鹿児島の郷土料理「さつま汁」とは? 豚汁との違い、由来やレシピ、他地域バージョンなどを紹介

鹿児島の郷土料理「さつま汁」を知っていますか? 鶏肉や野菜がたくさん入った味噌汁です。美味しくて栄養満点な「さつま汁」を自宅で作ってみたくなりますよね。そこで本記事では、「さつま汁」とはどんな料理なのか、気になる由来や豚汁との違い、作り方などを紹介していきます。

「さつま汁」とは?

「鹿児島名物さつま汁」と聞けば、「さつま揚げ」や「さつまいも」を使った料理をイメージする方もいるかもしれませんね。しかし、実は鶏肉と野菜が入っている具沢山の味噌汁のことを言うんです。

鶏肉と野菜を炒め、出汁で煮込み、そこに味噌を溶いたもの。鹿児島の郷土料理です。家庭ではもちろん、学校の給食、地域で行われるイベントなどで振る舞われることもあり、老若男女、いろんな世代から親しまれています。

「さつま汁」の由来は?

鹿児島では古くから鶏肉を煮込んだものを食べる風習があったようです。

まだ鹿児島が「薩摩」と呼ばれていた江戸時代、武士たちの士気を高めるため、薩摩では闘鶏(とうけい)が盛んに行なわれていたという記録が残っています。男たちが、闘鶏で負けた鶏をその場でしめて、野菜などと一緒に煮込んで食べていたことが「さつま汁」のはじまりだと言われています。

その後、闘鶏は禁止されますが、それぞれ家庭では鶏が飼われていて、祝いの席など来客の際は、庭先で鶏をしめて調理し、客人に振る舞っていたそうです。

「さつま汁」と「豚汁」との違いは?

「さつま汁」と豚汁の大きな違いは肉です。「さつま汁」には鶏肉が使われています。一方で「豚汁」に使われているのは「豚肉」。材料が異なるものの、作り方はほとんど一緒です。

日本3大地鶏「薩摩鶏」

鹿児島県の「薩摩鶏」、秋田の「比内地鶏ひうち」、愛知の「名古屋コーチン」は、日本3大地鶏といわれています。

「薩摩鶏」は、江戸時代、闘鶏のために飼育されていた日本固有の鶏で、気性が荒く、足や尾羽は美しく長いのが特徴。鋭い眼光を持ち、闘鶏にもってこいの鶏です。「薩摩鶏」は鹿児島で古くから飼育されていますが、現在では天然記念物に指定されていて、観賞用としてのみ飼育されています。

このように鹿児島において鶏は、食料として昔から根付いていきます。そのため「さつま汁」以外にも、「鶏刺し」や「鶏飯」など、さまざまな鶏料理が鹿児島で楽しむことができるのです。

「薩摩鶏」を原種として生まれた「かごしま地鶏」

歴史のある「薩摩鶏」を原種として生まれたのが、「さつま若しゃも」「さつま地鶏」「黒さつま鶏」。甘みがあって弾力のある肉、色合いも非常に良く人気の地鶏です。現在では、鹿児島を代表とする「かごしま地鶏」としてブランド化されています。

愛媛・香川の「さつま汁」とは?

愛媛や香川にも「さつま汁」と呼ばれる郷土料理があります。主に焼いた白身の魚をほぐしたものを麦味噌と一緒にすりつぶし、出汁でのばしたものを熱々のご飯にかけて食べる料理です。愛媛では「伊予さつま」、香川では「讃岐さつま」とも呼ばれています。

具沢山味噌汁の鹿児島の「さつま汁」に対して、愛媛や香川の「さつま汁」は冷や汁のようなもの。喉越しが良いため、食欲がなくなる夏などに、さらさらと食べることができるでしょう。

愛媛・香川タイプの「さつま汁」の一例

愛媛や香川の「さつま汁」も鹿児島に由来する?

愛媛や香川なのになぜ「さつま汁」と言うのか? その由来については諸説あります。鹿児島から海を越えて愛媛や香川などに伝わったという説や、夫が妻を助けて作るという意味「佐妻(妻を補佐する)」から由来するなどの説があり、はっきりとした由来はわかっていません。

愛媛や香川の「さつま汁」は、手間がかかる料理であるため、最近では家庭で作られることは少ないそう。郷土料理を提供する店で食べることができます。

鹿児島の郷土料理「さつま汁」を作ってみよう

「さつま汁」の作り方は難しくありません。家庭でもチャレンジしやすいのではないでしょうか。

先に具材を炒めると旨みを閉じ込めることができます。しかし鹿児島では、炒めずに煮込む方法も。本記事では、具材を炒めてから煮込む方法を紹介していきます。

また材料は一般的に鶏もも肉、大根やにんじんなどの根菜、椎茸、こんにゃく、さつまいもや里芋などが入りますが、アレンジ可能です。では一緒に鹿児島の郷土料理「さつま汁」を作っていきましょう。

材料(4人分)

・鶏もも肉… 100g
・大根… 5cm
・にんじん… 1/2本
・さつまいも… 小1/2本
・ごぼう… 1/2本
・椎茸… 2枚
・こんにゃく… 1/2枚
・油… 適量
・出汁… 800cc
・味噌… 大さじ2~3
・ねぎ… 適量

作り方

1、材料を切る

・鶏もも肉は2cm角に切ります。

・大根、にんじんは皮をむき、1cm幅のいちょう切りにする。

・さつまいもは、5mm幅のいちょう切りにして水にさらしておきます。

・ごぼうはささがきにして水にさらし、椎茸は食べやす大きさにカット。

・こんにゃくは短冊切りにします。

2、具材を炒める

・鍋に油をひき、鶏もも肉を炒めます。

・次に大根、にんじん、さつまいも、ごぼう、椎茸、こんにゃくを入れ、炒めます。

3、出汁を入れ煮込む

2の鍋に出汁を入れて灰汁をとりながら、中火で具材を煮込んでいきます。

4、味噌を溶く

鶏もも肉と野菜類に火が通ったら、味噌を入れ溶き、ひと煮立ちしたら火から下ろし、器に盛り付けます。お好みでネギを散らして完成です。

アレンジするなら?

素早く食事をとりたいとき、「さつま汁」に、うどんを入れるのもおすすめです。茹でたうどんを食べやすい長さにカットして入れ、少し煮込むとボリューム満点の1品になります。

鹿児島の郷土料理「さつま汁」は栄養満点、具沢山味噌汁

鹿児島には鶏を使った料理がたくさんあります。その中のひとつ「さつま汁」は、親から子へと伝承されていく料理なのだそう。子どもから大人まで、さまざまな世代に愛され続けている「さつま汁」は、鶏肉が入っているため美味しい出汁がでて、コクのある味わいになります。

また大根やにんじん、さつまいもなどの具がたくさん入っていて、栄養バランスの面だけでなく、お腹も満たしてくれる味噌汁です。使い切りたい野菜や、お好みの野菜などにアレンジしても良いかもしれません。ぜひお試しください!

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構成・文・写真(一部を除く)/松田慶子(京都メディアライン)

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