『杜子春』はどんなお話? あらすじや登場人物から理解を深めよう

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「杜子春」は、大正時代に発表された有名な短編童話です。アニメや演劇の題材として取り上げられることも多く、子どもの頃に一度は見聞きしたという人も少なくないでしょう。「杜子春」のあらすじや、作者が伝えたかったことをわかりやすく解説します。

「杜子春」とは

「杜子春(とししゅん)」というお話を読んだことがあっても、詳しい内容まで覚えている人は少ないかもしれません。まずは、登場人物とあらすじをおさらいしましょう。

登場人物

タイトルの「杜子春」は、物語の主人公の名前です。杜子春は金持ちの息子でしたが、財産を使い果たしてしまい、その日の暮らしにも困る有様となっています。

杜子春以外の主要な登場人物と役柄は、以下の通りです。

●謎の老人:杜子春に黄金のありかを教える
●閻魔大王(えんまだいおう):地獄の支配者
●杜子春の両親:地獄で馬の姿にされている

実は、謎の老人の正体は「鉄冠子(てっかんし)」という名の仙人です。物語の後半に、名前や住んでいる場所が明らかになります。

あらすじ(結末のネタバレを含む)

無一文の杜子春はある日、謎の老人に黄金のありかを教えてもらい、一夜にして大金持ちになります。うわさを聞いた人々がこぞって杜子春のもとを訪れ、賑やかでぜいたくな暮らしが始まりました。

しかし、お金が底をついたとたん、誰もが手のひらを返すように冷たくなります。お金の有無で態度を変える人間に嫌気がさした杜子春は、黄金のありかを教えてくれた老人が仙人だと見抜き、「自分を仙人にしてほしい」と頼みました。

鉄冠子と名乗った老人は杜子春の願いを聞き入れ、弟子にします。そして、「自分が戻るまでは何があっても声を出してはならない」と命じました。

それからの杜子春は、どんな苦しい目に遭っても声を出さずに耐え忍びます。しかし、地獄で馬に変えられた両親に出会い、鞭でうたれて倒れた母の声を聞いたとき、思わず「お母さん」と叫んでしまうのです。

それまでの苦労は水の泡となり、杜子春は仙人になる資格を失います。しかし、杜子春は人間にとってもっとも大切なものに気付き、人間らしく正直に生きることを決めます。

鉄冠子は杜子春に「両親が鞭でうたれてもあのまま黙っていたら、お前の命を絶とうと思っていた」と告げ、家と畑を与えて去っていきました。

杜子春を書いたのは誰?

杜子春はいつ、誰が書いた物語なのでしょうか。作品の時代背景も合わせて見ていきましょう。

芥川龍之介が中国の小説を再編

杜子春は唐の時代の中国の伝奇小説「杜子春傳(とししゅんでん)」をもとに、芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)が書いた作品です。1920(大正9)年に、児童向けの文芸雑誌「赤い鳥」に初掲載されました。

「伝奇」とは唐の時代に多く書かれた短編小説のことで、杜子春傳は「李復言(りふくげん)」という人物が編集した伝奇集「続玄怪録(ぞくげんかいろく)」に収録されています。

芥川龍之介について

芥川龍之介

芥川龍之介は、大正時代に活躍した人気作家です。東京帝国大学(現在の東京大学)に在学中の20代前半から執筆活動を始め、1927(昭和2)年に35歳で亡くなるまでに、300を超える作品を残しました。

芥川は短編小説の名手として知られ、代表作には「鼻」「羅生門」「芋粥」「或阿呆の一生」などがあります。短い物語の中で人間の心情を鮮やかに描き出す作風は、後世の作家にも大きな影響を与えました。

彼の死後、親友の菊池寛(きくちかん)が創設した「芥川龍之介賞」は、現在も多くの作家の憧れの的となっています。

芥川版には随所にアレンジが入っている

芥川龍之介の杜子春には、原作の「杜子春傳」にはないアレンジが随所に見られます。原作では、老人は仙人ではなく道士(道教の僧)ですし、杜子春は道士にもらったお金で成功をおさめ、立派な家庭を築いています。

原作と芥川版の最大の違いは、物語の結末です。原作の杜子春は、道士との約束を守れず声を出してしまった自分を恥ずかしく思い、悔やみ続けます。道士も約束を破った杜子春を、決して許しませんでした。

親への愛情を優先したことに満足している芥川版の杜子春とは、真逆の内容です。芥川が結末を変えた理由は、掲載誌が児童書だからとも、幼い頃に母を亡くしたからともいわれています。

いずれにしても、芥川は人が大切にするべきものが何なのかを、読者に伝えたかったのではないかと考えられています。

杜子春の全文を知るには?

杜子春の詳細が気になる人は、一度全文を通して読んでみるとよいでしょう。杜子春の全文を読む方法を二つ紹介します。

小説で読む

杜子春の全文を知るなら、小説で読むのがおすすめです。杜子春自体は話が短く、内容も子ども向けですので、小説に慣れていない人でも簡単に読めます。

杜子春を収録した芥川の短編集は、現在でもさまざまな出版社から出ているため、書店に行けば簡単に見つかります。表紙のイラストなどを比べて、好みのものを手に取ってみるとよいでしょう。

 

AudioBookで聞く

AudioBook(オーディオブック)とは、本の朗読を録音したものです。音声を聞くだけでよいので、家事や育児に忙しくて本を開く暇もないパパやママでも、無理なく読書することが可能です。

AudioBookならスマホアプリをダウンロードするだけでよく、書店に本を買いに行く手間もありません。作品ごとに購入でき、短編集を買う必要がないため、杜子春だけを読みたい人にも適しています。

杜子春(小学館の名作文芸朗読) (芥川龍之介) | ドワンゴジェイピー オーディオブック

物語でいろんな考え方に触れよう

杜子春は中国の昔話を題材に、芥川龍之介が創作した童話です。原作とは違い、杜子春の明るい未来を予想させる結末が印象に残ります。

登場人物を通して、いろいろな考え方に触れられるのも物語の魅力です。この機会に、子どもと一緒に杜子春や鉄冠子ら登場人物になりきり、それぞれの視点で物語を楽しんでみましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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