駅伝とはどのような競技?
「テレビ中継をよく見るけど、そもそも駅伝についてよく知らない」という人は意外と多いかもしれません。まずは「駅伝とは何か」といった基本的な情報から見ていきましょう。
駅伝の基礎知識
駅伝とは「複数の選手がリレー形式で長距離を走る競技」で、バトンの代わりに「襷(たすき)」をつないでいくのが特徴です。
駅伝という名称の由来は、奈良時代の「駅制」が元になっています。中央と地方を結ぶ幹線道路には、役人のために「駅馬」と「伝馬」が用意されており、これが駅伝の語源です。1917年に「東京奠都五十年奉祝・東海道駅伝徒歩競走」が開催された際、初めて「駅伝」という名称が使用されました。
駅伝は日本で生まれ、日本で発展した競技です。そのため、外国でも「Ekiden」で伝わることもあります。その言葉を相手が知らなかった場合は「road relay」と言い換えるとよいでしょう。
駅伝の2つの主な醍醐味
駅伝のテレビ中継に見入ってしまう人が多いのは、駅伝ならではの醍醐味があるからです。中でも「ごぼう抜き」と「襷」について見てみましょう。
圧巻の走りが見られる「ごぼう抜き」
一人の選手が次々と他の選手を追い抜いていくことを、「ごぼう抜き」と表現します。ごぼう抜きとは「ごぼうを抜くように、棒状のものを一気に引き抜くこと」なので、本来の意味とは多少異なること覚えておきましょう。
箱根駅伝でのごぼう抜きの記録は、2009年の日本大学ギタウ・ダニエル選手の20人抜きです。ダニエル選手は2区で出走し、22位から2位まで追い上げました。
スタートから間もない2区は前後の差がまだ小さく、ごぼう抜きが起こりやすい区間です。そのため2区は「花の2区」と呼ばれ、エース級の選手が走ります。
2区以外では2005年大会、上り坂の5区で順天堂大学・今井正人選手が11人抜きを達成し、「山の神」と呼ばれたのが有名です。
チームのパワー「襷(たすき)」
駅伝ではバトンの代わりに、襷を使います。駅伝は、誰か一人だけ速い選手がいても勝てません。逆に、誰かが不調でタイムを落としても、全員で取り返せる競技でもあります。そのため、襷をつなぐことに象徴されるチームの一体感は、相当大きなものになります。
2018年全日本実業団対抗女子駅伝の予選では、2区の走者が途中で走れなくなり、残り200mを四つんばいで移動したことがありました。そこまでして襷をつなごうという、必死の思いが伝わってくる出来事でした。
駅伝といえば「箱根駅伝」
1920年に参加大学わずか4校で始まった箱根駅伝は、2024年に100回目を迎えます。正式名称は「東京箱根間往復大学駅伝競走」といい、学生の大会の中では最長距離の大会です。
コース概略
コースは東京・大手町から箱根芦ノ湖まで、往路・復路合わせて10区間・217.1kmです。その中から見どころをいくつか紹介します。
「花の2区」は、全区間中最長の23.1kmです。中盤の権太坂をはじめ起伏の多いコースは、ランナーとしての全能力が必要とされます。前述の通り、ごぼう抜きが多く見られる区間でもあります。
往路最後の5区は、高低差800m以上とコースのほとんどが上り坂です。各校とも上り坂を得意とする選手をあて、中には「山の神」と異名を取るほどの選手も登場します。
復路の見どころは、繰り上げスタートとシード権争いです。8区以降になると「襷をつなぐ」(繰り上げスタートを回避する)ことと、来年のシード権を獲得することに焦点がしぼられてきます。
箱根駅伝ならではの見どころ
では、箱根駅伝の見どころである「繰り上げスタート」「シード権」について説明しましょう。
繰り上げスタートとは、トップから規定以上の差が開いてしまったチームが、襷を受け取ることなく次の走者がスタートするというルールです。箱根駅伝では往路で10分以上の遅れたチームは、復路ではトップから10分後に一斉にスタートしなくてはなりません。
復路一斉スタートの時点ではまだ襷はつながっていますが、復路の途中でトップと20分以上差が付いたチームは、その時点で次の中継所から選手がスタートを切ります。
この時点で襷が途切れることになり、あと数十mとお互い姿が見えているのに襷をつなげず涙を飲む学校があるなどのドラマが生まれることもあります。また、復路一斉スタートや繰り上げスタートのため、復路の順位は見た目とは異なることがあるので注意しましょう。
シード権とは、予選に出場することなく翌年の大会に出場する権利です。箱根駅伝では、上位10チームにシード権が与えられます。
箱根以外にも!有名な駅伝を紹介
箱根駅伝は有名ですが、あくまで関東の大学生の大会で、男子しか出場できません。しかし、駅伝には社会人の大会や女子の大会などもあります。その他の有名な駅伝の大会を見ていきましょう。
実業団日本一決定戦「ニューイヤー駅伝」
箱根駅伝にさきがけて、毎年1月1日に群馬で開催される大会です。正式名称は「全日本実業団対抗駅伝競走大会」といい、男子実業団の日本一が決まります。11月に6地域の連盟ごとに予選会が行われます。
コースは7区間・100kmで、群馬県庁をスタート後、高崎市・伊勢崎市・太田市・桐生市を回り、群馬県庁に戻ってきます。2024年大会から区間割が変更され、21.9kmと最長区間となった新2区は「日本人エース区間」として注目を浴びそうです。
女子駅伝日本一決定戦「クイーンズ駅伝」
正式名称は「全日本実業団対抗女子駅伝競走大会」といい、11月に宮城で行われる女子駅伝日本一を決める大会です。
6区間・42.195kmのコースで優勝を争います。松島町文化観光交流館をスタートして、塩竈市内を通り弘進ゴムアスリートパーク仙台(仙台市陸上競技場)がゴールです。
出場チームは、前年のベスト8のチーム(クイーンズ8)に、予選にあたる「プリンセス駅伝」16位までのチームが加わります。
中学生から社会人まで「全国都道府県対抗駅伝」
47都道府県のチームが出場する大会で、男女それぞれに行われます。男女でルールが異なり、女子の方が歴史が古いというのも面白い特徴です。
●全国女子駅伝(皇后盃 全国都道府県対抗女子駅伝競走大会):例年1月第2日曜日に京都市で開催
●全国男子駅伝(天皇盃 全国都道府県対抗男子駅伝競走大会):例年1月第3日曜日に広島県で開催
女子駅伝は9区間・42.195kmで、中学生・高校生・一般(大学生や社会人)が年代を越えて同じチームで出場するのがポイントです。中学生のみ出られる区間が決まっていますが、高校生と一般は指定されていないので、オーダーの組み方にチームの特徴が表れます。
男子駅伝は7区間・48kmで、中学生・高校生・一般が同じチームで出場するのは女子と同じですが、こちらは区間ごとに走者の区分が指定されているのが大きな違いです。
皇后盃 全国女子駅伝
天皇盃 第29回 全国男子駅伝 [ひろしま男子駅伝]
駅伝の基本知識があれば観戦の楽しさも倍増
駅伝は日本発祥の陸上競技で、チーム一丸となっての襷リレーが特徴です。繰り上げスタートやシード権などのルールを知っていると、テレビの実況・解説の理解度も深まります。
ごぼう抜きや襷リレーの醍醐味を味わうとともに、次の山の神は誰が来そうかといった情報を調べておくと、テレビ観戦中の会話が盛り上がり、一段と楽しめるでしょう。
こちらの記事もおすすめ
構成・文/HugKum編集部