インフルエンザとはどんな病気?
インフルエンザに限らず、予防接種を受けるときには、その病気の特徴を理解することが大切です。インフルエンザとは、どのような病気なのでしょうか。
ウイルス感染症の1つ
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスに感染することで起こる病気です。ウイルスは大きくA型・B型・C型に分類され、このうちA型とB型が流行を引き起こします。
インフルエンザの特徴は、高熱・頭痛・関節痛・倦怠感などの全身症状が急激に表れることです。また、喉の痛みや咳、鼻水など風邪に似た症状も見られます。
通常は数日で快方に向かいますが、小さな子どもや高齢者、免疫力が低下している人などがかかると重症化するおそれがあり、注意が必要です。
世界的に大流行したことも
インフルエンザは、過去に何度か世界的に大流行したことでも知られています。
特に、1918年から始まった「スペインインフルエンザ」は、世界の人口の約3割に該当する5億人以上が感染し、数千万人が亡くなったと推定されるほど大規模なものでした。日本でも40万人近くが亡くなったと考えられています。
1957年には「アジアインフルエンザ」が流行し、世界で数百万人、日本で数千人の死者を出しました。
1968年の「香港インフルエンザ」では、世界で5万人以上の死者を出したほか、香港において6週間で約50万人が感染するという、爆発的な流行を引き起こしています。
インフルエンザ予防接種の基礎知識
インフルエンザは規模の差はあるものの、毎年流行する病気です。日本でも流行に備えて、予防接種を受けることが推奨されてきました。歴史や接種方法など、インフルエンザの予防接種にかかわる基礎知識を見ていきましょう。
日本での予防接種の歴史
日本で予防接種が推奨されるようになったきっかけは、1957年のアジアインフルエンザの流行です。1960~1990年代には、子どもたちが学校でインフルエンザの予防接種を受ける「集団接種」が行われていました。
しかし1980年代後半頃より、集団接種の効果を疑問視する声が上がります。集団接種しているにもかかわらず、学校でインフルエンザが毎年流行していたことや、副反応が問題となったことが主な理由です。
1994年には学校での集団接種は廃止され、希望者のみが個別に受ける制度に変わっています。ただし、重症化しやすい高齢者については、2001年より定期予防接種の対象となっています。
予防接種の必要性
インフルエンザの予防接種は、発症を確実に防ぐものではありません。インフルエンザウイルスにはいくつかの種類があり、毎年流行する型が異なります。ワクチンも、そのシーズンに流行する型を予測して作っているため、予測の精度によっても効果は変わります。
ただし予防接種には、重症化を防ぐ一定の効果があるとされるため、重症化リスクの高い人にとっては有効と考えてよいでしょう。
また発症する人が減れば、それだけ感染の拡大も抑えられます。学校での集団接種が廃止された後、インフルエンザが原因で死亡する高齢者が増えたとの調査結果もあるほどです。予防接種は本人だけでなく、周囲の人の健康を守ることにもつながるといえます。
参考:
季節性インフルエンザ(ファクトシート)|厚生労働省
日本ウイルス学会|インフルエンザ―最近の臨床の進歩―|4枚目
予防接種の効果的な受け方
インフルエンザの場合、予防接種の効果が最も高くなるのは、接種から1~2カ月後とされています。インフルエンザが流行する時期は例年12~3月なので、10月中旬~11月末頃までの間に接種するのがおすすめです。
実家への帰省や旅行、受験など大切な予定がある場合は、その日程に合わせてもよいでしょう。
なお生後6カ月以上13歳未満の子どもは、2回接種が推奨されています。2回目は1回目の接種から2~4週間空ける必要があるため、スケジュールには余裕を持たせておきましょう。
参考:国立感染症研究所|予防接種における間違いを防ぐために|17枚目
予防接種以外のインフルエンザ対策も押さえよう
インフルエンザの予防接種は、あくまでも感染後の発症確率を下げ、重症化を防ぐためのものです。まずはウイルスに感染しないように、日常生活での対策が求められます。外出時と在宅時に分けて、効果的な対策を見ていきましょう。
外出時の注意点
インフルエンザウイルスは、主に患者の咳やくしゃみなどで吐き出される飛沫を通して感染します。インフルエンザが流行する時期に外出する場合は、できる限り人混みを避け、マスクの着用も効果的と考えられます。
外出時は飛沫を直接吸い込むだけでなく、飛沫の付いたものを触った手から口にウイルスが入り込むことも、十分に考えられます。手に付いたウイルスを除去するには、石けんでの手洗いやアルコール消毒が効果的です。
帰宅後はもちろん、外出中に食事をするときも、念入りに手を洗う習慣を付けましょう。
家の中で意識すること
どんなに気を付けていても、会社や学校などに通っていればウイルスを家に持ち帰ってしまうこともあります。家の中でウイルスが漂う時間が長いほど、感染・発症のリスクも高まるでしょう。
インフルエンザウイルスは低温・低湿な環境を好みます。そのため、室内では一定の温度と湿度を保つことが効果的です。室温は20~25℃、湿度は50~60%程度をキープするとウイルスの活性化を防げるとされています。
また多少ウイルスを吸い込んでも、免疫力が高ければ体がウイルスを退治してくれるため、発症せずに済むでしょう。免疫力が下がらないように、普段から栄養や睡眠を十分にとることも大切です。
予防接種と生活習慣でインフルエンザを防ぐ
インフルエンザの予防接種には、発症や重症化のリスクを減らし、周囲への感染拡大を抑える効果が期待できます。接種は任意ですが、重症化しやすい乳幼児や高齢者は受けておくと、家族も安心感を得られるでしょう。
手洗い・マスク着用・室内の加湿・規則正しい生活も、感染予防に役立ちます。予防接種と生活習慣の両面から備え、インフルエンザの流行シーズンを乗り切りましょう。
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構成・文/HugKum編集部