「肺動脈」と「肺静脈」の基本の働きについて。全身に酸素をめぐらせる驚きのメカニズムとは【親子で人体を学ぶ】

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からだに酸素を取り入れて、いらなくなった二酸化炭素を外に吐き出す肺。その肺にある主要な血管が、肺動脈と肺静脈です。その2つはどんな役割があるのでしょうか? 肺動脈と肺静脈の構造や位置を知り、健康的な肺を維持するためにできることは何があるでしょうか?

肺動脈と肺静脈の基本

まず、肺動脈と肺静脈とはどんなものなのか、基本から確認しましょう。

心臓の4つの部屋と肺動脈と肺静脈の関係

「動脈」とは、心臓から血液を全身の臓器に送り出す血管で、「静脈」とは、全身の臓器から心臓に戻ってくるときの血管を指します。「動脈」と「静脈」はどちらも、心臓を中心として名前がつけられた血管です。そのため、肺動脈と肺静脈を理解するためには、まず最初に心臓のことを知ると、理解しやすくなります。

心臓のつくり

心臓は、4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)からできていて、心臓にある血管には、2本の大静脈、肺動脈、4本の肺静脈、大動脈があります。

肺動脈とは│基本的な構造と位置

「肺動脈」とは、心臓の右心室から肺へ血液を送り出す血管を指します。右心室からのびた静脈が肺動脈で、右心室の出口には血液が逆戻りしないように「肺動脈弁」と呼ばれる弁があります。肺動脈は、心臓から伸びて2つに分かれ、左右2つの肺につながります。

肺静脈とは│基本的な構造と位置

「肺静脈」とは、からだの各臓器から心臓に戻ってくる血管で、肺でとりいれた酸素を左心房(心臓)に戻します。左心房につながる肺静脈は全部で4本あり、左右の肺それぞれ2本ずつが左心房につながっていて、それぞれ右上肺静脈、右下肺静脈、左上肺静脈、左下肺静脈と名前がつけられています。

肺動脈と肺静脈の働きと役割の違い

肺動脈と肺静脈には、どんな働きや役割があるのでしょうか?

肺動脈には「静脈血」が、肺静脈には「動脈血」が流れている

全身にはりめぐらされた血管は、心臓から血液を全身の臓器に送り出す「動脈」と、全身の臓器から心臓に血液を戻す「静脈」に分けられるとご紹介しました。そして、中を流れる血液は、酸素を多く含んだ鮮紅色の「動脈血(どうみゃくけつ)」と、酸素が少なく二酸化炭素を多く含む「静脈血(じょうみゃくけつ)」があります。

からだの大部分の静脈には静脈血が、動脈には動脈血が流れていますが、肺動脈と肺静脈については、逆。「肺動脈」には「静脈血」が、「肺静脈」には「動脈血」が流れています。これは、動脈と静脈は心臓を中心に名前がつけられているのですが、酸素を得るのは肺だからなのです。

肺循環と体循環

また、心臓と肺と血液の流れを理解するためには、「体循環」と「肺循環」についても知っておくことが大切です。

「体循環」とは、心臓の左心室を中心とした血液の流れのこと。左心室から送り出された血液は大動脈と動脈を通って、からだの各臓器に酸素を送り、二酸化炭素や老廃物を受け取って右心房に戻ってきます。

一方「肺循環」とは、右心室を中心とした血液の流れで、右心室から出た血液が肺動脈を通って左右の肺の毛細血管につながり、新たな酸素を取り込んで肺静脈を通って左心房に戻ります。

  • 体循環=左心室→大動脈→からだの各臓器→静脈→右心房
  • 肺循環=右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房

私たちのからだは、この「体循環」と「肺循環」を交互に繰り返しながら、血液が体内をめぐっているのです。

循環系の簡略図。赤字は動脈血が流れ、青字は静脈血が流れる。肺動脈と肺静脈だけ、名称と実際に流れる血が逆になっていることに注意

肺動脈│酸素の少ない血液をどう運ぶ?

先にご紹介したように、肺動脈は右心室から肺動脈を流れる血管で、中に流れているのは「静脈血」です。右心室から流れた血液は肺動脈を通り、肺で酸素を取り込んで、左右の肺2本ずつの肺静脈を経て、左心房に戻ります。心室は、ポンプのような役割があり、血液を全身に送り出します。

肺静脈│酸素をたっぷり含んでどう運ぶ?

一方、肺静脈はからだの各臓器から心臓に戻ってくる血管で、中に流れているのは「動脈血」です。肺で酸素を取り込んだ血液が流れ、左心房に戻り、これが左心室を通って全身に送られます。

肺動脈と肺静脈を理解するためのポイント

肺動脈と肺静脈は、どちらも血液が流れています。そこで血液の流れについて知っておくと、それらの理解もさらにしやすくなるでしょう。

血液の流れ│効率的な血流の仕組み

私たちのからだにはりめぐらされた血管。その全長はなんと約9万㎞にもなると言われています。全身に血液が流れる仕組みをわかりやすく言うと、ポンプのように押し出された血液が体中をめぐって、およそ50秒ほどで全身を1周して戻ります。

ただ、静脈は自分で血液を運ぶ力はほとんどなく、脚の筋肉が収縮したり弛緩したりすることで、血液を心臓まで戻しています。そのため、運動不足になったり、同じ姿勢を長時間続けていたりすると、筋肉がかたまって血液のめぐりが悪くなってしまうのです。

圧力と速度│どうして違いが出るの?

心臓は、4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)に分かれているとご紹介しました。

このうち、「心房」は血液を受け取る方で、「心室」は血液を送り出す役割があります。「心室」は心臓の収縮によって、ポンプのように全身に血液を送り出します。動脈は強い圧力がかかるので、血管の壁が厚くなっています。

心臓は毎日休まず動く

心拍数とは、心臓が1分間に拍動する回数のこと。健康な人なら1分間に60~100回の拍動があり、それだけ心臓が1日中、休むことなく動き続けているのです。

心臓の動きは、人が運動するときや気持ちの変化によっても変わり、活発に運動するときは心拍数が早くなり、自宅でリラックスしているときや穏やかな気持ちでいるときは、心拍数は遅くなります。

肺動脈と肺静脈を守る│健康な生活で心臓と肺をサポート

肺のつくり

肺動脈と肺静脈は、血液で全身に酸素をめぐらせるために、とても大切な存在であるとおわかりいただけたでしょうか。そこで考えたいのが、肺動脈と肺静脈を守ること。私たちが普段の生活で気を付けていけばいいことは何でしょうか?

運動の効果│健康な肺と心臓を保つ

定期的に運動すると、心臓が強くなって肺の調子もよくなります。運動すると筋肉が強化されて、1回の心拍で運べる酸素の量が増え、また肺で取り込む酸素の量も多くなります。そのおかげで、血圧を低下させたり、悪玉コレステロール値を下げたり、善玉コレステロール値を上げたり、さまざまな健康効果が期待できるのです。

さらに、運動すると心身をリフレッシュできてストレスが軽減。ハッピーな気持ちになったりする効果も期待できます。適度な運動を定期的に続けていくことは、私たちの健康をキープする大切な要素のひとつなのです。

食生活のポイント│良い血流を作る食べ物とは?

肺動脈や肺静脈の健康を維持するためには、そこに流れる血液をよくすることも大切です。よく言われるのは、サラサラの血液。

ドロドロとした粘度の高い血液では、全身まで血液が流れにくく、酸素や栄養素を行き届かせるのが難しくなります。ジャンクフード、ファストフード、脂肪分や糖分・塩分の高い食べ物と飲み物ばかりとっていると、そんなドロドロ血液になりやすくなります。

サラサラな血液にするには、イワシ、サンマ、サバなどの青魚、納豆、たまねぎ、海藻などを積極的にとるのがおすすめです。健康的な食生活は、血液のめぐりがいい健康的な体の第一歩です。

環境と生活習慣│どうやって肺動脈と肺静脈を守る?

喫煙は肺や肺の動脈・静脈の健康に悪い影響を及ぼす可能性が高くなります
喫煙は肺や肺の動脈・静脈の健康に悪い影響を及ぼす可能性が高くなります

肺動脈と肺静脈を守るために気を付けたい生活習慣としては、喫煙。

タバコには数千種類もの物質が含まれていて、発がん作用のある物質も数多く含まれていると言われています。そのため、タバコを吸うことは、どうしても肺や肺の動脈・静脈の健康に悪い影響を及ぼす可能性が高くなるのです。

人間の体に必要な酸素を届ける肺動脈と肺静脈

ご存じの通り、私たちは酸素がないと生きていくことができません。そして、肺は呼吸によって、体内に酸素を取り入れて、不要な二酸化炭素を外に出す大切な役割があります。また、肺で取り込んだ酸素を体内にめぐらせて、全身で出た二酸化炭素や老廃物を血液にのせて外に排出させるための働きを担うのが、肺動脈と肺静脈です。

つまり、どちらも私たちが元気に生きていくためには、必要不可欠な存在ということです。心臓と肺、さらに酸素や二酸化炭素を運ぶ肺動脈と肺静脈の役割を知ると、私たちの循環系がどんな仕組みでできて動いているのか、理解できるのではないでしょうか。

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文・構成/HugKum編集部

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