「網膜」に秘められた驚きの世界。それぞれの神経細胞の役割と、日常生活の注意点【親子で人体を学ぶ】

ものを見るときに重要な役割を果たす「網膜」。この網膜は、目のどこにあるのか、どのような構造と機能があるのかについて解説していきます。また、人間がものを見る仕組みや、網膜の健康についても説明します。

網膜とは?基本的な知識を学ぼう

網膜(もうまく)は、眼球の中にあり、光の刺激を受ける感覚細胞がある部分です。まずは網膜が目のどこにあるのか、その役割について学びましょう。

位置と形:目のどこにあるの?

眼球の後面にある壁の部分の内側にあるのが網膜。
眼球の後面にある壁の部分の内側にあるのが網膜

網膜は、眼球の後面にある壁の部分の内側にあります。名前に「膜」とついていることからもわかるとおり、形は薄い膜状で、その厚さはわずか0.1~0.4mmほどです。

網膜の主な役割

網膜の主な役割は、光を映像化して脳に伝えることです。網膜があることで、ヒトはものを見ることができます。

もし網膜が剥がれてしまうと、視力が低下したり視野が欠けたりし、最悪の場合には失明の恐れもあるのです。網膜はものを見るために重要な構造物だといえます。

網膜の驚くべき構造と機能

網膜は9層の神経網膜と1層の網膜色素上皮の、計10の層で成り立っています。それぞれの層には、神経細胞が存在しています。どのような神経細胞があるのか、またその機能についても解説していきます。

光をキャッチする:視細胞とは?

視細胞とは、外界の光をキャッチする細胞のことです。この視細胞には、錐体(すいたい)細胞と桿体(かんたい)細胞があります。

視細胞(錐体細胞・桿体細胞)は網膜の視細胞層から外網状層にかけて存在する

色彩と明暗:錐体細胞と桿体細胞の違い

錐体細胞は色や形を認識する細胞で、明るい場所ではたらきます。一方の桿体細胞は、明度を感知する細胞で、暗い場所ではたらきます。両者の違いは、認識・感知するものと、はたらく場所にあります。

脳の各部分に情報を伝える:神経節細胞

神経節細胞は、神経節細胞層にある神経細胞です。網膜の視覚情報を視床、視床下部、中脳へ伝達する役割があります。

網膜神経節細胞の応答を調節する:アマクリン細胞

アマクリン細胞は、内顆粒層にある神経細胞です。網膜神経節細胞の応答を調節する役割をもつと考えられています。

刺激を伝える:双極細胞

双極細胞は、内顆粒層にある神経細胞です。太い突起が2本あり、片方の突起から刺激が細胞体に伝えられ、もう1本の突起からその先端に刺激が伝えられます。

横方向の情報を伝える:水平細胞

水平細胞は、外網状層にある神経細胞です。水平細胞には、視細胞同士、神経節細胞同士の横方向の情報を伝える役割があります。

電気信号の伝達:網膜の神経回路

網膜にある視細胞、神経節細胞、アマクリン細胞、双極細胞、水平細胞、の5つの神経細胞は、どのように電気信号を伝達していくのでしょうか。

光が網膜の層に入ると、視細胞で電気信号に変換されます。変換された電気信号は、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、神経節細胞に伝達。そして神経繊維層を通じて視神経乳頭へ運ばれていき、視神経から脳の視覚野へと伝達されます。

視覚と網膜:私たちが見ることができる理由

私たち人間が、ものを見るしくみについて解説していきます。

光から映像へ:網膜が画像をどのように解釈するか

目に入ってきた光は、角膜と水晶体で屈折します。屈折した光が網膜にあたると、網膜で明るさ、形、色が感知されます。それらの情報が視神経を通り、脳に伝わってものが見えるのです。

角膜と水晶体で屈折した光は、網膜で感知され、視神経から脳に伝わる。
角膜と水晶体で屈折した光は、網膜で感知され、視神経から脳へ伝わる。

脳との連携:視覚情報の処理と解釈

網膜が感知した情報は、視神経を通り、大脳の後頭部にある視覚野に届けられます。大脳がその情報をほかの情報や記憶と照合し、感知した情報がなにであるかを分析・判断して「ものが見えた」と解釈するのです。

脳を横から見た図。図の左側が前。視覚野は後頭部にある

▼関連記事はこちら

「見える」ってどういうこと? 視神経から脳に伝わる仕組みと、視神経を守るためにできること【親子で人体を学ぶ】
視神経とは何か? そもそも視神経とは何なのでしょうか?基本から見てみましょう。 体の中の通信線:神経とは? 神経とは、からだ中に網目の...

網膜の健康:保護とケアの方法

網膜の健康な状態の維持には、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。日常生活での注意点や有効な栄養素・サプリメントを紹介していきます。

日常生活での注意点

網膜には、たくさんの血管が存在しています。この血管によって、眼の細胞に栄養や酸素を運んでいるのです。この血管に負荷がかかると、網膜に出血やむくみが発生し、目の病気になる可能性が高くなります。

網膜の血管に負荷がかかる要因には、喫煙、紫外線、高血圧、生活習慣の乱れなどがあります。日常生活において、これらを避けるようにすることが大切です。禁煙する、サングラスをかけて紫外線から目を守る、規則正しい生活を送るなどを心がけましょう。

サングラスの日常使いで紫外線から目を守ろう。
紫外線の強い季節や場所ではサングラスで目を守ろう

また眼球を強くぶつけたり、叩かれたりすると発症する可能性があるのが「網膜剥離」です。

網膜剥離は、網膜が剥がれる病気です。網膜が剥がれると栄養供給が途絶え、視細胞の機能が低下してしまいます。そうすると視力が低下したり、視野が欠けて見えたりすることがあります。日頃から、眼球を強くこすったりしないように気を付けましょう。

なお網膜剥離は、加齢や糖尿病などによって引き起こされることもあります。

有効な栄養素とサプリメント

網膜細胞機能の発達を助ける栄養素が、タウリン類です。タウリン類を多くふくむ食べ物には、アサリ、ホタテ、タコ、タイ、牡蠣、イカ、はまぐり、うに、あじなどがあります。

また網膜に届いた光を映像に変換するときに、ビタミンAが多量に必要となります。そのため、ビタミンAも積極的に摂るようにしましょう。ビタミンAを多くふくむ食べ物には、レバー、卵黄、にんじん、ほうれん草などがあります。市販のサプリメントを活用するのもおすすめです。

網膜を健康に保つ役割がある栄養素に、亜鉛があります。亜鉛を多くふくむ食べ物は、牡蠣や赤身の肉、鶏や七面鳥、豆類などです。亜鉛もサプリメントが市販されているため活用するのもよいでしょう。

アサリは、網膜細胞機能の発達を助けるタウリンが豊富な食材のひとつ

目を守るための生活習慣

健康な目を維持するためには、目を疲れさせないことが大切です。生活習慣で気をつけたいポイントをご紹介します。

●作業や勉強をするときには、部屋の照明を適度な明るさ調整しましょう。明るさは300ルクス以上がよく、明暗の差がない場所が適しています。

●近くのものを見るときには30〜40cm目を離すと、目の緊張や疲れを緩和できます。

●目を強くこすったり、汚れた手で目を触ったりすると、炎症を起こす場合があります。なるべく触らないようにし、目の周辺を触る場合は顔や手を清潔にしておきましょう。

●寝転んでスマホや本を見ないようにしましょう。寝転んでスマホや本を見ると、片方の目に負担がかかり疲れやすくなってしまいます。

●睡眠によって、成長ホルモンやメラトニンといった心や体の疲労回復に必要なホルモンが分泌されます。睡眠時間はしっかり確保するようにしましょう。

●まばたきを意識的に多くし、乾燥を防ぎましょう。

●1時間に一度は目を閉じて休めたり、近くと遠くを交互に見たり、目をキョロキョロさせて体操したりすると、眼精疲労の予防になります。

●コンタクトレンズは、正しく使用しないと目の病気にかかりやすくなります。清潔な手で扱い、他人との貸し借りなどはしないようにしましょう。

光を映像化して脳に伝える「網膜」を健康に保とう!

網膜を疲れさせないため、勉強のときの姿勢も気をつけよう。
網膜を疲れさせないため、勉強のときの姿勢にも気をつけて

網膜はわずか0.1~0.4mmほどの薄い膜でありながら、光を映像化して脳に伝えるという、ヒトがものを見るときに重要な役割を果たしています。

網膜が剥がれてしまうと、視力が低下したり視野が欠けたり、最悪の場合には失明の恐れもあります。

タバコの煙や紫外線などといった網膜に負荷がかかるものから目を守り、網膜を健康に維持する栄養素を積極的に摂るようにしましょう。またご紹介したような、目を疲れさせない生活習慣も大切です。日頃から、網膜を守るための生活を心がけていきましょう。

こちらの記事もおすすめ

「虹彩」の働きとその秘密。青い目・茶色の目…目の色が違う理由は?【親子で人体を学ぶ】
虹彩ってなに?基本の知識 まずはじめに、虹彩(こうさい)とはどの部分のことか確認しましょう。 目の構造:どこに虹彩があるの? 私たちの...

小学館の図鑑NEO[新版]人間 (DVDつき)

文・構成/HugKum編集部

編集部おすすめ

関連記事