ママ・パパ自身の裸眼視力が悪い場合や、子どもの視力が悪くなってきている場合には、毎年の視力検査が気になる人も多いのでは。子どもの視力不良は、子ども自身が「見えていない」ことに気付きにくく、発見が難しいもの。今回は、子どもの視力に関する体験談や、視力の悪化を防ぐ方法、トレーニング法などをまとめてみました。
目次
子どもの視力に関する悩み【体験談】
子どもの視力に関する悩みをどのくらいの人が抱えているのか、7歳〜12歳の子をもつママ・パパにリサーチ。悩みの声が続々と挙がってきました。
Q.お子様は眼鏡を使用していますか?
子どもが眼鏡を使用しているかをリサーチしたところ、約30%の人が使っていると回答。思いのほか多いと感じる人が多いのでは。
子どもの視力に関するお悩み
次に、子どもの視力の悩みについて聞いてみました。眼鏡を使っている、使っていないに関わらず、悩みを抱えている人は多いよう。
『裸眼視力がどんどん悪くなっている』
視力が検査のたびに悪くなっていることが気になるという人は多いよう。このまま悪くなってしまうと眼鏡などを考えなければと悩んでいる人が多いですね。
『スマホ・パソコン・ゲームの影響が心配』
目が悪くなってしまう一番の原因と言われているのがスマホやゲームなどのデジタル機器。ずっと画面を見ていると、目に負担になるのではと心配になってしまいますよね。
『親の裸眼視力が悪いから心配』
ママ・パパの視力が悪い場合には、遺伝で子どもも目が悪くなのではと不安に感じる人も多いようですね。
『眼鏡に慣れていない』
すでに眼鏡を使用しているという子があまり使いたがらない、また不便に感じているようで気になるという人も多いよう。コロナ禍でマスクが必須になっている中での眼鏡使用は不便なことも多いですよね。
『眼鏡のメンテナンスが必要』
眼鏡には費用がかかったり、定期的に視力に合っているかのメンテナンスが必要に。どうしても金額がかかるだけに悩ましい問題ですよね。
子どもの裸眼視力低下に考えられる原因
では、不安に感じている人が多い、子どもの裸眼視力が低下してしまう原因はどんな理由が考えられるのでしょう?大きくは遺伝要因と環境要因の両方が影響しているようですが、そのほかに原因がある場合も。
遺伝に起因するもの
両親ともに近視の子どもは、両親ともに近視でない子どもに比べて、3~5倍近視になりやすいことが分かっているそう。近視のママ・パパが不安に感じるのも納得ですね。
生活環境が要因のもの
生活環境が原因の場合は、字を書いたり本を読む際に姿勢が悪く近づきすぎることが影響してきます。また、パソコンなどディスプレイを見る作業を長く続けていると、目が疲れてしまうので、近視になりやすいのではと言われています。照明が薄暗いところでの作業も原因のひとつ。
心因性のもの
検査をしても目に異常がないのに、視力低下や色覚異常などの症状があらわれる「心因性視覚障害」も増えているよう。心理的なストレスが目の機能に障害をもたらしていて、小学生くらいの子ども、特に女児に多く発生するというので心配ですよね。周囲が温かく接し、眼科を受診して原因を調べてもらうとともに、ときには心療内科などを受診して経過を診てもらうことが大切です。
急激な視力低下の原因は?
数日のうち視力が低下した場合には、病気が原因の場合も。白内障・網膜剥離・ぶどう膜炎など、ひどい場合には失明することもある怖い病気なので、早めに眼科へ行く必要があります。
子どもの視力を回復させることはできる?
近視の回復には絶対という方法はないのが現実。ただ、近くを見続けたことにより水晶体という目のレンズが緊張し膨らみ続けてしまう屈折性近視(仮性近視)という一時的な近視の場合には、視力の回復が可能なよう。まずは、目がよく見えないことの原因を探ってみましょう。
参考:公益社団法人日本眼科医会
まずは視力低下の原因を調べて
まずは眼科に行って、視裸眼力が低下した原因を調べることが大事。特に急激な視力低下の場合には、重篤な病気が隠れていることもあるので放っておくのは厳禁。
子どもの遠視は実は遠くも近くもボンヤリ
遠視は遠くがよく見える目と思いがちですが、実は遠くも近くもボンヤリして見にくい目です。日常生活に不自由がなさそうでも、測定をすると視力が十分でないことが分かります。また、視力がある程度よい場合には、目は常にピントを合わせようとしているため、目が疲れやすく頭が痛くなったり、読書やお絵かきなどの細かい作業が長続きしない、落ち着きがない、集中力に欠けるなどの症状が。遠視ならいいかと思いがちですが、子どもにとっては負担が大きいことが分かりますね。早めに検査をするのが大切です。
子どもの近視は学童期に増える
遠くの景色がボンヤリしてしまう近視は、都市型の近代国家に多いのが特徴だそう。特に、毎日の生活で勉強や読書、ゲームなど近くを見ることが増えることで、学童期に近視になる「学校近視」が増加しているそう。
子どもの弱視は発達が妨げられて起こる
成長期になんらかの原因で視力の発達が妨げられた状態を弱視といいます。ある程度以上の遠視があると、いつもピンボケの像しか見ていないことになって刺激が足りず、視力が十分に発達せず弱視になることがあるので要注意。視力の完成が6~8歳といわれているのでできるだけ早くに(理想は3~4歳)治療することが望ましいです。きちんとした眼鏡の使用で、良好な視力が得られることがほとんどです。
子どもの視力回復・トレーニング方法
目が悪くなってしまった子どもの視力を回復させるためのトレーニングはあるのでしょうか?少しでも効果があるのであれば、取り入れたいものですよね。
20分以上の外遊び
20分以上の外遊びをすると近視進行抑制効果があると言われています。慶應大学からバイオレット光が良いとの発表があり、外遊びでしか暴露されないバイオレット光に近視抑制の効果があり、1日2時間の外遊びがよいそうです。
専用の目薬を使用
寝る時にオルケトラジーを使う
特殊なカーブが施されたハードコンタクトレンズをつけて寝ることで、角膜を圧迫し近視を矯正するのがオルケトラジー。寝ている間に、角膜の形を一時的に変えるものなので、日中は裸眼で過ごすことができ、眼鏡やコンタクトレンズをつける必要がありません。子どもの近視の進行を抑制できるとしても普及してきているので、眼科でぜひ相談を。ただし自由診療となります。
マイオピン
「マイオピン」は、小児期の近視の進行を軽減させることを目的にアトロピンを0.01%配合させた点眼薬です。 シンガポール国立眼科センターの研究に基づいて開発されました。日本でも治療進行中で、自由診療ですが近視進行抑制効果があります。2年で50%程度抑制効果があると言われています。
クロセチン
慶応義塾大学・ロート製薬の研究よるとくちなし由来の色素成分、クロセチンが近視化を抑制するという報告もあります。
https://hugkum.sho.jp/127684
子どもの視力低下を防ぐには?
子どもの視力が悪くなる前に防ぎたい!というママ・パパは多いですよね。どんな手段があるのかまとめてみました。
照明で適度な明るさの調整を
勉強や読書をする際には、適度な明るさにすることが必要。具体的には、6畳程度のスペースでは40Wの蛍光灯1本か60Wの白熱灯3個分が目に最適といわれています。長時間読書するときはこれより明るめにするか、部分照明を活用しましょう。勉強で机に向かうときは部屋の明かりと一緒に、手元を照らすスタンドをつけるのが目によい照明の方法です。
正しい姿勢の見直し
読書や書字の際に正しい姿勢で十分な視距離をとることが重要なので、書物などから30cm以上目を離しましょう。また、パソコンやゲームなどデジタル機器を使用する際には、画面を15度程度後ろに傾け、目線より少し下に。画面から40cm以上離れて使用することが大切です。特にスマートフォンは画面に近くなりがちで、急性の斜視を起こすこともあるので注意が必要です。
適度に目を休める
ずっと目を使い続けるのは目の緊張状態が続いてしまうので視力悪化のもと。テレビゲームは30分、勉強や読書は1時間ごとに15分程度休憩を挟んで、目を休ませましょう。また、蒸しタオルをまぶたの上にのせると血行が良くなりスッキリ。
視力の悪化を防ぐには環境を整えることがいちばん
子どもの視力の悪化は原因が分からないことが多く、また悪くなってしまった場合に回復方法も少ないことが分かりましたよね。もし目が悪くなってしまったとしても、基本的には病気ではないので、必要以上に心配して子どもを不安がらせないことも大切。親が子どもにしてあげられることは、視力が悪化しないように環境を整えてあげたり、眼科を受診して正確な診断をしてもらうこと。親子で一緒に考えていきましょう。
記事監修
日本眼科学会認定 眼科専門医
院長 川名啓介
1993年 筑波大学医学専門学群入学
1999年 筑波大学医学専門学群卒業
1999年 筑波大学附属病院眼科ジュニアレジデント(研修医)
2001年 日製日立総合病院眼科医員
2002年 筑波大学附属病院眼科シニアレジデント
2003年 総合病院土浦協同病院眼科医員
2004年 筑波大学附属病院眼科チーフレジデント、および医員
2006年 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 眼科講師
2009年 かわな眼科を開設
文・構成/HugKum編集部