増えてます!子どものスチーム式加湿器のやけど。吹き出し口で90℃、倒して熱湯がこぼれ出ることも!【専門医監修】

東京消防庁管内で、2018年~2022年の5年間で、やけどで救急搬送された子ども(0~5歳)は1958人にのぼりました。とくに多いのは0~1歳で、全体の68%を占めています。寒くなって空気が乾燥してくると加湿器を使う家庭も多いと思いますが、なかにはスチーム式加湿器でやけどをする子も。消費者庁や国民生活センターも注意喚起しています。
あいち小児保健医療総合センター救急科医長・池山由紀先生に、スチーム式加湿器を使うときの注意点と、やけどしたときの対応について教えてもらいました。

1歳児がスチーム式加湿器の吹き出し口に手をついてやけど

寒くなって空気が乾燥してくると、スチーム式加湿器でやけどをしたといって受診する子どもが毎年のようにいます。

以前、救急外来を受診した子どもは、1歳でスチーム式加湿器の吹き出し口に手をついてしまい、手のひらをやけどしていました。1週間ほど通院が必要でした。

スチーム式加湿器でやけどをした子どものママ・パパに話を聞くと「ちょっと目を離したすきに加湿器を触ってしまった」「まさか加湿器を倒すとは思わなかった」という声が聞かれます。

スチーム式加湿器を倒したら約80℃の熱湯がこぼれ出た報告も

スチーム式加湿器は、水を加熱して蒸気を出して加湿します。

スチーム式加湿器のやけどの原因は主に2つあり、1つは本体を倒すことです。nite(独立行政法人製品評価技術基盤機構)が行った試験では、スチーム式加湿器を倒したところ約80℃の熱湯がこぼれ出たという報告も。湯の温度は機種によって異なりますが、注意が必要です。

例:台にのせていた加湿器が倒れて3歳児がやけどで入院

高さ1mの台に加湿器をのせていた。目を離したすきに、加湿器が倒れて3歳の子どもに熱湯がかかった。子どもが立ち上がる際に、コードが引っ掛かったと思われる。腹部から背中にかけてやけどを負い、入院が必要となった。(消費者庁 Vol.572暖房器具やスチーム式加湿器でのやけどに注意!より)

吹き出し口の蒸気が90℃を超える機種もあるスチーム式加湿器

やけどの原因のもう1つは、スチーム式加湿器の吹き出し口によるやけどです。niteがスチーム式加湿器の蒸気吹き出し口の温度を計測したところ90℃を超えるものもありました。

吹き出し口の温度を約50℃など低温に抑えた機種もありますが、乳幼児の皮膚は大人よりも薄くてデリケートなので低温やけどをする危険性があります。

例:8ヵ月の子が加湿器の蒸気吹き出し口に手を当てやけど

8ヵ月の子が、加湿器の蒸気吹き出し口に手を当てて立ち上がろうとして、人差し指から薬指にかけてやけどを負った。中指には水ぶくれができた。(消費者庁 Vol.572 暖房器具やスチーム式加湿器でのやけどに注意!より)

子どもが触らない安全対策が必須

踏み台にも要注意!

スチーム式加湿器を使うときは、子どもが触らないようにすることが第一です。柵で囲うなど安全対策をとりましょう。子どもの手の届かない場所に置いても、コードやテーブルクロスなどを引っ張って落とす危険がないか、そばに踏み台になるようなものがないか確認してください。

やけどをしたら、流水でしっかり冷やす!衣服の上からのやけどなら脱がさない

万一子どもがやけどをしたときは、すぐに次の対応をしましょう。

1)5~20分、流水でしっかり冷やす

衣服の上からやけどをした場合は、無理に脱がさなくて構いません。乳幼児は、冷やし過ぎると低体温症になりやすいので、子どもの様子をよく見ながら冷やしてください。顔色が悪い、元気がない、ぐったりし始めたときは、冷やすのをやめてすぐに受診しましょう。

2)流水で冷やしながら、至急受診が必要か判断する

次にあげるやけどの程度を参考に、「診察時間外でもすぐ受診」「救急車を呼ぶ」など判断しましょう。

知っておきたい受診の目安。救急車を呼んだほうがいい場合とは?

軽いやけどだと、家庭でケアする場合もあると思います。しかし自己判断で、ガーゼなどで患部を覆うと皮膚がむけてしまうことも。軽症でも、皮膚科で処方された薬(ステロイド外用薬)を塗ったほうが、痛みが早く和らぎます。

「診察時間外でもすぐ受診する」の目安

□やけどの範囲が、子どもの手のひらより広い
□水ぶくれがある
□皮膚がジュクジュクしている
□顔、関節、性器をやけどしている

「救急車を呼ぶ」の目安

やけどの範囲が、大人の手のひらより広い
□やけどした部分が黒い・白い
□口のまわりをやけどしている
□いつもと呼吸が違う・呼吸が苦しそう

「診察時間内に受診する」の目安

やけどの範囲が、子どもの手のひらより狭くて、赤くなっているだけ

後悔しないためにも、スチーム式加湿器の使い方を見直して

子どものやけどは、安全対策をしっかりすればほとんどが予防できます。重症のやけどでなくても処置には痛みを伴いますし、やけどの痕を見るたびに子ども自身も、ママ・パパも胸を痛めます。そのためスチーム式加湿器の使い方をあらためて見直してください。

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記事監修

池山由紀先生 | あいち小児保健医療総合センター救急科医長
東京都立小児総合医療センター 救命救急科などを経て現職。日本小児科学会専門医、日本救急医学会 救急科専門医、PALSインストラクター。日本小児科学会小児救急・集中治療委員会メンバー。

取材・構成/麻生珠恵

 

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