目次
南総里見八犬伝とは?
まずは『南総里見八犬伝』の著者や物語の背景を紹介していきます。
日本の読本作者・曲亭馬琴の作品
『南総里見八犬伝』は、日本の読本作者・曲亭馬琴によって書かれた小説です。
この作品は、1814年(文化11年)に刊行がスタート。完結したのは1842年(天保13年)です。実に27年もの間、曲亭馬琴はこの物語を書き続け、最終的には全98巻、106冊という長編小説となっています。
国:日本
作者:曲亭馬琴
発表年:1814〜1842年
おすすめの年齢:小学校高学年以上
曲亭馬琴ってどんな人?
曲亭馬琴は1767年に江戸深川に生まれます。本名を滝沢馬琴といい、曲亭馬琴のペンネームを使って読本(よみほん)と呼ばれる小説の作者として活躍しました。
『南総里見八犬伝』は、馬琴が48歳から75歳まで、27年を費やして書いた作品でした。この作品を書いている途中に馬琴は目に異常を覚え、73歳には失明してしまいますが、息子の妻に口述筆記をお願いして、執筆を続けたというエピソードがあります。
なお、代表作には、『南総里見八犬伝』のほかに、『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』『曲亭馬琴日記』などがあります。
いつの時代の話?
『南総里見八犬伝』の舞台は戦国時代。安房の地を活躍の拠点とした房総里見氏の歴史を題材にしています。ちなみに刊行がはじまったのは江戸時代後期です。
物語のあらすじ|「詳しく」&「簡単に」2バージョンでご紹介
『南総里見八犬伝』はどのような物語なのでしょうか。ここからは「詳しく」&お子さんへの説明に便利な「簡単に」の2種類のあらすじをご紹介します。
詳しいあらすじ(ネタバレあり)
安房国滝田の城主になった里見義実は、隣国の館山城主安西景連に城を攻められ、窮地に陥る。義実は、飼い犬の八房に「敵将の首を獲ったら、娘の伏姫を与える」と言う。すると、八房は本当に敵将の首を打ち取る。義実は、八房に伏姫を嫁がせるのは嫌だったが、伏姫の「君主が一度言ったことを違えてはいけない」という言葉により、八房と伏姫は富山の洞窟に籠もる。
伏姫の許婚である金碗大輔は、伏姫を取り戻すため八房を鉄砲で撃ち殺すが、伏姫にも傷を負わせてしまう。このとき伏姫は、八房の気を感じて懐妊していたが、身の潔白を証明するために伏姫は自害する。伏姫が亡くなった間際、護身の数珠から仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の8つの玉が飛び散り、霊玉を持つ八犬士が登場する。
出家し、ゝ大(ちゅだい)法師となった金碗大輔は、飛び散った8つの玉の行方をもとめて旅に出る。ゝ大法師から事情を聞いた八犬士たちは、里見家の元に集結。里見家を救うため奮闘する。
その後、里見家の危難を救った八犬士たちは、義実の8人の孫娘をそれぞれ妻として迎える。その後、子どもたちに家督を譲り、富山の山中にこもって仙人になる。
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
安房国滝田城主である里見義実の娘・伏姫は、亡くなる間際に仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の8つの霊玉を持つ八犬士を生む。八犬士たちは里見家に集結し、団結して里見家の危機を救うため奮闘する。
南総里見八犬伝の主な登場人物
ここからは、『南総里見八犬伝』に登場する主な登場人物を紹介します。
伏姫(ふせひめ)
安房滝田城主、里見義実の娘。飼い犬の八房と富山にこもる。死ぬときに8つの玉が飛び散ることで、八犬士が生まれる。
八房(やつふさ)
里見家の飼い犬。体に8つの牡丹の花のような斑があることからこの名前がついた。
金碗大輔(かなまりだいすけ)
義実の家臣。伏姫の死後、出家して「ゝ大(ちゅだい)法師」と名乗る。飛び散った玉の行方をさがす。
八犬士
「犬」がつく名字をもち、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の文字のある数珠の玉、身体のどこかに牡丹の形のあざをもっている。
・犬江親兵衛仁(いぬえしんべえ まさし)
最年少の犬士で、左手に仁の玉を隠し持つ。伏姫の神霊に育てられる。
・犬川荘助義任(いぬかわそうすけ よしとう)
儀の玉を持つ。八犬士随一の苦労人で、正義感にあふれる性格。
・犬村大角礼儀(いぬむらだいかく まさのり)
礼の玉を持つ。古今の書物に精通しており、真面目で物知り。
・犬坂毛野胤智(いぬさかけの たねとも)
智の玉を持つ。美しい美貌の持ち主で、変装が得意。
・犬山道節忠与(いぬやまどうせつ ただとも)
忠の玉を持つ。火とんの術を使う忍者。少し短気なところがある。
・犬飼現八信道(いぬかいげんぱち のぶみち)
信の玉を持つ。捕物名人として名を馳せていた。
・犬塚信乃戌孝(いぬづかしの もりたか)
孝の玉を持つ。宝刀村雨丸を使って戦う。
・犬田小文吾悌順(いぬたこぶんご やすより)
悌の玉を持つ。体が大きく、ケンカが強い。
南総里見八犬伝が読み継がれている理由
『南総里見八犬伝』が現在でも読み継がれている理由はどんなところにあるのか、解説していきましょう。
まるで少年漫画のようなストーリー
『南総里見八犬伝』には、冒険、友情、戦い、ファンタジーなど、少年漫画には欠かせない要素が満載。そのため、だれもが夢中になって読んでしまいます。また、この物語の主題が勧善懲悪、因果応報であることから、読み終わると爽快な気分になることうけあいです。
ヒーロー「八犬士」のキャラクターが魅力的
『南総里見八犬伝』の魅力といえば、なんといっても作中に登場するキャラクターたちです。とくに八犬士は、持っている玉に刻み込まれた文字を見れば、それぞれの性格や能力がわかるようになっています。また、火とんの術や変装といった得意技や、「宝刀村雨丸」や「十手」などのアイテムを使うなどの能力も特徴的です。
江戸時代にはすでにグッズ化も…エンタメ作品に大きな影響
『南総里見八犬伝』は、刊行当初は発行部数が少なく、価格も高かったのですが、貸本というスタイルによって多くの人に広まり、読まれました。当時の人気を伺い知れるのは、刊行中からすでに歌舞伎の演目になったことや、凧やすごろく、うちわの絵柄などにもなったそうです。今でいうグッズ化されていたのですね。
現在でもこの作品の人気は続いており、映画、演劇、ドラマ、アニメ、小説、ゲームといったエンターテイメント作品に大きな影響を与えています。
名作「南総里見八犬伝」を読むなら
ここからは、『南総里見八犬伝』のおすすめの本をご紹介。本作に興味をもったらぜひ手にとってみてください。
現代語訳 南総里見八犬伝 上 (河出文庫)
『南総里見八犬伝』の現代語訳版。長大な原文でしか入手できない名作を読める上下巻です。
まんがで読む 南総里見八犬伝 (学研まんが日本の古典)
長文を読むのが苦手なお子さんや、低学年のお子さんには、まんが版の『南総里見八犬伝』がおすすめ。このまんが版では、最年少犬士・犬江新兵衛を中心とした物語となっています。
里見八犬伝 (10歳までに読みたい日本名作)
「10歳までに読みたい日本名作」シリーズは、登場人物紹介、お話地図、原作についてなど、物語のイメージがつかめる「物語ナビ」が特徴。さっと見返すことができるので、感想文を書くときにも役立ちます。イラスト付きで読みやすいのも魅力です。
『南総里見八犬伝』は読み応えたっぷり
『南総里見八犬伝』はとっても長い小説です。しかし、少年漫画にあるような冒険ファンタジーなストーリーで読み応えがあります。機械があれば、ぜひ手に取ってみてください。
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文・構成/HugKum編集部