「百ます計算」などの「隂山メソッド」が多くの学校・家庭で成果をあげている隂山英男先生が、子どもの学力を家で伸ばす方法について教えてくださるコーナーです。今回のテーマは、「少ない努力で大きな成果」です。
努力や根性で学力は向上しない
講演のあとの質疑応答で感じることですが、ほとんどの親御さんが「子供の学力を向上させるためには、それなりの努力が必要だ」と思っておられるようです。
子供の家庭学習についての悩みの根っこには、「もっと努力させれば、もっとできるようになる」という思い込みのようなものが、見えかくれするのです。もちろん、努力することは大切ですが、その努力のしかたを考えてほしいのです。
私は「努力や根性で勉強させるのは、学力向上には逆効果」だと思っています。ここでいう努力とは長時間こつこつと机に向かうことであり、根性とはできないことをできるようになろうと無理をすることです。その努力には「だらだら癖」を育む危険性が、その根性には子供を「勉強嫌い」にしてしまう危険性があります。
集中して目標達成する快感が、学力を伸ばす
では、どうすればいいのでしょうか。ズバリ、学力を向上させるには「少ない努力で大きな成果」を達成させること。簡単にいえば「集中させる」ことです。そのためには親が子供の集中力のプロデューサーとなり、学習の密度を濃くしてあげることが必要です。
『時間=質』の意識を子供にも認識させる
たとえば計算や漢字のプリントが宿題に出たとします。まず「今日出た宿題、全部ランドセルから出してごらん」とその「量」を親子でチェックし、「今日は全部の宿題を、何分で終わらせようか?」と目標時間を親子で決めてから、取り組ませましょう。要は「これぐらいの『量』なら、これぐらいの『時間=質』でできるようになりたい」という意識を子供に持たせて勉強させることが、集中力を育む方法なのです。
「きのうはついダラダラして30分もかかったけど、今日は20分で終えるぞ!」といった意欲のもとには、集中して宿題に取り組んだ、目標を達成したという快感があります。これが子供の学力を伸ばす家庭学習の基本形です。
学習とは集中力を身につけるトレーニング
もちろんはじめは目安となる時間もわからず、子供の慣れもありませんから手探りでしょう。しかし親の支えのもとで2週間も続ければ、子供自身が「学習量と必要時間」をしだいに理解して、てきぱきと家庭学習をこなしていくようになります。
そして集中することを身につけた子どもこそ、短期間で飛躍的に学力を伸ばし、自分で将来を切り開いていく素質をも育んでいくのです。
努力や根性ではなく、集中力こそが子供を伸ばすカギ。逆の言い方をすれば、学習とは「集中力を身につけるトレーニングである」、そんな言い方もできると思います。
https://hugkum.sho.jp/kageyama-method
記事監修
1958年兵庫県生まれ。1980年、岡山大学法学部卒業後、教職の道へ。百ます計算をはじめ、「読み書き計算」の徹底した反復学習と生活習慣の改善に取り組み、子ども達の学力を驚異的に向上させた。その指導法である「陰山メソッド」は、教育者、保護者から注目を集め、「陰山メソッド」を教材かした『徹底反復シリーズ』は、総計770万部の大ベストセラーとなっている。現在、YouTube『陰山英男公式チャンネル』で授業や講演を公開して注目を集めている。
編集協力/小倉宏一(ブックマーク) 写真/繁延あづさ 撮影/奥田珠貴 出典/小学一年生