季節の変わり目は、気管支ぜんそくの発作に注意したい時期。
症状を上手にコントロールするためには、薬での治療に加えて、日常生活にも気を配ることが大切です。
目次
気管支ぜんそくは、乳幼児期はウイルス感染型が多い
のどからから肺へつながる「気管」のうち、肺へ向けて左右に分かれている部分より先を「気管支」といいます。気管支ぜんそくは、気管支に慢性的な炎症が起こり、呼吸が苦しくなる発作をくり返す病気です。普段は元気ですが、発作が起こると激しくせき込んだり、息を吸い込むときにゼイゼイ、ヒューヒューと音(ぜん鳴)がしたりします。
3歳以降はアトピー型が増えていく
気管支ぜんそくは、アレルギー反応によって発作が起こる「アトピー型」がよく知られていますが、このほかにもいくつかのタイプがあります。乳幼児期に多いのが、RSウイルスやライノウイルスなどの感染に関係しているもの(この時期は「気管支ぜんそく」の診断が難しく、ぜんそく性気管支炎と呼ばれることもある)。3歳頃からは、アトピー型の気管支ぜんそくが増えていきます。
気管支ぜんそくの人の気管支は、発作が起きていないときでも炎症が治まっているわけではありません。そのため刺激が加わると、すぐに気管支の筋肉が縮んだり気管支の粘膜が腫れたり、痰が増えたりしてしまいます。すると空気の通り道が狭くなり、呼吸がしにくくなる発作が起こるのです。
発作のきっかけとなる刺激には、さまざまなものがあります。「アトピー型」の場合、アレルゲン(アレルギーを引き起こす原因物質)を吸い込むことがいちばんの原因。アレルゲンは人によって異なりますが、多く見られるのがダニやハウスダスト、ペットの毛などです。このほか、かぜなどの感染症や気温の変化、運動、空気の汚れ(煙など)は、発作の原因としてアトピー型以外にも共通するものです。
発作が起こったときの応急処置
子どもが発作を起こしたら、次のように応急処置をします。
1 体を起こして座らせる
水平に寝ていると呼吸しにくいため、上体を起こして座らせ、抱いたり壁などに寄りかからせたりして姿勢を保ちます。
2 腹式呼吸をさせる
おなかをふくらませるようにゆっくりと息を吸い、ゆっくりと吐く呼吸をくり返させます。
3 水分をとらせる
少しずつ水分補給をします。水分をとることで、たんを出しやすくなります。
処方された薬がある場合は薬を飲ませたり吸入させたりし、慎重に見守りましょう。
呼吸をするのが苦しそう、息を吸うと胸がへこむ…強い発作が起こったときは病院へ
症状が軽いぜん鳴やせきだけの場合は、応急処置をして様子を見ます。手持ちの薬があれば飲んだり吸入したりします。これらの処置をして、少し時間をおいても改善しない場合や、息を吸うときに胸がへこむなど、呼吸をするのが明らかに苦しそうなとき、また、下のような強い発作のサインが見られる場合はすぐに病院へ!
強い発作のサイン
下記の症状が見られるときは、すぐに病院へ!
・息がゼイゼイして苦しそう
・息を吸うときに胸がへこむ
・息を吸うときに小鼻が開く
下記の症状が見られるときは救急車を!
・苦しくて話せない、歩けない
・くちびるや爪が白っぽくなったり、青~紫色になったりする
・ぼんやりしている、または、過度に興奮する、暴れる
・失禁する
気管支ぜんそくの薬は2種類
気管支ぜんそくの薬は、「発作が起こったときのもの」と、「発作を防ぐために毎日使うもの」に分けられます。
①発作が起こったときに使う薬
発作が起こったときに使うのは、気管支を広げる効果のある薬で、内服または吸入します。使う量やタイミングは、必ず医師の指示に従いましょう。即効性があるので発作をやわらげることはできますが、炎症を治す効果はありません。
②発作を防ぐために使う薬
発作を予防するための治療には、アレルギー反応のもととなる物質(ロイコトリエン)の働きを抑える抗アレルギー薬の服用か、炎症を抑える効果の高いステロイドを含む吸入薬が使われるのが一般的です。ステロイド薬を吸入した後は、口の中やのどに薬が残らないよう、うがいをするか、水などを飲むようにします。
ステロイド薬であっても、吸入薬の場合、飲み薬のように全身に影響を及ぼすことはほとんどありません。アトピー型の気管支ぜんそくの多くは、発作が起こらなくなるまでに長い時間がかかります。副作用などを過剰に心配せず、医師の指示に従って根気よく通院や治療を続けることが大切です。
日常生活では、発作のきっかけを減らす配慮を
気管支喘息の「長期管理」といわれる治療は、発作が起こらないように症状をコントロールし、健康な子と同じ生活を送れるようにすることが目的。薬で発作を予防するのに加え、生活環境に気を配り、発作のきっかけを減らすようにすることも重要です。また、子どもにとっては体を動かす遊びや運動も大切です。むやみに制限するのではなく、医師に相談しながら薬を適切に使い、健康な子と同様に運動することができるようにしていきましょう。
記事監修
総合母子保健センター 愛育クリニック 小児科・母子保健科部長
小児科専門医、アレルギー専門医。東京大学医学部卒業。東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。4人の女の子の母でもある。
取材・構成/野口久美子