食べこぼし・不明瞭な発音などは、遊びながらトレーニング! 放課後デイを選ぶポイントも解説【「こども発達LABO.」にしむら夫妻に聞く就学準備・後編】

YouTubeでユーモアのあるかぶりものをして発信されている「こども発達LABO.」の西村ご夫妻。専門家としての豊富な知識をさまざまなアプローチで、子ども・保護者・支援者を幅広くサポートしています。
今回は、就学を前に家庭でできるフォローの後編です。食べこぼし、発音の不明瞭など具体的な困り感にはどうすれば?

前編では就学前にやっておくといいこと、心構えを伺いました

授業中座っていられる? 話を聞ける? 発達特性のある子の、後悔しない就学準備【「こども発達LABO.」にしむら夫妻に聞く!前編】
焦らなくても大丈夫です!まずは慣れること 就学前は、特にお子さんに関して何かと心配になることが増えるものです。自治体の相談会などもあります...

後編では引き続き、保護者から寄せられたお悩みに回答していただきます。

食べ方も遊びを使ってトレーニング

Q:食べこぼしが多く、給食の時間が心配です

A:「指先」「手首の返し」を使う遊びでトレーニングを

小学校になると、給食で使うスプーンやフォークは、柄の部分が細いものが多くなります。そうすると、操作が難しいと感じるお子さんも出てきます。自分専用のカトラリーを持参してもよいと言う学校でしたら、使いやすいマイスプーンやマイフォークを準備してあげましょう。柄の部分にスポンジを巻きつけて太くすると使いやすくなります。

また、指先の微調整ができずに食べこぼしてしまうケースも少なくありません。その場合には、指先を使ったり手首の返しを使う遊びが指先の器用さを高めるトレーニングになります。例えば、粘土をちぎる、塗り絵、パズル、けん玉、トランプやオセロをひっくり返すような動きを取り入れていきましょう。

指先を使う、手首を返す動きを遊びの中で取り入れて

動画を撮って見せるなど、客観的に自分が食べている姿を見てみることも有効な場合もあります。

他にも、食べるものをしっかり見ていないのでこぼしてしまうケースも。その場合には、「きんぎょがにげた」や「ウォーリーをさがせ」、まちがい探しなどの絵本、塗り絵、だるまさんがころんだ、などの“見る”ことを鍛える遊びがトレーニングになりますので、ぜひ生活の中に取り入れてみてください。

発音は“聞く”ことが大事。徐々に気づく場合もあるので焦らない

Q:「さ」行や「か」行の発音が上手くできません。直せますか?

A:自然に直るケースもあるので焦らずに

特定の音が発音できない場合は、発語のトレーニングが必要なこともありますが、就学後に徐々に直っていく可能性もあります。発音を正す場合には、“聞く”力も必要です。

例えば「おさかな(お魚)」が「おちゃかな」になってしまう場合には、「さ」が「ちゃ」になっているということに気づかなければなりません。そこに気づくためには、同じ発音をして聞かせてみて、「どこが違うかな?」とお子さんに聞いてみてください。徐々に違いに気づくようになってきます。

また、絵本を一緒に読んでみて、苦手なところを上手に言えるようにしていく方法もあります。音読はできるのに、話し言葉になるとできない子もいますが、ひらがなを覚え、文字理解ができてくると発音も覚えていくので、就学前までに…と焦らなくても大丈夫です。

絵本を活用して「聞く力」を伸ばしていこう

放課後デイは子どもの課題を一緒にフォローしてくれるところを

Q:放課後デイサービスを利用したいと考えています。選び方を教えてください

A:チェックポイントは理念がきちんと書いてあるか。あとは子どもの課題にマッチしたところを

基本的には放課後等デイサービスも幼児期に通う児童発達支援事業所と同じです。公式ホームページに理念が明確に書いてあるかどうかをまずチェックしてください。そして書いてあるところを中心に、今お子さんにある課題を一緒にフォローしてくれるところを選んでいきましょう。

放課後デイには、学習に力を入れているところ、運動が中心のところ、ソーシャルスキルに力を入れているところなど、様々な特徴があります。お子さんの課題とマッチするところを見極めて。

デイによって特徴はさまざま。わが子に合うところを

また、放課後デイでも、お子さんに対する「評価」と「フィードバック」がきちんとあるかも確認してください。「こういうところが現時点でできていて、こういうところができていない。だからこうしていきましょう」のように。

また、見学に行った時点で、スタッフが子どもの特徴をある程度予測できるかどうかも専門家としてのスキルがあるかの目安になります。さらに、プログラムを個人に合わせて組んでくれるのかなども、チェックしてみるといいですよ。

料金や送迎の有無、利用日数などももちろん大事ですが、お子さんがのびのびと過ごせるところをぜひ選んであげてください。

その子に合う遊びを設定して、少しずつ成長していけるようサポートを

ここまで色々なテクニックをご紹介してきました。プロの保育者が行っている「遊び」は、実は身体や言葉の発達を促しています。その遊びを、おうちでもうまく取り入れていくとよいと思います。特性のあるお子さんは、これらの目的を持った遊びをどう設定してあげるかが大事なポイントになります。

決して、就学がゴールではありません。就学後、お子さんには6年間という長い学校生活が待っています。入学までにあれもこれもできるようにならないと…と決して焦らず、お子さんに合ったペースで、少しずつ学校生活に慣れていけるようにサポートしていきましょう。

こちらの記事でも放課後デイや療育についてお話を伺っています

「こども発達LABO.」にしむら夫妻に聞く、療育や放課後デイの選定ポイント。担任の先生に我が子を理解してもらう方法は?
先生とのコミュニケーション、放課後デイの選定のポイントを解説! Q:新しい担任の先生に我が子を理解していただき、ご協力していただくため...

お話を伺ったのは

むぎちょこ(西村千織)/言語聴覚士

ことばの発達と発達障害が専門の言語聴覚士。病院勤務の後、公的療育機関に17年勤務し、ことばの遅れがある幼児や発達障害のあるお子さんに対して、のべ数万回の言語聴覚療法を実践。2020年より理学療法士西村猛の運営する株式会社ILLUMINATE取締役兼発達障害のあるお子さんのための支援事業所「発達支援ゆず」所属。子どものことばの発達にお悩みを持つ保護者の方向けのオンライン相談事業も実践。

YouTubeチャンネル「こども発達LABO.」では、理学療法士の西村猛と2人で、ことばとからだの発達や発達障害に関する情報を発信中。著書に「「ことばが遅い子・心配な子」から「ことば」を引き出す親子あそび」(PHP研究所)がある。

HP「こども発達LABO.」はこちら

YouTube「こども発達LABO.」はこちら

お話を伺ったのは

にしむらたけし(西村猛)/理学療法士

子どもの運動発達と発達障害が専門の理学療法士。株式会社ILLUMINATE代表取締役。公的療育機関等に20数年勤務した後、2017年に独立起業。現在は、会社代表として「発達支援ゆず」の3事業所を運営するかたわら、全国の保育園・幼稚園・こども園などで、子どもの運動発達や発達障害に関する研修会講師として活動中。

運動発達の専門家として、NHKあさイチ、テレビ朝日グッドモーニングを始めメディア出演等多数。著書に「寝る前10秒 子どもの姿勢 ピンポーズ!」(主婦の友社)がある。

文・構成/鬼石有紀

編集部おすすめ

関連記事