「太陽フレア」はなぜ起こる? 2024〜2025年は要注意。地球への影響や備え方をチェック

太陽フレアが活発になると電磁波などが発生し、地球に被害をもたらす可能性があります。どのような現象なのか知らない人や、被害との関係性をイメージしにくい人もいるでしょう。太陽フレアの意味や地球への影響、備え方などを紹介します。

太陽フレアとは

太陽フレアは太陽の活動の一種で、地球にも影響を与えることがあります。太陽活動とは、太陽で起きるさまざまな変化の総称です。太陽フレアとはどのような現象なのか、どのくらいの頻度で起きているのかなどを見ていきましょう。

太陽の表面で起こる大爆発

太陽フレアとは、太陽の黒点の周囲で起こる爆発のことです。爆発の際に電磁波やX線、電気を帯びたガスなどを放出します。

太陽フレアから地球に飛来するエックス線や微粒子放射によって、地球を覆う電離圏が乱れ通信障害が起こる。これを「デリンジャー現象」という
太陽フレアから地球に飛来するエックス線や微粒子放射によって、地球を覆う電離圏が乱れ通信障害が起こる。これを「デリンジャー現象」という

 

太陽フレアが発生するメカニズムはよく分かっていませんが、黒点の磁場が変化する際のエネルギーと、周辺のガスが反応して起こるとされます。

黒点は太陽の表面に現れる黒い斑点を指し、他の部分に比べて温度が低くなっています。黒点の温度は中央が約4,000度、中央部の周囲は約5,500度です。一方、黒点以外の場所の温度は約6,000度もあります。

NASAによる黒点1302の特殊画像。英国デイリー・メール紙によると、黒点1302は巨大な太陽フレアを解き放つ「巨大な存在」であるされている NASA, Wikimedia Commons(PD)

小規模な爆発は日常的に起きている

太陽フレアは近年になって急に観測されるようになったわけではありません。地球に影響を及ぼさない小さな太陽フレアは、日常的に起きている現象です。太陽フレアの規模は、X線の強さによって5段階にランク付けされています。

A・B・C・M・Xの順番でクラスが上がっていき、一つクラスが上がるたびに規模が10倍になります。最も大きなXクラスの太陽フレアが起こると、地球に被害を与える可能性があることを知っておきましょう。

通常、規模が大きなものは発生頻度が少なく、Xクラスが起こる頻度は年に3回程度です。地球に影響がないAクラスやBクラスの太陽フレアは、年に3,000回以上も起きています。

2024年は大きな太陽フレアが頻発

太陽フレアが起きる頻度は、黒点の活動に影響を受けます。11年周期で黒点の数が増減することが分かっており、黒点周期や太陽の活動周期とも呼ばれます。

2024〜2025年は太陽の活動周期に入っており、太陽フレアが頻発する見込みです。2024年5月8日からは、特に大きなものが頻発しています。

2024年5月15日に発生した太陽フレアの規模はX8.7であり、これまでに観測された中でも最大規模を記録しました。しばらくの間は、太陽活動を注視する必要があります。

2024年5月14日(日本時間15日)にNASAがとらえた太陽フレアの画像。右側の明るいフラッシュ部分が該当箇所 NASA’s Scientific Visualization Studio, Wikimedia Commons(PD)

太陽フレアが地球に与える影響

大規模な爆発が起こると、地球にも電磁波やX線などが届きます。太陽フレアによって引き起こされる障害について見ていきましょう。

GPSのずれや通信障害

地球の上空60〜1,000km付近に「電離圏」と呼ばれる大気の層があり、電気を帯びた粒子が地球を取り巻いています。太陽フレアによって放出された大量の電磁波が電離圏に影響を及ぼすと、GPSのずれや通信障害が起こる可能性があります。

電離圏のほか、地球のまわりはさまざまな層がとりまいている
電離圏のほか、地球のまわりはさまざまな層がとりまいている

GPSは、人工衛星から送られてくる電波が、地上に届くまでの時間によって位置を測る仕組みです。大量の電磁波の影響で正しい位置を測れなくなれば、カーナビや位置情報を利用したサービスなどが正常に利用できなくなるでしょう。

また、長距離の無線通信技術は、電離圏が地上からの電波を跳ね返す性質を利用しています。電磁波の影響によって電波を跳ね返す力が弱くなると、通信障害が起こる場合もあります。

 

電波の電離圏反射のモデル図。電離圏は電子密度の違いによって、下から順にD・E・F1・F2の4層に分けられ、電波はその周波数によって各層で反射される。太陽フレアが起きると、電離層の電子密度が通常より高くなり、電波は電離層から反射されずに吸収され、短波を用いた長距離通信に障害をもたらす。Muttley – Self-published work by Muttley, Wikimedia Commons

大規模停電が起こるケースも

1989年にXクラスの太陽フレアによって磁気嵐が起こり、カナダ南部で大規模な停電が起きました。磁気嵐とは、地球の磁場が大きく乱れ変動する現象です。

磁気嵐によるさまざまな影響で変電所の設備が停止し、9時間もの間送電ができなくなりました。磁気嵐が起こると地表の磁場が変化して、電力系統に異常な電流が流れることがあるのです。

ただし日本は、カナダとは電気設備や地理的な条件が異なるので、カナダの事例と同様のことが起きたとしても電気設備への影響は出にくいとされています。

北海道でオーロラが活発になる

大規模な太陽フレアが起こると、普段はアラスカやシベリアで観測されるオーロラが北海道でも見られることがあります。オーロラは太陽から発する高エネルギーの太陽風が、大気と交わることで発生します。

太陽風とは、太陽から吹き出す電気を帯びた高温の粒子の流れです。太陽の活動が盛んな時期以外にもオーロラは発生していますが、活動周期に入ると太陽風が強力になります。

太陽フレアが頻発する時期は、通常よりもオーロラの発生頻度が上がって大規模に見られるようになるため、日本の北海道でもオーロラが活発になるのです。

日本などの低緯度では赤く染まったオーロラとして観測されることが多い

太陽フレアに備えるには

大規模な太陽フレアが起こると、無線通信や電力への影響などで物流の麻痺が起きる可能性があります。万一の場合は、どうしたらよいのか不安に思う人は多いかもしれません。一般家庭でできる備え方を紹介します。

宇宙天気予報に注目する

太陽フレアが地球に与える影響が心配な人は、政府からの情報発信や宇宙天気予報に注目し、障害に備えましょう。太陽活動が活発な時期だけでも、チェックするようにすると安心です。

地球周辺の宇宙環境は予測され、放送インフラや人工衛星を利用したサービスの分野などで活用されています。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)では、太陽フレアなどの宇宙天気現象の予報をしています。1日1回太陽フレアの発生を、レベル1~4で予測しているので活用しましょう。

出典:ホーム | 宇宙天気予報

災害用の備蓄をしておく

いざというときのために、普段から災害用の備えをしておくと安心です。災害用の備蓄は、水・食料・カセットコンロ・ラジオ・懐中電灯・予備のバッテリーなどが基本となります。

家庭では、ローリングストックという備蓄方法がおすすめです。ローリングストックとはよく使用する生活必需品や食品、飲料などを多めに備蓄し、使った分を買い足すようにする方法です。

赤ちゃんがいる場合は、紙おむつやミルク、離乳食なども余分にストックしておきましょう。太陽フレアが頻発しているときだけでなく、地震や大雨による被害などへの備えにもなります。

情報をチェックして太陽フレアに備えよう

太陽の活動が活発になる11年周期で、大規模な太陽フレアが起こります。最大クラスの太陽フレアが発生すると地球にも影響があり、通信障害やGPSの不具合などが起こることが懸念されているのです。

宇宙天気予報をチェックしてみると、その日の太陽フレアのレベルが分かります。念のため、災害への備えを普段から怠らないようにすることが大切です。

2024〜2025年は大規模な太陽フレアが起こりやすいとされているので、しばらくの間は太陽の活動に注目してみましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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