算数は得意な子と苦手な子に二極化しやすい
2022年9月に行なわれた学研教育総合研究所の調査では、小学生が選ぶ「一番好きな教科」「一番嫌いな教科」の第1位は、ともに「算数」という結果が出ています。この結果は、2012年の調査から10年連続で変わっていません。
好き・嫌いともに第1位に選ばれたというのは、興味深い結果ですよね。つまり算数は、子どもによって好き・嫌いが極端に分かれる教科だということです。
二極化が起きる理由は「積み上げ方式」にある
好き嫌いはそのまま得意・不得意にも置き換えられる話ですが、どうしてこのような二極化が起きてしまうのでしょうか。その理由は「積み上げ方式で授業が進む」という算数の特徴があるからです。
他の教科と比較して、例えば社会の授業を考えてみると、「工業」のところで点数が悪かったとしても、単元が変わって「都道府県」の話になれば、多少の関連はあるものの、ここは得意で点数が高い、というような現象はよくあります。つまり、単元ごとにリセットされた状態で、次の単元に臨むことができるのです。
ところが算数は「前に習ったことを使って次の単元を理解する」という仕組みで授業が進むため、どこかでつまずくと、その先につながるいくつもの単元に影響が出てしまいます。苦手になると取り戻すのが大変な一方、得意ならスムーズに学習が進むため、差がつきやすい教科になるのです。
算数が得意になるとなぜいいのか?
「算数ができなくても困らない」は、本当にそう言えるでしょうか。
お子さん自身はまだ実感がないかもしれませんが、算数は「できたほうがメリットがたくさんある」のは事実です。算数が得意になるとどのようなメリットがあるのかをまとめてみました。
メリット① 算数は得意が加速する
算数の積み上げ方式は大変だというイメージで捉えがちですが、反対に言えるのは「一度得意になってしまえば、どんどん得意になる」という特徴もあります。算数が得意な子は、得意がどんどん加速するのです。
算数が得意な子は、ストックしてある知識を引っ張り出して、組み合わせるのが上手です。「あのとき習ったアレと、こっちの方法を組み合わせれば、この問題は解けそうだ」といった具合です。
ひとつ解ければ、またひとつ新しい知識がストックされます。使える知識の引き出しが、どんどん増えていくのです。これが、得意が加速していく仕組みです。
メリット② 勉強時間を減らせる
算数は、基本的に「理解しているか・理解できていないか」のどちらかになります。例えば、ひっ算の小数の掛け算では、小数点を移動させることがありますよね。なぜ小数点を移動させてもいいのか理解していれば、迷うことなくスラスラと計算できますが、理解できていない場合は、1問ずつどうすればいいか時間をかけて考えることになります。
暗記ものの科目と違い、算数は理屈の部分を理解してしまえば何度も覚え直す必要がありません。引っ掛け問題のある文章題は別ですが、シンプルな計算問題は、理解していれば見た瞬間に「解ける」と分かります。宿題の計算ドリルなどは効率良く終わらせて、遊びや興味のあることに時間を充てることもできますし、算数に時間をかけずに他の教科に回すこともできます。
メリット③ 他の教科も楽になる
算数を得意にしておけば、他教科の学習も有利になります。算数の知識を理科でも使うことは想像しやすいですが、実は文系科目においても役に立つことがあるのです。
なぜなら算数は「論理的に筋道を立てて考える力」を鍛えることができるからです。自分から問いを立てて解決策を考えたり、聴く人に分かりやすい説明をしたりする力は、国語や社会の教科でも役に立ちます。問題文の意図を読み取って簡潔に考えを述べるような、記述式の問題が得意になります。
算数ができると将来的にも有利
算数が得意なことのメリットは、学生の頃だけの話ではありません。長い目で見ても、将来的にもメリットが大きいのです。
例えば、理系と文系の職業で年収を比較してみると、少しデータが古いですが2011年の調査で文系出身者男性の年収は平均値が559.02万円、理系出身者は600.99万円となっており、理系出身者のほうが約40万円高いことが分かります。理系職は文系職より専門性の高い仕事が多いことも、年収差の理由の1つとなっています。
お伝えしたいのは、だから理系に進んだほうがいいという話ではなく「選択の幅は広く持てるほうがいい」ということです。算数の一部に苦手な分野があるだけで、算数を丸ごと、さらに理系分野全般に苦手意識を持ってしまい、将来の目標ができた時に選択肢から外れてしまうのは、とてももったいないことだと感じます。
「理系×女性」は政府も力を入れている注目のキーワード
そして今後の流れについて、国を挙げて理系の人材を増やそうという取り組みがあることをご存じでしょうか。
政府の教育未来創造会議では、自然科学(理系)を専攻する学生を世界トップレベルである5割程度まで増やすことを目指すと提言されました。
特に女子学生は、高校1年生時点で4割の女子生徒が国際的にも比較的高い理数リテラシーを持っているにも関わらず、大学で理工系を専攻する女性は7%にとどまるなど、理系に進む女性が少ない点が問題視されています。
その対策のための施策例として、大学入学者選抜等で女子学生枠の確保に積極的に取り組む大学等への支援を強化したり、理工系や農学系の分野に進学する女子学生への官民共同の修学支援プログラムを創設したりする案が挙げられています。このような政府の動きは、理系を目指したい女の子にとって追い風となるでしょう。
理系分野でも化粧品やシャンプー、洗剤、食品開発など、女性ならではの感性を活かせる場所はいくつもあります。理系の研究職は代わりを探すのが大変なことから、出産後に元の職場に復職しやすいという話も聞きます。このような点も、算数が得意なことのメリットの延長線上にあると言えるでしょう。
仕事をするうえで算数のスキルは役に立つ!
今回は、算数が苦手でも困らないという子どもの意見に対して「算数が得意だとなぜいいのか」について解説しました。
理系職に限らず、仕事や生活全般に算数のスキルは役に立ちます。物事を順序立てて効率よく仕事ができれば、社内で任せて貰えることが増えるかもしれません。効率よく仕事を終わらせて早く家に帰れたら、楽しい趣味に時間を充てられるでしょうし、計算に強ければお金も無理なく節約をし、浮いたお金で少し贅沢ができたりもするでしょう。
数学も一部は同様ですが、算数は特に身の周りにあり、生活にも欠かせないものです。算数が得意であることの意味はとても大きいですから、小学校の算数はしっかりと理解して自分のものにして欲しいですね。
算数のつまずきは、原因となっている苦手な単元を見極めて、学年を超えて戻り基本をしっかり理解し直せば、十分取り返すことができます。苦手なままでも困らないかもしれませんが、得意であることにデメリットはひとつもありません。ぜひ、算数という教科の楽しさを多くの子ども達に気付いてもらいたいです。
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構成/HugKum編集部
参考:
・学研教育総合研究所「小学生の日常生活・学習に関する調査」2022年9月
・内閣官房 教育未来創造会議担当室|教育未来創造会議 第一次提言のポイント 2022年5月