虹彩ってなに?基本の知識
まずはじめに、虹彩(こうさい)とはどの部分のことか確認しましょう。
目の構造:どこに虹彩があるの?
私たちの目は、「黒目」と「白目」と呼ばれる部分でできています。中心にあるところが「黒目」で、周囲の白い部分が「白目」。
そして「黒目」をよく見ると、中心に黒い円があり、その周囲にやや薄めの色がついている部分に分かれているはずです。
この中心の黒いところが「瞳孔(どうこう)」で、周囲の薄い色がついている部分が「虹彩」です。日本人の多くの方は、虹彩が茶色っぽい色をしています。
虹彩の成分と特徴
虹彩は、虹彩表面、虹彩実質、虹彩色素上皮から構成されています。
虹彩表面には数多くのひだが存在して、虹彩実質には色素細胞があります。また虹彩の中には筋肉(平滑筋)があり、この筋肉の収縮によって、虹彩は瞳孔を開いたり絞ったりできるのです。
色の違いの原因:なぜ人は異なる目の色を持つのか?
人の目には、さまざまな色があります。日本人なら茶色がかった黒っぽい目の方が多いですが、西洋では青い目の人が多く、黄色がかった目の人などもいます。そもそも、そんな人の目の色の違いがあるのはなぜなのでしょうか?
メラニンの量と目の色
「人の目の色」は、虹彩の色によって異なります。これは虹彩に含まれるメラニン色素の量によって変わることがわかっています。
メラニン色素とは、紫外線を浴びたときにからだを守る役目がある色素。メラニン色素の量が多いと、黒や茶色っぽい虹彩になり、逆にメラニン色素の量が少ないと青やグレーっぽい虹彩になると言われています。
青い目、茶色い目、緑の目:それぞれの背景
瞳の色は虹彩によって異なり、虹彩はメラニン色素の量に関係するとご紹介しました。そのため、太陽光が多く注ぐ南国の人は、メラニン色素が多くなり黒や茶色の目の人が多く、太陽光があまり注がない地域の人はメラニン色素の量が少なく、青やグレーっぽい目の人が多いのです。
青い目は1万年前に生まれた
青い目は、実は1万年以上前には存在しなかったことが、これまでの研究でわかってきています。1万年ほど前になぜ青い目が誕生したのか、その理由はまだ不明です。太陽があまり注がない場所など、環境の変化によって青い目の人が生まれたのではないかと言われています。
一人一人で違う虹彩のパターン
虹彩の色と虹彩に無数にあるしわのパターンは、一人ひとりで異なります。それは、指紋のようなもの。そのため、指紋で個人を認識するような生体認証の技術の中には、虹彩を読み取って本人を認証する「虹彩認証」と呼ばれる技術もあるのです。
虹彩の役割:ただの色じゃない!
虹彩はただ色がついているだけではありません。虹彩の働きについて見てみましょう。
光の調節:瞳孔の大きさを変える仕組み
私たちがモノを見るとき、虹彩と瞳孔をあわせた「黒目」の部分に光が通っていきます。そして目の中に入る光の量を調節するのが、虹彩の大切な役割。
虹彩の中にある筋肉によって、瞳孔の大きさを変えることができるため、明るい強い光が目に入ってきたときは、目に過度な光が入らないように瞳孔を小さくします。逆に暗い場所で十分な光が目に入らないときは、虹彩が瞳孔を広げて、たくさんの光が入るようにしているのです。つまり、これはカメラの“絞り”に当たる役割を果たしているのです。
視覚のクリアさを守る
虹彩のすぐ後ろにあるのが、水晶体です。水晶体は、カメラのレンズと同じ働きがあり、カメラの焦点をあわせるように、目で見ているもののピントを調節する働きがあります。視覚がクリアになるのは、こんな虹彩や水晶体の働きがあるからなのです。
人間の目の色と遺伝:家族と同じ色なのはなぜ?
私たちの目の色は遺伝するのでしょうか?
目の色の遺伝の仕組み
目の色(虹彩の色)が違う理由は、メラニン色素の量の違いがあるとご紹介しました。それとあわせて、遺伝子の影響も受けます。
目の色は遺伝することもありますが、住んでいる地域の紫外線量によってメラニン色素の量も変わり、遺伝子とメラニン色素のバランスによって変わるのです。
珍しい目の色:紫や琥珀色はどうして生まれるの?
目の色は人によって異なりますが、大きく分けるとブラウン(濃褐色)、ヘーゼル(淡褐色)、グリーン(緑色)、ブルー(青色)、グレー(灰色)の5つの色に分けられると言われています。
しかし中には、紫や琥珀色の珍しい色を持つ人もいます。紫色の目の人は「バイオレットアイ」と言われ、琥珀色は「アンバー」と呼ばれています。これらの珍しい色もメラニン色素の影響を受けています。
虹彩の健康:保護とケアのポイント
虹彩は、私たちがモノを目で見るときに機能しているもの。そんな虹彩を大切に守るためには、どんなことに気を付けるべきでしょうか?
紫外線からの保護
太陽光を浴びると体内でビタミンDが生成されて、からだにいい影響をもたらします。でも紫外線の浴びすぎは、皮膚にとって悪影響を及ぼすもの。それは目にとっても同じです。
例えば、目が紫外線を直接浴びると、水晶体にダメージをもたらし、それが蓄積していくと白内障のリスクが上がるのです。角膜が紫外線によるダメージを受ければ、紫外線角膜炎を引き起こすことも考えられます。
そこで大切なのが、目を紫外線から守る対策。UVカットのサングラスやメガネをかけたり、帽子で紫外線を遮ったりしましょう。ちなみに、サングラスの色が濃さと、紫外線のカット率は関係がありません。必ず紫外線カット効果のあるサングラスやメガネを選ぶようにしましょう。
海や山のレジャーに行くときはもちろん、都会でもビルの建物による反射で紫外線は降り注いでいますから、常に目を守ることが大切です。
正しい生活習慣と虹彩の健康
からだの中からできるケアもぜひ取り入れて。皮膚の紫外線対策と同様に、緑黄色野菜や果物などからビタミンC、E、β―カロテンなどを積極的に摂取することで、紫外線を浴びて体内で発生する活性酸素を取り除きましょう。
目の疾患と虹彩:注意すべきサイン
目は毎日の生活のなかで、多くの情報を得ている大切な器官です。その目を守るためには、小さなサインを逃さず、病気の早期発見と早期治療が欠かせません。次のような症状を感じないか、確認してみましょう。
- 目がしょぼしょぼする
- 目の奧が痛い
- 目がかすむ
- 目がかすむ
- ピントが合いづらい
- ゆがんで見える
- ぼやけて見える
- 視野が狭く感じる
- モノの一部が欠けて見える
これらのことにあてはまったら、目が疲れているか、目になんらかの問題が起きている可能性があります。ぜひ定期的に眼科で目の健康状態をチェックしてもらいましょう。
瞳の不思議に注目
肌の色が人によって違うように、目の色もさまざま。そして、虹彩という部分は、指紋のように一人ひとりで特徴が違い、個人認証にも使われているほどなんですね。
虹彩は、遺伝とメラニン色素のバランスによって影響を受けるものなので、家族でも目の色が微妙に異なるかもしれません。親子でお互いにじっくり目をのぞきこんで、自分とは違うのか、どんな色をしているのか、観察してみても面白いかもしれませんね。
こちらの記事もおすすめ
構成・文/HugKum編集部