肝臓の基礎知識
肝臓は人の体のなかで、重要な役割を持っています。一方で、問題が起きても、自覚症状が現れにくく「沈黙の臓器」と呼ばれています。まず肝臓の基礎的な知識を見ていきましょう。
肝臓とは
肝臓は、人の体の中で最大の内臓で、体重の約50分の1を占めており、体内環境の維持にかかわる非常に多くの機能を持っています。
具体的には、代謝や有害な物質の分解(解毒)、体液を一定に保つ機能などです。また十二指腸に胆汁を分泌することで消化器官としての役割も担っています。
肝臓の位置
肝臓は、腹部の右上、横隔膜の下にあります。
牛や豚、鶏の肝臓は「レバー」と呼ばれ、栄養価の高い食べ物です。ガチョウやアヒルに大量のエサを与え、大きくした肝臓はフォワグラとして知られています。また、ボクシングで肝臓を狙って打ち、相手にダメージを与えることを「レバーブロー」と言います。
肝臓の形
鶏のレバーを見たことはあるでしょうか。横長の三角形のような形をしています。人間の肝臓も、丸でも四角でもない、三角形を横長にしたような形です。長さは20cm程度、幅は15cm程度、厚みは10cm程度です。
肝臓のサイズと重要性
肝臓はサイズ、大きさは、人によりさまざまですが、一般的には体重の約50分の1の重さがあります。体重50キロなら、肝臓の重さは1キロ前後というわけです。
肝臓の働きとしてよく知られているのは、体内から有毒なものを取り除く機能です。肝臓は血液から、体内の不要なもの、有毒なものを取り除いています。代表的なものがアルコール(お酒)です。アルコールは肝臓で分解され、無毒化されます。
また、肝臓は重要な役割を持っているために、人の内蔵の中でも再生能力が高いことが特徴です。そのため、負担が大きくなって、機能が落ちたり、悪い部分ができても、自覚症状が現れにくく、「沈黙の臓器」と呼ばれています。問題がないからと言って見過ごさず、健康的な生活習慣を維持し、定期的な健康チェックを受けることが大切です。
肝臓の主な機能と役割
さまざまな機能を持ち、体の中で重要な役割を担う肝臓。主な機能と役割を整理してみました。
機能と役割1:「解毒作用」体に良くないものをきれいにする
肝臓は、体内の有害な物質を分解して無害化することで、体内を正常な状態に保つ解毒作用があります。
前述していますが、一般的に有害な物質とされる代表例はアルコールです。アルコールは肝臓で分解されます。また、体内で作られた老廃物を分解して、体外に排出する役割も担っています。
機能と役割2:「栄養の保存」体にエネルギーを供給するための準備
肝臓は、脂質を分解して、エネルギーを作り出すことができます。また糖質をグリコーゲンとして保存し、体にエネルギーを供給するための準備を行っています。
肝臓に保存されたグリコーゲンは、ブドウ糖に分解されて体内に供給されます。ブドウ糖は運動はもちろん、脳にとって重要な栄養素です。脳は睡眠中も休みなく動いています。そんな脳に肝臓は24時間365日、休みなく、エネルギーを供給しています。
機能と役割3:「胆汁の生成」食べ物の消化を助ける役目
肝臓は、胆汁を作り出し、十二指腸に分泌します。肝臓から分泌された胆汁は、脂肪や油を分解するために必要な消化酵素を含み、脂質の消化吸収を助けます。その意味で肝臓は、消化器官としての役割も担っています。
また肝臓で無毒化された体に不要なものを体外に排出する役割もあります。
機能と役割4:「代謝機能」栄養を体が必要なものに変える
肝臓は、食物から取り込まれた栄養素を分解し、体の中のさまざまな器官が必要とする形に変えます。代謝という機能です。
例えば、肝臓は糖質をグリコーゲンという形で蓄え、必要に応じてブドウ糖に変えて体内に供給します。ブドウ糖は脳の活動に欠かせないほか、筋肉を動かすためのエネルギーとなります。
機能と役割5:「合成機能」タンパク質をアミノ酸から合成する
肝臓は、人の体に欠かせないタンパク質をアミノ酸から合成します。
私たちが食物から取ったタンパク質は、アミノ酸に分解されて消化吸収されます。肝臓は、アミノ酸から体を構成するために必要なさまざまなタンパク質を合成します。
肝臓がかかわっている体の機能
体を維持するための重要な機能を担っている肝臓。直接的な機能以外にも、間接的に次のような機能を担っています。
機能1:血液の浄化
肝臓は、体の中の有害なものを分解して無毒化していますが、具体的には血液を通して、体中から不要なもの、有害なものを集め、分解して体外に排出しています。
また運動すると、筋肉は乳酸を作り、血液の中に乳酸が増えていきます。肝臓は血液を通して乳酸を集め、グリコーゲンに変えてエネルギー源として蓄えていきます。
機能2:体温調節
肝臓は、体温調節にも関与しています。人の体の中で最大の内蔵である肝臓は、熱を生み出しており、血液の流れに乗せて熱を体全体に届け、血液の流れを調整することで体温を調整しています。
体の熱を作り出す機能は筋肉がその多くを担っていますが、最大の臓器である肝臓も熱を作り出し、体温を調整する役割を担っています。
機能3:体のバランスを整える(肝臓とホルモン)
肝臓には、体内のホルモンバランスを整える機能もあります。肝臓は、過剰に分泌されたホルモンを分解したり、不足しているホルモンの分泌を促して、体内のホルモンバランスを調整しています。
例えば、肝臓は女性ホルモンのエストロゲンを分解します。飲酒などで肝臓に負担がかかると、エルトロゲンが分解できず、バランスが崩れてしまい、体に不調が現れることがあります。
肝臓を健康に保つ方法
「沈黙の臓器」と呼ばれる重要な臓器である肝臓。肝臓を健康に保つにはどうすればよいか、見ていきましょう。
正しい食生活: 肝臓にやさしい食べ物とは?
解毒、栄養の保存、胆汁の生成、代謝、タンパク質の合成といった肝臓の重要な働きのために欠かせないものが、ビタミンとミネラルです。
ビタミンとミネラルはそもそも体の機能を正常に保つために不可欠な栄養素ですが、体内で作り出すことはほとんどできません。そのため、食事で上手に取ることが大切になります。ビタミン・ミネラルが多く含まれる食べ物は、野菜、きのこ、海藻などです。
また、肝臓は回復力に優れた臓器ですが、そのためには良質なタンパク質を取ることも大切になります。魚介類、肉類、大豆、卵などからタンパク質を取るようにしてください。加工食品は塩分や脂質も多く含まれているので注意が必要です。
もちろんビタミン・ミネラル、良質なタンパク質を含めて、栄養バランスの良い食事を取ることが、肝臓の健康につながります。
適切な運動と肝臓の健康
適切な運動も、肝臓の健康には欠かすことができません。適度な運動は、脂肪肝を防ぐことにもつながります。
運動というと、いきなりランニングや水泳、サイクリングなど、体に負担のかかる運動を始める方もいますが、おすすめなのがウォーキング。過度の運動は逆に肝臓に負担をかけてしまうことになります。
定期的な健康診断
「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓の病気の早期発見と予防のためには、「定期的な健康診断」も欠かせません。
会社で仕事をしている人は、年に一度、健康診断が行われているはずです。年齢に応じて、日帰りの人間ドックを受診できるところもあるでしょう。忙しいからと後回しにせずに、意識して定期的に受診するようにしましょう。あるいは、自治体が行っている健康診断もありますので、積極的に利用してください。
休肝日をもうけて肝臓を休ませる
過度な飲酒(アルコールの摂取)を避けることも大切です。24時間365日休みなく働いている肝臓のことを考え、肝臓を休ませるためにアルコール断ちをする「休肝日」をもうけるのもいいですね。
また持病や治療のために薬を飲んでいる方は、医師や薬剤師の指示をよく聞いて、適切に使うようにしてください。薬の過剰摂取は、場合によっては肝臓に負担を与えることもあります。
肝臓はたくさんの機能を担う“沈黙の臓器”
人間が活動するために複雑な化学変化をたくさん起こす肝臓は、体の中でもっとも重要な臓器のひとつです。人間は、肝臓のあらゆる働きを実現する化学工場を、まだ現実世界に作ることができていないそうです。現代科学をもってしても、肝臓の働きを超えることができないのですね。それほど大切な臓器である肝臓について親子で知ることで、家族みんなで肝臓を労り、健やかな毎日を過ごすようにしましょう。
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文・構成/HugKum編集部