子どものサプリメント摂取に注意! 栄養補給のつもりが依存体質や過剰摂取になるリスクが。役立つケースや安全な使い方とは?【専門家監修】

最近よく目にする子どものサプリメント。「うちの子にも何か摂らせたほうがいいのかな…?」と思ったことはありませんか。サプリメントアドバイザーや上級幼少年体育指導士の資格を持ち、栄養指導者や運動指導者としても活動する仙台大学教授の早川公康先生に、子どものサプリメント摂取について話を聞きました。

 子どものサプリメント摂取にはリスクもある

そもそも子どもにサプリメントは必要なのでしょうか?  そんな疑問をぶつけてみると、早川先生は次のように答えてくれました。

「私の基本的な考え方として、普通に健康に生活したいだけならサプリメントは不要だと考えています。普段の指導においても、どの年代にもサプリメントに頼らないことを推奨しています」

サプリメントは知らず知らずのうちに特定の成分を過剰摂取してしまったり、場合によっては依存体質になってしまったりすることも。

また、小さな子どもがカプセルや液体のサプリメントに頼りすぎると、あごの健全な発達を阻害するリスクがあるほか、大量のサプリメント摂取は健全な味覚の発達に影響を及ぼす可能性も否定できないといいます。

サプリメントと普通の食品から摂る栄養の違いは?

栄養摂取という視点でみたとき、普通の食材・食品とサプリメントはどちらが優れているのでしょうか。

「一概にはいえません。牛乳を飲むとお腹をくだす人がいるように、サプリメントとの相性も個人差があります。同じサプリメントを摂取しても、その成分を吸収しやすい人もそうでない人もいます」

サプリメントとの相性は人それぞれ。栄養は食事から摂取するのが基本。
サプリメントとの相性は人それぞれ。栄養は食事から摂取するのが基本

ただ、普通の食事にはそれ以外のメリットもあるといいます。

「よく噛むことで消化酵素液の分泌が促され、胃腸への負担をやわらげる効果も期待できます。そもそもサプリメントは、食べる楽しさは乏しいですよね。やはり美味しい料理をしっかり味わい、胃腸が機能して、体のすみずみまで栄養が届いていくほうが細胞も喜ぶだろうと思います」

サプリメントを摂るか摂らないかの判断は?

サプリメント市場は年々拡大しており、「子ども サプリメント」などで検索すると非常に多くの製品がヒットします。「そうした広告に踊らされて安易に利用しないことが大切」だと早川先生は注意を促します。

「サプリメントを摂るべきか?と相談されても即答はしません。まずは3食でどんな栄養を摂っているかを確認します。朝食抜き、なんて人も意外にいるんですよね。まずは食育から始める必要があると感じることも多いです」

運動と食事で不調は改善されるものだそう
運動と食事で不調はある程度改善されるものだそう

「それから食事と同じくらい大事なのが運動。本来、適切な運動と健全な食生活をしていれば、体の不調はある程度改善されるもの。むしろ食生活が乱れて消化機能も弱っているところに、人工的な化学物質を含むサプリメントを入れると、胃腸の負担になってしまいかねません」

とはいえ、「スポーツをするから」「貧血気味だから」など、さまざまな理由でサプリメントを検討したいときもあるでしょう。いくつかのケースについて聞きました。

好き嫌いをサプリメントで補うのは?

「牛乳嫌いだからカルシウムのサプリメント」など、偏食を補うためにサプリメントに頼るのもおすすめできないとのこと。

「子どもは大人に比べて好き嫌いが多いですが、大人になると自然に食べられるようになるものもあります。消化酵素の出方には個人差もあり、食べたくないものを無理やり食べさせるのは、しつけ云々より、体への負担が心配です」

牛乳が苦手なら、ヨーグルトなど別の乳製品にしたり、小魚など別の食品を摂ったり、ほかの方法もあります。

体の不調をサプリメントで解決するのは?

「貧血気味だから鉄のサプリメント」など不調改善のためにサプリメントを検討することについては、「サプリメントに頼る前に、まずは不調の原因を見極めるよう、栄養や生活習慣を見直してみてください。それでもなお不調が続くのであれば、病院で受診を。そのプロセスを踏んでから摂取するのであれば、サプリメントも役に立つと思います」とのこと。

保険的にサプリメントを摂るのは?

「栄養摂取の“保険”としてサプリメントを摂取する人もいますが、過剰摂取の恐れがあります。たとえばビタミンAを摂取しすぎると、めまいや頭痛などの症状が出ることがあります。ビタミンCは摂りすぎても汗や尿から出ていきますが、過剰に摂取し続けていると、体があまり吸収しなくてもよいと判断して、吸収率が下がってしまう可能性もあります」

大事な試合や受験の日には栄養補助食品という選択肢も

基本的に子どものサプリメントの安易な摂取は避けたほうがよいとしつつも、医師の指導のもとや特別な事情で摂取する場合には、サプリメントの有用性が高まることもあるそうです。

スポーツの試合や特別なトレーニングの日に

トップアスリートを目指す子どもたちがパフォーマンス向上を目指すためにサプリメントを摂取するのは有用なケースのひとつ。ただ、一般的なレベルでスポーツを楽しんでいるなら食事からの摂取で十分とのこと。

「しいていうなら大会や強化トレーニングなど特別な日。午前も午後も試合やトレーニングがあり、緊張や疲労で合間の食事が喉を通らないようなときに、プロテイン等を牛乳や水で溶かして飲んだり、ゼリーやバータイプの栄養補助食品を活用したりするのはありだと思います」

塾通いや受験日に

栄養補助食品は勉強シーンでも役立ちます。

「受験で緊張して食事をするのが難しいお子さんなら、ゼリーやバータイプの栄養補助食品を活用して午後の試験を乗り切るのもよいでしょう。勉強は頭を使い、糖分が消費されるので、糖分摂取は必要。塾通いでも時間がなければ、おにぎりなどのかわりに消化のよいゼリー飲料などを活用することがあってもよいと思います」

サプリメントの選び方・使い方のコツ

さまざまな角度から検討した上でサプリメントを摂取するとなったときは選び方が大事。
信頼できるメーカー、商品から試すのがよいでしょう。第三者からの認証マークがついていることもひとつの目安になります。また、ロングセラーの商品は比較的安全性が高いと判断できます」

摂取の頻度や量も重要なポイントです。
「1日に3粒目安とあれば、1日1粒くらいから始めてみてください。早く結果を出したいからと過剰に摂取するのはよくありません」

アレルギーを持っているなら、さらに注意が必要。
「これまでアレルギー症状が出ていなかった食材や成分に対しても反応してしまうことがあるので注意。アレルギーの有無に関わらず、少量ずつ、少ない頻度で試していくのが安心です」

できれば子どものサプリメントを選ぶ際には、サプリメントの専門家に相談するのがおすすめ。薬剤師がいるドラッグストアなどに資格を持つスタッフがいることがあります。

気軽に手に取れるようになった子どものサプリメント。だからこそ、安易に摂取せず、まずは食生活を見直し、必要な場合は専門家に相談しながら、慎重に検討を進めるのがよさそうです。

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記事監修

仙台大学 教授 早川公康
博士(学術:東京大学<身体運動科学>)。研究領域は、ライフサイエンス / 体育、身体教育学 / スポーツ健康科学、スポーツ栄養学、トレーニング栄養学。サプリメントアドバイザー、管理栄養士、公認スポーツ栄養士、上級幼少年体育指導士などの資格を持ち、栄養指導者や運動指導者としても活動中。著書に『スポーツ・健康のための食事・サプリメント学』(現代図書)などがある。

取材・文/古屋江美子

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