入場料の区分にある「大人」「中人」「小人」はなんと読むのか知ってる?【知って得する日本語ウンチク塾】

国語辞典編集者歴37年。日本語のエキスパートが教える知ってるようで知らなかった言葉のウンチクをお伝えします。

「大人」は「おとな」ではありません!

テーマパークなどの入園料の設定では、「大人」「中人」「小人」の3つに分れていることがあります。たとえば、あるテーマパークのホームページには、

大人:18才以上 / 中人(中学・高校生):1217才 / 小人(幼児・小学生):411

と書かれています。

この「大人」「中人」「小人」ですが、みなさんはなんと読んでいますか?

ひょっとして、「おとな」「だいじん」、「ちゅうじん」、「こども」「しょうじん」などと読んでいたのではないですか?

でも正解はそうではありません。

「だいにん」「ちゅうにん」「しょうにん」と読むのが正解

この場合は、「だいにん」「ちゅうにん」「しょうにん」と読みます。

「人」は「じん」ではなく、「にん」なんです。入場料の料金区分などのときにはこのように読むのが慣用になっています。ただそれぞれの語の年齢区分は、冒頭のテーマパークのものはここ独自のもので、施設によって違います。

「大人」はふつうは「おとな」の意味ですが、「中人」は、小中学生の場合もありますし、中高生の場合もあります。「小人」はふつうは小学生以下の子ども(つまり小学生も含まれる)をいいます。決まりがあるわけではないので、やはり冒頭のテーマパークのような区分の説明が必要になるわけです。

「大人」「中人」「小人」をなぜ「だいにん」「ちゅうにん」「しょうにん」と読むのか、はっきりとした理由はわかりませんが、「大人」は「おとな」という読みの他に「たいじん」「うし」などという読みがありますし、「中人」は「ちゅうじん」、「小人」は「しょうじん」などという読みがあります。それぞれ意味が違いますから、それと区別するためなのかもしれません。

明治時代からこう読まれていた

年齢を区分する「だいにん」「ちゅうにん」「しょうにん」という読み方は、明治時代後期には確実に使われていました。『日本国語大辞典』(小学館)で引用されている、劇作家で演劇研究家だった若月紫蘭(わかつきしらん)が書いた『東京年中行事』(1911年)には、

「入場料は大人(だいにん)二十銭小人(せうにん)十銭で有った」(十月暦)

と、「だいにん」「せうにん(しょうにん)」というルビが振られています。この例が最も古いわけではないでしょうが、「だいにん」「しょうにん」の読み方は1911年つまり明治44年には確実に使われていたことがわかります。

この文章の入場料とは、かつて両国の国技館(東京本所両国の回向院境内にあった)で催された菊人形のものです。この「小人」は何歳までをいったのかわかりませんが、昔も今も、「小人」料金は「大人」料金の半分くらいが相場だったようです。

「だいにん」「ちゅうにん」「しょうにん」と口に出して言うことはめったにないと思いますが、読み方をおぼえておいても損はないと思います。

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記事監修

神永 暁|辞書編集者、エッセイスト

辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。

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