「動脈」と「静脈」の違いは? からだ中をめぐる大切な働きと驚きの仕組み【親子で人体を学ぶ】

私たちのからだを流れている「動脈」と「静脈」。血液や血管のことと知っていても、それぞれがどんな働きがあるのかわからない方も多いかもしれません。そこで、動脈と静脈はどんな働きがあり、どんな違いがあるのか解説します。また、動脈と静脈を健康的にキープするために、どんなことに注意すればいいのかご紹介しましょう。

動脈と静脈の違い:基本を知ろう

私たちのからだ中を流れている血管。その血管は、「動脈」と「静脈」と大きく2つに分けることができます。動脈と静脈には、どんな違いがあるのでしょうか?

動脈と静脈とは

血液はからだ中に酸素や栄養素を運ぶ大切な存在で、心臓からきれいな血液を送り出し、二酸化炭素などの老廃物を受け取った汚れた血液を心臓まで戻しています。このとき、酸素や栄養素などを届けるのが「動脈」で、老廃物を受け取るのが「静脈」です。

私たちのからだを流れる血管は、動脈と静脈のほか、細小動脈、毛細血管の4種類があります。毛細血管は細い血管で、動脈からつながって全身の隅々まで網目状に広がっていて、からだに必要な酸素や栄養素を届けているのです。

わかりやすく言うと、動脈と静脈は血管の高速道路のようなもの。そこから枝分かれした毛細血管は、もっと細い道路ですみずみまで届ける役割になっています。また、動脈は高速道路の「上り線」で、静脈は「下り線」と言えるでしょう。

それぞれの形と構造

動脈と静脈では働きに違いがあるのと同じく、形や構造にも違いがあります。動脈は、内側から内膜、中膜、外膜の3層構造でできています。心臓がポンプのような役割を果たして、収縮して血管を押し出すため、その血圧に耐えられる強さが必要。そのため、収縮性と弾性のある作りになっているのです。太い動脈は、直径が3㎝ほどにもなり、単2電池が通るほどの太さがあります。

それに対して静脈は、動脈よりも流れがゆるやか。動脈と同じように3層構造でできていますが、中膜が動脈よりも薄くできています。また、静脈は血液が逆流しないように弁があります。

血液を運ぶ方向の特徴

動脈と静脈では、血液の流れる方向が違います。動脈は心臓から全身に流れる血管。静脈は全身から心臓に向かうという違いがあります。

動脈に流れる血液は、心臓のポンプ作用による強い圧力で流れていきますが、静脈は筋肉の作用によって流れます。例えば、私たちが歩いて脚の筋肉を使うとき、ふくらはぎの筋肉が収縮します。それがポンプとなって静脈の血液が流れる仕組みです。動脈は強い圧力が生まれますが、静脈の筋肉のポンプ作用による圧力はそこまで強くなく、静脈血の流れはゆるやかになるのです。

血液の流れ:心から全身への大旅行

心臓から全身に流れている血液。動脈と静脈がどんな役割を果たしているのか、あらためて見てみましょう。

血液を全身に循環させる体内システムを循環系といい、心臓、動脈、静脈、毛細血管、リンパ管で構成されている。
血液を全身に循環させる体内システムを循環系といい、心臓、動脈、静脈、毛細血管、リンパ管で構成されている。

心臓から始まる動脈の流れ

心臓は、からだの中心にあって血液を全身に送り出す役目を担っています。1日に約10万回も収縮を繰り返しているのは、それだけたくさんの血液を全身に送り出しているから。心臓から送り出された血液は、動脈を通って上半身と下半身に流れます。さらに、血液は動脈から枝分かれした毛細血管に流れていき、からだの隅々まで酸素や栄養素を届けています。

体の各部から心へ戻る静脈の役割

からだを流れる血液は、心臓から酸素と栄養素を運ぶ以外に、からだから出た二酸化炭素などの老廃物を受け取る役目もあります。酸素と栄養素を受け取ると、血液が今度は二酸化炭素などの老廃物を受け取り、静脈を通って心臓に戻ります。心臓に戻った血液は肺に送られ、肺で二酸化炭素と酸素を交換して、酸素をたくさん受け取った血液が心臓に送られ、再び動脈を通って全身に流れていきます。

なぜ色が違う?青い静脈、赤い動脈のヒミツ

動脈と静脈は、色が異なります。それはなぜなのでしょうか?

酸素の有無と血の色

動脈は、酸素や栄養を運ぶ血液が流れています。そのため、血液の中には酸素を運ぶ物質「ヘモグロビン」が多く含まれています。ヘモグロビンは、酸素を運ぶとき鮮やかな赤色になるため、動脈血は明るい「鮮紅色」になるのです。

一方、静脈は全身で受け取った老廃物を多く含む血液が流れています。ヘモグロビンの多くは酸素を運んでおらず、そのため静脈血は動脈血のような鮮やかな赤色ではなく、暗めの色。「暗褐色」になります。

実際はイラストで描かれるような色ではないが、一般的イメージとして動脈は赤、静脈は青で描かれる。

皮膚越しに見える静脈の色

血液検査で腕を出したとき、血管が青く見えるでしょう。そもそも血液は赤い色をしているのに、なぜ血管が青く見えるのでしょうか?

これは、二酸化炭素を多く含んだ静脈だから。動脈はからだの深い部分を通っていますが、からだの外から見える血管はほとんどが静脈です。そして静脈に流れている血液は、酸素ではなく二酸化炭素を多く含んでおり、動脈のような真っ赤な血液ではなく青黒い色をしているのです。そのため、私たちが外から見るときに血管が青く見えるのではないかと考えられています。

また、青い光は皮膚の表面近くで反射しやすいのですが、赤い光は透過しやすいことから、私たちには赤い光は弱まって青い光の方が強く感じられることから、青っぽく見えるということも理由のひとつです。

ちなみに、手のひらや指先などの毛細血管は、皮膚の表面近くにあり、血液の色がほぼそのまま見えていると言われます。

動脈と静脈の健康:守るべきポイント

動脈と静脈の健康:守るべきポイント
動脈と静脈の健康について考える

私たちが健康に暮らしていくために大切な、動脈と静脈。大切な器官だからこそ、小さな不具合が大きな病気につながる可能性もあります。

動脈硬化を予防するための生活習慣

大切なのは、食事面でのケアです。積極的にとりたいのは、納豆などの大豆製品、海藻類、キノコ類、野菜などの食物繊維を多く含む食材です。また、チーズ、バターのような動物性脂肪分を多く含むもの、揚げ物、肉の脂身などは、中性脂肪を増やす原因となるため、食べすぎには注意して。

さらに、塩分の取りすぎやアルコールの飲みすぎ、喫煙も血圧をあげることにつながります。栄養バランスのとれた健康的な食事を第一に考えるといいでしょう。

血流を良くする方法とその重要性

よく「血液をサラサラにして流れをよくするといい」と言いますが、それはなぜでしょうか? これまでもご紹介してきたように、血液は酸素と栄養素を運んで、からだで出た老廃物を運んでいます。でも血流が悪くなると、老廃物を効率よく排出できなくなってしまうのです。

そのためには、全身の血流をよくすることが大事。こまめに水分補給して、脱水症状を起こさないようにすること。またストレッチをしたり、エスカレーターではなく階段を使ったりして、からだを動かすこともポイント。お風呂では、シャワーだけで済まさずしっかり湯舟に浸かって入浴すると、全身の血液がよく流れるようになります。

からだを巡る動脈と静脈

私たちのからだは、からだ中にはりめぐらされた血管によって、必要な酸素と栄養素が届けられて、不要になった老廃物を送り返して、暮らしています。そのためには欠かすことのできないのが、動脈と静脈です。

それぞれの役割を知ると、人間のからだの不思議をあらためて実感できますよね。血液は、ちょっとケガしたときにも出てくるため、身近な存在ですから、そんなときは動脈や静脈のはたらきに注目してみるといいのではないでしょうか。

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