ヒット作『東海道中膝栗毛』の弥次さん・喜多さんってどんなキャラ? この際あらすじも押さえよう【5分で古典】

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『東海道中膝栗毛』とは、江戸時代の作品。戯作者や絵師として知られる十返舎一九の代表作です。そんな『東海道中膝栗毛』はどんな物語なのでしょうか。弥次さんと喜多さんの名コンビでおなじみのこの作品について、あらすじや主な登場人物などを解説します。

『東海道中膝栗毛』とは?

『東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)』とは、いつ、だれが書いた作品なのでしょうか。まずは作品の背景について見てみましょう。

『東海道中膝栗毛』(岐阜県美濃加茂市にある博物館「太田宿中山道会館」蔵)
『東海道中膝栗毛』(岐阜県美濃加茂市にある博物館「太田宿中山道会館」蔵) by Asturio Cantabrio, wikimedia commonsより(PD)

 

十返舎一九の作品(作者情報)

『東海道中膝栗毛』の作者は、十返舎一九(じっぺんしゃ いっく)という人物。1802年から1814年にかけて初版りされた滑稽本です。滑稽本とは、町人の日常生活を面白おかしく書いたもので、現代のコメディのようなもの。『東海道中膝栗毛』は江戸時代を代表する滑稽本です。

「栗毛」とは栗色の馬のことで、「膝栗毛」とは自分の膝を馬の代わりに使うという意味で、『東海道中膝栗毛』は主人公が徒歩で旅行していった道中の物語です。

作者:十返舎一九
国: 日本
発表年:1802年~1814年
おすすめの年齢:小学校中学年以上

十返舎一九ってどんな人?

十返舎一九
十返舎一九 Hannah, wikimedia commonsより(PD)

十返舎一九は、重田貞一という本名の戯作(げさく)者。戯作とは、江戸時代の通俗小説などの読み物のことです。

十返舎一九はもとは武士で、若い頃に江戸に出てきて、戯作の道に入りました。さまざまな作品を書くなかで、『東海道中膝栗毛』は大ヒット。十返舎一九は一躍、人気の流行作家となりました。また十返舎一九は絵師としても活躍しており、『東海道中膝栗毛』には多くの挿絵が挿入されています。

いつの時代の話?

東海道関宿の街並み
東海道関宿の街並み

『東海道中膝栗毛』は、江戸時代の物語。当時、伊勢神宮を参拝する「伊勢参り」がとても人気で、当時の人口のおよそ6人に1人が伊勢参りに出向いていたそうです。「一生に一度は伊勢参り」という言葉があったように、人々にとって伊勢参りは憧れの旅でした。

また、東海道には各地に宿屋や休憩所ができ、それらを利用して徒歩の旅を楽しむことが一大ブームとなったのでした。『東海道中膝栗毛』は、そんな当時の徒歩の旅を伝える物語なのです。

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物語のあらすじ|「詳しく」&「簡単に」2バージョンでご紹介

物語のあらすじ|「詳しく」&「簡単に」2バージョンでご紹介
物語のあらすじをご紹介

江戸時代の人々が、読んで笑い転げたという『東海道中膝栗毛』。大ヒットとなった物語のあらすじを、「詳しく」と「簡単に」の2バージョンでご紹介しましょう。

詳しいあらすじ(ネタバレあり)

主人公は遊び人でなまけた生活を送っていた弥次さんと、その家に居候をしていた喜多さん。2人は、仕事に失敗したり、仕事を失ったりして、不運が続いていました。そんなとき2人はひょんなことから大金を手にします。そこでそのお金を手に、江戸を出発して、伊勢参りに向かうことに。その旅先では、さまざまな人と出会い、多くの事件に遭遇することになるのです。

例えば、静岡県三島市の三島宿に泊まったときのこと。「飯盛女(めしもりおんな)」と呼ばれる接客をする女性とともに一緒に寝るのですが、夜中にスッポンに指をかまれ、ひと騒動が勃発します。また、静岡県の丸子宿で名物のとろろ屋に入ったときは、ある夫婦の夫婦喧嘩に巻き込まれる始末。結局とろろ汁を食べられずに店を出ることになってしまうのです。

そんな2人のドタバタ感満載の騒動が終始続き、最後はようやく伊勢神宮に到着。伊勢についても、さっそく2人は遊郭に遊びに行き、相変わらず騒動を起こしていくのでした。

簡単なあらすじ(ネタバレなし)

なまけて遊んで暮らしていた弥次さんは、借金に追われて夜逃げして江戸にやってきた人物。失敗続きであちこちで騒動を起こしてきました。同じくさまざまな失敗を繰り返してきた喜多さんは、弥次さんの家で居候をしていました。

そんなふたりが、ひょんなことから大金を入手。当時、人々に大人気だった伊勢参りのブームにのって、伊勢に向かって旅に出ることにしました。しかし、失敗続きのふたりは旅のあちこちで、思わぬ騒動を引き起こしたり、巻き込まれたりしていくのです……。

東海道中膝栗毛の主な登場人物

京都三条大橋 弥次喜多像
京都三条大橋  弥次喜多像

『東海道中膝栗毛』に出てくる主な登場人物をご紹介しましょう。『東海道中膝栗毛』の物語に欠かせないのが、弥次さん・喜多さんの名コンビです。

栃面屋弥次郎兵衛(とちめんや・やじろべえ):通称「弥次さん」

東海道の旅に出た際は、数えで50歳(満49歳)の“おやじ”。もとは裕福な商家の出身でしたが、生まれつきの遊び人で、借金から逃げるために江戸にやってきました。通称は「弥次さん」。口が達者でしゃれっ気があり、なまけた生活をしていながらも、教養を備えています。

喜多八(きたはち):通称「喜多さん」

東海道の旅に出た際は、数えで30歳(満29歳)。ある商家に奉公したものの、使い込みをするなどして解雇され、行き場を失ってしまい、弥次さんと一緒に旅に出ることになります。通称は「喜多さん」。

東海道中膝栗毛が読み継がれている理由

1912~1916年頃に作成された弥二さん喜多さんの版画 Rijksmuseum,wikimedia commonsより(PD)

江戸時代の200年以上前にできた『東海道中膝栗毛』。今でも日本ではよく知られる作品で、舞台の作品になったりして読み続けられています。なぜこれほどに『東海道中膝栗毛』が愛され続けているのでしょうか?

江戸時代の人々の生活を世に伝える

『東海道中膝栗毛』は、江戸時代に一大ブームとなった伊勢参りをテーマにした物語。江戸を出発して、各地にできた宿屋や休憩所で休みながら歩いて伊勢まで旅する様子を描いています。そんな当時の人々がどんな生活を送っていたのか、ストーリーと抱負な挿絵で、私たちは知ることができます。

20年も毎年のように刊行された

『東海道中膝栗毛』が刊行されると、瞬く間に人々の人気を呼び、その後続編も刊行されました。約20年にわたり、全部で12編が出版されたことからも、その人気の高さがうかがえるでしょう。

旅行ガイドとしての側面も

江戸から伊勢までの道中を描いた『東海道中膝栗毛』は、旅行ガイドブックのような役目もあります。弥次さん喜多さんが行く先々には、ご当地名物のグルメが登場し、読んだ人はどんな旅ができるのか想像が膨らみます。観光ガイドブックなどまだない時代に、弥次さん喜多さんのように伊勢参りを考えている人々にとって、貴重なガイドブック的存在となっていたことでしょう。

弥次さん・喜多さんのやりとりも面白い

『東海道中膝栗毛』に欠かせないのが、やはり弥次さん・喜多さんの名コンビの存在。2人のやりとりは、漫才やコントを思わせるもので、ギャグ、だじゃれ、なぞかけも満載。そんな2人の会話もぜひ楽しんでください。

名作「東海道中膝栗毛」を読むなら

『東海道中膝栗毛』に興味を持ったら、現代語訳のものを読んでみてはいかがでしょうか?

『東海道中膝栗毛』21世紀版・少年少女古典文学館

古典文学を子ども向けに作っている「21世紀版・少年少女古典文学館」シリーズ。はじめて『東海道中膝栗毛』を読む子どもにもおすすめです。

『東海道中膝栗毛・古典落語』

写真やイラストなどを豊富に使い『絵で見てわかるはじめての古典』の増補改訂版。道中のストーリーを想像しながら読み進められそう。

『ワイド版 マンガ日本の古典29 東海道中膝栗毛』

ギャグ漫画の異才と言われる土田よしこがマンガで描いた一冊。マンガなので、ストーリーをすぐに把握して、物語の魅力に引き込まれそうです。

江戸時代の爆発的ヒット作『東海道中膝栗毛』

それまで戦ばかりがあった戦国時代に比べて、江戸時代後期になると、人々の生活には余裕が生まれ、子どもたちは寺子屋に通うなど、人々の暮らしは安定してきました。東海道が整備され、その間には宿場ができ、人々には旅行という楽しみもできてきたのです。

そんな時代を描いたのが『東海道中膝栗毛』です。弥次さん・喜多さんの滑稽な会話を通して、人々の生活を想像していく楽しみがあるのです。当時の人々が笑い転げて読んだという『東海道中膝栗毛』を、ぜひ手にしてみてはいかがですか?

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文・構成/HugKum編集部

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