視神経とは何か?
そもそも視神経とは何なのでしょうか?基本から見てみましょう。
体の中の通信線:神経とは?
神経とは、からだ中に網目のようにはりめぐらされた細長いヒモのようなもの。からだのあちこちで得た情報を脳に伝える役割があります。
例えば、脚に何かのモノがぶつかったら、「痛い」や「冷たい」という情報が神経を通って脳に伝えられます。また、私たちがからだを動かそうとするときは、脳から出た指令が神経を通ってからだの各部位に伝わり、それによってからだが動いているのです。
視神経の位置と役割
からだ中にある神経のうち、視覚の情報を司っているのが視神経です。視神経は神経の繊維が100万本以上束になっていて、ケーブルのようになっています。視神経は目の奧から伸びて、脳までつながっています。
神経には、脳と直接つながる「中枢神経」と、中枢神経からからだの各部位までをつなぐ「末端神経」に大別できます。視神経は、脳に直接つながる中枢神経のひとつです。私たちがふだん目で周囲のものを確認できるのは、この視神経でさまざまな情報が脳まで伝わっているからです。
目から脳へ:光が情報に変わる過程
目で見て、モノの形や大きさ、色などを把握するためには、どんなプロセスを経ているのでしょうか?
光の旅立ち:網膜での光の受取
目でモノが見える仕組みは、カメラのレンズに映像を映す仕組みとよく似ています。
まず、周囲の光は、網膜に届きます。網膜は、眼球の内側にある薄い膜のこと。ここには、光を感じとり、色や形を認識したりする視細胞が大量に集まっています。この網膜が、カメラのフィルムのような役割を担います。
網膜から視神経へ:情報の変換
網膜にある視細胞が受け取った光、色、形などの情報は電気信号に変換されます。この電気信号が視神経を通って脳の視覚中枢まで伝えられるのです。
視神経のはじまりは、視神経乳頭と呼ばれる部分で、眼底の中央からやや鼻側に位置します。100万本もあるといわれる視神経の束が、視神経乳頭で1本にまとまっているのです。
視神経を通って脳まで情報が伝わるとはじめて、私たちは見たモノの映像を認識できることになります。つまり、私たちは「目でモノを見ている」とは言っても、本当は「脳でそれを理解している」というわけなのです。
視野の中心:黄斑と中心窩の役割
黄斑(おうはん)とは、網膜の中心部のこと。他の網膜の部分と比べると、薄く黄色っぽい色を帯びています。そして、中心窩(ちゅうしんか)は黄斑の中でもさらに中心部分。中心窩の「窩」という字は「くぼみ」を意味していて、直径0.35㎜の少し周囲よりへこんでいる場所を指します。黄斑と中心窩は特に視細胞が集まっている場所で、特に大切な場所なのです。
右半分と左半分の視覚情報は交差する
右と左にそれぞれ1つずつある目から入った情報は、どうやって脳に伝わっているのでしょうか。
右目と左目は同じものを見ていますが、モノとそれぞれの目までの距離が異なるため、そのままの情報を脳に送ると情報が混乱してしまいます。そこで、右目の左半球でとらえた情報と、左目の右半球でとらえた情報は左右で交差して、脳に伝わるようになっているのです。
なぜ私たちの視覚は途切れることなく続くのか?
私たちは、夜寝ているとき以外は、常に目を開けて周囲の情報を得ています。そんな風に視覚が途切れることなく続くのには理由があるんです。
視神経の高速伝達能力
視神経は、視覚の情報をすばやく伝達する能力があります。周囲のモノが動いたり、急にモノが自分に向かって飛んできたり、周囲の環境は刻々と変化しています。そんなあふれるほどの情報をどんどん高速で伝達する力があるから、私たちの視覚はずっと途切れずに周囲の動きをとらえ続けられるのです。
脳での情報の統合と解釈
視神経を通って次々と伝わる視覚情報。これを受け取るのが脳です。脳もそれらの情報を統合して、解釈して私たちは画像として認識できる仕組みになっているのです。
視神経のトラブル:失明の原因となることも
では、視神経になんらかのトラブルが起きた場合、どんな症状や病気が考えられるでしょうか。
視神経乳頭浮腫:原因と症状
視神経乳頭浮腫(ししんけいにゅうとうふしゅ)とは、視神経乳頭がむくんでしまうこと。
視神経乳頭の近い部分で病気が起きると、視神経乳頭がむくみ、眼底検査で異常が発見されます。視神経乳頭浮腫が起きると、一時的な視覚障害や頭痛、嘔吐などが起き、これらの症状が組み合わさって現れることもあります。原因として考えられるのは、脳腫瘍や脳内出血、脳の炎症などです。
緑内障:視神経を圧迫する危険性
緑内障は、視野が狭くなったり、部分的に見えなくなったりする病気です。
これは視神経に障害が起きることが原因。とくに中高年の方に多く、視野が狭くなる進行が非常にゆっくりで、両目ではなく片目だけで進行することが多いため、自覚しないうちに症状が進行してしまうことが多いといわれます。治療が遅れると、失明に至ることもあります。
視神経を守るためにできること
私たちがモノを見るときに使われている視神経。これを大切に守るためには、どうしたらいいでしょうか?
目の健康チェックを定期的に
私たちは毎日目を使っているせいか、目の病気にかかっても、それに気づきにくいことがあります。特に高齢者に多い緑内障は、進行が遅いため本人が自覚しないうちに、ゆっくりと症状が進行することが多くあります。
そのため、ぜひ行いたいのが目の定期的な健康チェックです。定期的に眼科で目の健康状態を検査することで、わずかな変化にもすぐに気づいて、病気の早期発見と早期治療につながります。
正しい照明での読書や作業の重要性
一日に何時間も使う目。スマホやPCが欠かせない現代では、とくに目が酷使されています。それに追い打ちをかけてしまうのが、適さない照明のもとで、読書したり作業したりすること。
編み物や針仕事といった細かい手作業を行う際は明るい照明が適していますが、パソコンやゲームの場合、明るすぎる画面は目を疲れさせてしまいます。
目の休息:20-20-20のルールとは?
米国眼科学会議がおすすめしているのが「20-20-20のルール」です。これは、ゲームやスマホなどのデジタル画面を20分見たら、20フィート(約6m)離れたところを20秒間見て、目を休めようというルールです。
ゲームやスマホの画面はつい集中して、長時間も見続けてしまうもの。子どもたちにもこんなルールを取り入れてみるといいでしょう。
大切な「目」を守ろう
私たちがふだん何気なく使っている目。目で見て周囲の状況や人の顔を確認したりできるのは、視神経という存在によって、視覚情報が脳に伝わっているからです。そんな大切な目を守るためにも、健康的な生活を心がけたいですね。
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文・構成/HugKum編集部