電車を遅らせてしまった…責任は? 「電車遅延で賠償金を求められるケース」を解説。知識を付けてリスクヘッジ!

「電車を遅延させると賠償金が請求される」という噂を聞いたことがある人は多いでしょう。しかし実際には、すべてのケースで賠償金が求められるわけではありません。実際にはどのようなケースで賠償金が請求されるのかを解説します。

どのようなケースで賠償金が求められるのか

電車を遅らせてしまったからといって、問答無用で賠償金を請求されるわけではありません。電車を遅延させてしまっても、賠償金を求められないケースもあります。電車の遅延における賠償金請求の基本的なルールを解説します。

故意や過失で電車を止めてしまうと、賠償金を請求される

賠償金を請求されるかどうかは、電車を遅らせた人に故意または過失があったかによって判断されます。電車を遅延させた人に故意や過失があった場合、民法第709条(不法行為)を根拠に、鉄道会社は加害者に賠償金を請求できます。

たとえ電車を遅延させてしまったとしても、「やむを得ない事情」があった場合には賠償金は求められません。具体的には、「線路に転落した人を助けるために非常停止ボタンを押した」「車内で具合が悪くなってしまった」などのケースが、ここでいう「やむを得ない事情」に当たります。

出典:民法|e-Gov 法令検索

責任を問われるシーンの具体例

賠償金が求められる事故や事件の具体例を解説します。子どもによって引き起こされる事件や事故でも賠償金が求められることがあるため、親が確かな知識を付け、子どもに言い聞かせることも重要です。リスクヘッジのための知識を身に付けましょう。

人身事故

故意や過失で人身事故を起こした場合には、事故を引き起こした本人に対して賠償責任が発生します。もし当該の事故で事故を引き起こした本人が死亡した場合には、遺族が本人の賠償義務を相続し、本人に代わって賠償金を払うことになります。

遺族に賠償金を支払う資力がない場合には、「相続放棄」をすれば、賠償義務を含む一切の債務を免れることが可能です。相続放棄とは、亡くなった人が保有していた財産のすべてを相続しないことを指します。

相続放棄を行うと、賠償義務や借金などの「マイナスの財産」の相続を放棄するだけでなく、預貯金や不動産などの「プラスの財産」の相続も放棄することになります。なお、相続放棄を行うには家庭裁判所での手続きが必要です。

踏切事故

踏切事故とは、無謀な横断や自動車の脱輪などにより、遮断機が降りる前に踏切を渡り切ることができず、電車と接触してしまう事故を指します。

自動車による踏切事故の責任を担うのは運転手です。たとえ故意がなかったとしても、警報の無視や自動車の整備不良などの過失が認められる場合には、賠償金を支払う義務が発生する可能性があるので、注意が必要です。

なお、踏切や非常ボタンが正常に作動していなかった場合には、鉄道会社にも過失があるとされ、賠償金の額が減額される可能性があります。

置き石

置き石とは、線路に石を置いて電車の走行を妨害する行為を指します。子どものいたずらとして行われるケースが多い犯罪行為です。

おおむね12歳未満の子どもによる置き石の場合、民法の規定により、置き石をした子ども本人には賠償責任を負わせないことになっています。子どもによる置き石の責任を背負うのは、子どもの監督責任者である親です。賠償金を支払う義務も親が負うことになります。

注意しなくてはならないのが、置き石の場合、置き石行為を目撃しながら制止しなかった人にも、賠償責任が発生する可能性がある点です。友だちの悪ふざけをただ見ていただけの場合でも、賠償金を支払う義務が発生する可能性があるのです。

いたずら目的で非常停止ボタンを押す

正当な理由がないにもかかわらず、非常停止ボタンを押して電車を遅らせた場合、非常停止ボタンを押したときの状況に応じて「偽計業務妨害罪」や「威力業務妨害罪」に問われるかもしれません。また、刑事罰を受ける可能性とともに、賠償金を請求される可能性もあります。

日頃から電車に乗っていると、非常停止ボタンを押さなくてはならない瞬間に出くわすことがあるでしょう。「賠償金を請求されるかもしれない」という心配が頭をかすめ、押すことをためらう人もいるかもしれません。

しかし、電車で起きる非常事態は時として人命に関わります。いざというときには、躊躇なく非常停止ボタンを押す勇気が必要です。

たとえ勘違いや見間違いで非常停止ボタンを押してしまったとしても、他の乗客の安全を守るためにやむを得ず非常停止ボタンを押したのであれば、賠償金を求められる可能性は低いといえるでしょう。

電車遅延による賠償額の相場

故意や過失で電車を遅延させてしまった場合に求められる、賠償金の相場を解説します。賠償金に関するイメージを確かなものにしましょう。

賠償額が数百万円規模になるケースもある

電車を故意または過失で遅延させてしまった場合に求められる賠償金の額は、被害の程度によって変動します。具体的には、乗客の振替輸送や払い戻しに費やした「振替輸送費」、事故により破損した車両を修理するための「修理費」、復旧に尽力した職員に支払う「人件費」などの費用を総合して賠償金の額を算出します。

被害額を精査した結果、賠償額が非常に高額になったとしても、多くの場合、鉄道会社側と加害者側との話し合いにより、数百万円まで減額されるケースが大半です。多額の賠償金を請求したところで、加害者側に支払い能力がないケースが多いためと考えられます。「電車を遅延させると数千万~数億円の賠償金が請求される」というイメージは、必ずしも正しくないといえるでしょう。

迷惑行為には大きな代償が付きまとう

故意や過失で電車を遅延させてしまった場合、数百万円規模の賠償金が請求される可能性があります。ほんの出来心で行ってしまった迷惑行為には、多大な代償が伴うのです。平穏な生活を自ら投げ出すことのないよう、迷惑行為は厳に慎むべきといえるでしょう。

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文・構成/HugKum編集部

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