「腎臓」は体の清掃員! 2段階の精緻な仕組みで血液をろ過【親子で人体を学ぶ】

腎臓は、血液から老廃物や余分な水分などを取り除き、尿として体外に排出するという役割を担っています。2段階の巧妙な「ろ過」の仕組みを持つ腎臓。その基礎知識や主な機能や働き、腎臓の健康を守る秘訣などを紹介します。

腎臓の基本|体の中での位置と大切さ

腎臓は、血液から老廃物や余分な水分などを排出するという役割を担っています。

英語で「キドニー」と呼ばれる腎臓。某輸入車のフロントグリルは「キドニーグリル」と呼ばれたり、ボクシングでは腎臓付近への攻撃は「キドニーブロー」と呼ばれ、反則とされています。それだけ大事な器官というわけです。

腎臓とは

腎臓は、体の中の老廃物や余分な水分を排出する役割を担っている重要な器官です。

血液をろ過し、老廃物や水分を取り除くことで尿を作り、体の外へ排出し、水分や塩分、ミネラルなどのバランスを維持しています。水分や塩分を調整することは血圧の調整にもつながります。また赤血球の生成にもかかわっています。

腎臓の形と場所:どこにあるの?

腎臓は、そら豆のような形をしており、腰の上のほうの背中側にあります。背骨の両側に左右に1つずつありますが、右の腎臓は上に肝臓があるため、左の腎臓よりも位置が少し低くなっています。

前述したように、ボクシングでは腎臓への打撃は「キドニーブロー」と呼ばれ反則行為になります。心臓や肝臓は肋骨に守られていますが、腎臓は腹部の背中側にあるため、骨に守られていないためです。

腎臓の大きさと体への影響

腎臓の大きさは、直径10〜12cm程度、握りこぶしくらいの大きさです。

老廃物や余分な水分を排出する役割を担っているので、腎臓がうまく働かなくなると、体の中に老廃物や水分が溜まってしまいます。その結果、体がむくんだり、尿が減ったり、貧血や倦怠感につながります。

腎臓の主要な機能:どんな仕事をしているの?

腎臓の主要な機能:どんな仕事をしているの?
腎臓の主要な機能:どんな仕事をしているの?

老廃物や余分な水分を取り除く腎臓の役割を詳しく見ていきましょう。

機能1:「体の浄化システム」どのように毒素を取り除く?

腎臓は、血液をろ過することで老廃物や不要な水分を取り除きます。腎臓の中には、毛細血管が球状に丸まった「糸球体」が約100万個あり、心臓から送られてきた血液をろ過しています。

糸球体でろ過された老廃物や余分な水分は「原尿」と呼ばれます。が、実は原尿はそのまま体外に排出されるわけではありません。

機能2:「栄養素を再吸収」不要物は尿として排出

糸球体でろ過された原尿は、そのままでは体外に排出されません。腎臓が1日に作り出す原尿は、約150リットルにもなります。大きなドラム缶が200リットルですから、それが尿として排出されると大変なことになります。

実は、原尿には老廃物のほかに、アミノ酸やブドウ糖などの栄養素や、さまざまなミネラル(ナトリウム、カリウム、リン、マグネシウムなど)がまだ含まれており、腎臓はそれらを再吸収しています。そして最終的に体外に排出される尿は1〜2リットル程度になります。

機能3:「水分と塩分のバランス」なぜ重要なの?

腎臓の役割は、体の中の水分やミネラルのバランスを保つことともいえます。

水分と塩分は人が生命を維持するために欠かせないもので、体の中の水分バランス、塩分バランスは、生命維持に直結することです。また水分と塩分のバランスは血圧の維持にもつながっています。

機能4:「血圧調節」腎臓が関与する驚きの事実

腎臓は、血液をろ過する働きに加えて、血圧を調整する機能もあります。血液をろ過するためには、血液が一定の流れを保っていることが大切だからです。

腎臓が血圧調整のために分泌するホルモンは、レニンと呼ばれます。何らかの理由で腎臓への血流が悪くなると、レニンが大量に分泌されて血圧が上がりすぎることがあります。また腎臓は、赤血球の生成にかかわるホルモンも分泌しています。

腎臓の一日|数字で見る腎臓のすごさ

腎臓の働きを腎臓が一日にろ過する血液の量や排出する尿の量から再確認してみましょう。

一日に浄化する血液の量は?

腎臓が一日にろ過(浄化)する血液の量は約150リットルです。ただし、そのうちの99%以上は体に必要なもので、腎臓で再度吸収されます。腎臓は、2段階の精巧なろ過機能を備えているのです。その結果、一日に排出される尿の量は約1〜2リットルになります。

尿として排出される物質とは?

尿の約95%は水で、5%が老廃物です。尿として排泄される老廃物は、尿素、クレアチニン、アンモニア、尿酸などです。余分な ナトリウム(塩分)、カリウム、カルシウムなども尿として排出されます。

腎臓の効率の良さ:他の器官との比較

腎臓は、まず糸球体で血液をろ過して、老廃物や水分を取り除きますが、前述したように、99%は糸球体につながる尿細管などで再度、必要なものとして吸収されます。糸球体と尿細管が組み合わさったものを「ネフロン」と呼びますが、腎臓にはネフロンが約100万個あります。

つまり腎臓は、2段階の巧妙なろ過機能を多数備えた器官です。胃や小腸、大腸からなる消化器官もそれぞれ役割が違い、栄養素を吸収していきますが、こちらは消化の流れに沿って栄養素を吸収していきます。一方、腎臓は、一度ろ過して捨てたものから、必要なものを再度吸収するという2段階の働きがあります。

どうしてこのような形になったのかは、人の進化の不思議さと素晴らしさとしか言えませんが、2段階になっていることで、より精緻に、より細かく、体内のバランスを調整できるようになっています。

腎臓を守る|健康の秘訣と予防策

腎臓を守る:健康の秘訣と予防策
腎臓を守る:健康の秘訣と予防策

腎臓の健康を維持し、病気を予防するにはどうすれば良いでしょうか?

腎臓の働きが悪くなってしまうと、最終的には人工透析が必要になってしまいます。血液を体外に取り出し、血液透析器でろ過する人工透析は、1回に4時間程度かかり、週3回が一般的なペースです。日常生活に大きな負担がかかることになります。

適切な水分摂取:どれくらい飲むべき?

1日に取るべき適切な水分摂取量は、男性で2.5リットル程度、女性で2リットル程度です。もちろん、個人によって違い、季節や運動量によっても適切な水分量は変わってきます。ここ数年は夏の最高気温が高くなり、十分に水分を取ることが必要です。

ただし、健康法の一環として水をたくさん飲むことを推奨している情報などを見かけることがありますが、水分を過剰に取ることは、体から余分な水分を取り除く働きをしている腎臓に過度に負荷をかけることにつながります。水分の取り過ぎにも注意が必要です。

腎臓に優しい食生活のポイント

腎臓は、老廃物や余分なものを体外に排出することが役割です。それを考えると、腎臓に優しい食生活のポイントがわかります。つまり、

  • 塩分を取り過ぎない
  • 糖分を取り過ぎない
  • 良質なタンパク質を摂取する
  • 水分を取り過ぎない
  • アルコールを取り過ぎない などです。

つまりは、よくある表現ですが「健康的でバランスの取れた食生活」を心がけることが腎臓の健康を守るためには大切になります。

腎臓の病気:早期発見と予防のヒント

腎臓は、自覚症状が現れにくく、肝臓と同じように「沈黙の臓器」と呼ばれることもあります。そのため、腎臓の病気は早期発見が何よりも大切になります。会社や自治体で行われる健康診断には尿検査が含まれています。尿の状態を検査することで尿を作っている腎臓の状態をチェックすることができます。

腎臓の病気を予防するには、バランスの取れた食生活、適度な運動を心がけ、アルコールの取り過ぎに注意し、しっかりと睡眠を取り、体を休めることが大切です。

手や足、あるいは顔がむくむ、尿が少ない、あるいは回数が多いなどの症状が出てきたときは、早めに医療機関を受診してください。

腎臓の仕事は多岐に渡る

腎臓の主な仕事は尿を作ることですが、それ以外にも、血圧の調整や骨の組成、体のバランスを保つなど、さまざまな働きをしています。家族の健康のためにも、食生活や生活習慣に気を付けて、腎臓を健やかに保ちましょう。

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