心臓の基本知識
心臓の役割、大切さは言うまでもないでしょう。全身に血液を送り出し、人の生命活動を支えています。人の生死は、心臓の動きで判断されることからも、その役割の重要性がわかります。
心臓とは
心臓は、私たちの体の中で最も重要な臓器のひとつです。その役割は、血液を全身に循環させること、いわば強力なポンプのような役割を果たしています。
心臓は、肺が取り込んだ新鮮な酸素を含んだ血液を全身に送り出し、逆に全身から送られてきた老廃物などを含んだ血液を肺に送っています。また肝臓や腎臓などの他の臓器と連携して、血液から不要なもの、有害なものを取り除いています。
体の中心、心臓の位置と形
心臓は、胸のほぼ中央にあります。よく「心臓は胸の左側」などと言われますが、心臓マッサージのときには、手は胸の中心に当てます。
形はほぼ円形で、こぶしくらいの大きさがあり、全体が心筋と呼ばれる筋肉で包まれています。そのため非常に丈夫で、以前、人気の医療ドラマで心臓移植手術中に床に落としてしまった心臓を「問題ない」といって、バスケットボールのようにバウンドさせるシーンがありました。
大きくわけて上下左右に4つの部分がありますが、右側は全身から送られてきた血液を肺に送り出す役割、左側は肺から送られてきた血液を全身に送り出す役割をしています。
なぜ心臓は止まらないの? 不眠不休の働きの秘密
心臓を構成する心筋は、不随意筋の一種で、腕や脚の筋肉とは違って自分の意志で動かすことはできません。心臓の動きをコントロールしているのは自律神経です。
自律神経は体の中のさまざまな機能を調整する役割を持っており、心臓の動き、具体的には心拍数を調節することも自律神経の役割です。自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経が活発になると心拍数が増えます。一方、リラックスして副交感神経が活発になると、心拍数は落ち着きます。
心臓の構造と働き
大きく4つの部分に分かれた心臓の構造と、それぞれの働きを見ていきましょう。
構造と働き1:「心室と心房」心臓の部屋の違い
心臓は大きく4つの部分に分かれています。「右心房」「右心室」「左心房」「左心室」です。心房と心室の違いは、心房は血液を受け取る役割、心室は血液を送り出す役割を担っています。
つまり、右心房は全身から送られてきた血液を受け取り、右心室に送ります。右心室は血液を肺に送り出します。左心房は肺から血液を受け取り、左心室に送り、左心室は血液を全身に送り出すというわけです。
右心室、左心室はどちらも血液を送り出すことが役割ですが、左心室は全身に血液を送り出すために、まわりの筋肉が右心室よりも厚くなっています。
構造と働き2:「右側と左側」役割の違い
前述したように、心臓の右側と左側では役割が違っています。心臓の右側は全身から送られてきた血液を受け取り、肺に送り出します。左側は肺から血液を受け取り、全身に送り出します。
右側は、血液を肺に送り出すポンプ。左側は、血液を全身に送り出すポンプと言えます。
構造と働き3:心臓のバルブとは?血液の逆流を防ぐ
心臓はいわば、2つのポンプを備えていますが、それぞれのポンプには入口と出口に、それぞれ血液の逆流を防ぐための弁がついています。血液の流れに合わせて開け閉めするバルブのようなものです。
全身から右心房に送られた血液は、右心房と右心室の間(右心房の入口)にある「三尖弁」を通って右心室に入り、「肺動脈弁」を通って、肺に送られます。一方、肺から送られてきた血液は、左心房と左心室の間(左心室の入口)にある「僧帽弁」を通って、左心室に入り、「大動脈弁」を通って、全身に送られます。
つまり、心臓の左側(全身に血液を送り出す側)で考えると、肺から送られてきた血液を左心房が受け取り、一定の量になると「僧帽弁」が開いて、左心室に送られます。このとき、「大動脈弁」は閉じています。左心室が膨らんで、血液を送り出す準備ができると、今度は「僧帽弁」が閉じ、「大動脈弁」が開いて、血液は全身に送り出されます。心臓は、心臓が膨らんだり、縮んだりして血液を送り出す動きと、血液の流れをコントロールする弁の動きが連動しているのです。
心臓の弁がうまく働かなくなると、血液を十分に送り出すことができなくなってしまい、全身の不調につながります。
構造と働き4:「酸素と栄養」心臓は血液で何を送り出すの?
心臓が全身に送り出すものは、新鮮な酸素と栄養を含んだ血液です。心臓は、脳やいろいろな内蔵、消化器、全身の筋肉に酸素や栄養を届けるために、強力なポンプの働きで血液を送り出しています。心臓から新鮮な酸素と栄養を含んだ血液を、全身に届ける血管は「動脈」と呼ばれます。
一方、脳や内蔵、消化器、筋肉など、全身から心臓に酸素の代わりに二酸化炭素を、栄養の代わりに老廃物などを受け取った血液は「静脈」と呼ばれる血管を通って、右心室に戻ってきます。
一日に何回?心臓のリズムと驚きの数字
心臓は一日に何回動いているかご存じですか? 心臓の心拍数や一生の間に鼓動する回数、血液の移動距離などを見ていきましょう。
一分間の心拍数:人によってどう違う?
心臓の心拍数は人によって異なりますが、通常、成人の心拍数は一分間に50〜100回が正常とされています。もちろん、年齢、性別、身体の状態などによってことなりますし、運動したり、ストレスを感じると心拍数は変わります。
一般的に、ふだんから運動をしている人は心拍数が少なくなります。子どもは心拍数が多く、成長するにつれて少なくなります。
生涯で心臓が打つ回数は?
一分間の心拍数を例えば80回とすると、一時間では4,800回。一日24時間では11万5200回となります。1年365日では4204万8000回。人生100年時代だとすると、42億480万回となります。
驚きの血液の移動距離: 地球を何周する?
人の血管は、動脈、静脈、さらには細い毛細血管まで含めると、全長は約10万kmと言われています。これは地球のまわりを約2周半する長さです。
そして心臓から全身に送られた血液は、30秒〜1分で再び心臓に戻ってきます。1日は、60分×24時間で1440分なので、1分で戻ってくるとすると、1日に体の中を1440回、回っていることになります。血液は毎日、非常に長い距離を移動しています。
心臓の動きが悪くなると、どうなる?
血液を送り出すポンプ機能に異常が生じると、脳や臓器、筋肉など全身に酸素や栄養が十分に行き届かない状態になります。疲れやすくなったり、呼吸がつらくなったり、足がむくんだり、手足が冷えるなど、さまざまな不調が現れます。
いわゆる「心不全」になると、体の状態は徐々に悪くなり、生命を縮めることになってしまいます。
心臓を健康に保つためのヒント
心臓を健康に保つためにはどうすれば良いでしょうか。食事、運動、リラックスなど、心臓を健康に保つためのヒントを見ていきましょう。
食事と心臓の健康:注意したい食材とは?
健康な食生活を維持することは、心臓を健康に保つための基本です。心臓は私たちの毎日の暮らしを支える基盤といえる存在。「これを食べればOK!」という食材があるわけではなく、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をバランスよく取ることが大切になります。
年齢や体の状態によって注意すべきポイントは異なりますが、まずは適切なカロリーを摂取すること、脂肪や糖質の取り過ぎに注意すること、ビタミン、ミネラルをしっかり取ることがポイント。またアルコールやカフェインの取り過ぎにも注意してください。
心臓の友は、適度な運動のすすめ
食事とともに適切な運動も欠かせません。運動は心臓や血管の健康を保ち、プラスの効果をもたらします。とはいえ、激しい運動は必要ありません。ウォーキングやジョギング、水泳などは心臓に良い運動といえますが、最も手軽な運動は、日常生活の中で「意識して速足で歩く」ことです。
運動する時間を取ることが難しい場合は、ちょっとしたお出かけの際に速く歩くことを意識してみると良いでしょう。
ストレスと心臓:リラックスする重要性
心臓は自律神経がコントロールしています。自律神経はストレスなどで乱れてしまいますが、それが心臓に悪影響を及ぼすこともあります。
ストレスが心臓に与える影響
自律神経は、体の中のさまざまな機能を調整しています。例えば、自律神経が乱れ、交感神経が強く働きすぎる状態が続くと、心拍数が上がり、脈拍が高くなる状態が続き、心臓に負担がかかり続けてしまいます。
ストレスを改善するには
ストレスの原因はさまざまですが、ストレスを改善するには規則的な生活を心がけること、適度な運動で自律神経の働きを改善させること、よく食べ・よく眠ることなどが大切です。仕事、人間関係、家族関係……、いろいろな問題があるかもしれまえんが、心臓はあなたの一生を支える重要な存在。リラックスして、大切にしてあげてください。
24時間、毎日働き続ける心臓
人間の体は、ほんの短い間でも酸素や栄養が届かないと死に至ります。そのため、心臓は決して休むことなく、睡眠中でも動き続け、24時間ずっと働きっぱなしです。
そんな心臓について、家族みんなで思いを馳せることによって、日々健康に過ごしていることに感謝し、より一層、自分や家族の体を気遣ってあげてくださいね。
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文・構成/HugKum編集部