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厚労省の規制は、女湯に入れる男の子はおおむね7歳まで
2020年に厚生労働省は、公衆浴場での混浴を規制する年齢を、それまでの「おおむね10歳以上」から「おおむね7歳以上」に改正しました。しかし、実際には施設や体格差等で判別が難しい場面も多く、最終的には保護者の性に対する倫理観に委ねられる部分があります。さらに対応を難しくさせているのは家庭の事情や子どもの障害特性がゆえに迷う場合があるからでしょう。
今回はあくまで性教育の観点からの一つの指標を書いていきます。参考にしていただけると幸いです。
「プライベートゾーン」を教える3歳~5歳を目安に異性との入浴は避ける

最近は、幼稚園や保育園でもプライベートゾーンを教えるようになった園も増えています。個人差はありますが、自分の身体が男である、女であるという理解が安定するのが3~5歳頃だからです。この頃から異性との入浴は避けることをおすすめします。
特に公衆浴場では異性同伴を控え、自宅でも考え方を統一して異性の親・兄弟との入浴は避ける方針を推奨します。同性の保護者がいれば同性同士、いない場合は「入浴介助」という立場で、安全確認や洗身の手伝いのみにとどめる方法が現実的です。
男女の区別はトイレと同じく、入浴も一貫性を
実際の相談では、「父親が娘を男湯へ」というケースはほぼありませんが、「母親が幼い息子を女湯へ」は一定数あります。プライベートゾーンの教育、トイレは男女区別する一方で浴場、更衣室は例外、という運用は性教育上の一貫性を損ね、「大人の都合でルールは変えてよい」という学習につながるおそれもあります。
女湯に入っている女の子もいます。早い子では4歳、5歳でプライベートゾーンを異性に見られると恥ずかしいという感覚を持つ子もいます。
自分の家庭事情だけでなく、同じ空間を使う他の人、子どもへの配慮はとても重要な意識です。
プライベートゾーンを学んだら、自宅でも異性入浴はNGに

自宅のお風呂でも、異性の親、きょうだいと入ることを何歳までしてもいいかという相談も増えています。これは日本独特の入浴の文化によってもたらされるものだと感じます。
自宅でも方針を統一し、プライベートゾーンの学びが始まったら異性入浴はやめることを推奨します。同性保護者がいれば同性同士、いない場合は安全面からも入浴介助(衣類や水着を着用し、安全確認、必要な洗身のみを手伝う等)で対応を。障害のある子にとっては、成長後の入浴介助の準備にもなります。「お風呂は異性と入ってもよい」という学習が積み重なってしまう前に、身体的な性差と境界の意識を育てましょう。
家庭内の異性入浴。事例別アドバイス

コミュニケーション目的で、父親と娘が入浴したいという場合
目的が「コミュニケーション」であるなら、他ではコミュニケーションの時間が取れないかを考えましょう。
父親が仕事で忙しいなら、手順の説明書を用意して、休みの日に娘と一緒に料理をしてもらうのはどうでしょう。娘はお母さんの真似をしたい時期、パパと一緒にご飯を作ることを喜ぶ子が多いです。
息子がママ(娘がパパ)と一緒に入りたがる場合
まず一緒に入りたいと言っている理由を聞きましょう。何か理由があるかもしれません。
そして、子どもに伝える際は「あなたもプライベートゾーンについて学ぶ年齢になったから、同性同士で入ることにしよう」と成長を認める言葉がけをしていただきたいと思います。
そのうえでママ(パパ)も異性であること、見られると恥ずかしい部分があることを伝えるのは良い学びになります。もし一緒に入る必要があるときは水着などを着用して対応することがおすすめです。
きょうだいを分けて入れるのも大変、母親と一緒に入ったほうが楽という場合
シングルのご家庭やワンオペ等で時間がない状況は理解できますが、性教育の一貫性を優先するなら推奨できません。タイマーで順番を区切る、それぞれ占有時間を決めて分けるなど現実的な方法で乗り切ることをおすすめします。
わたしの提案は、性教育の観点からの推奨であり、最終判断は責任が伴う各家庭で決めることです。わたしたち専門家にできるのは、保護者の話を丁寧に聴き、問題を切り分け、選択肢を提示することです。
その際、社会的なルールを鑑み、家庭内でも同じ方針を適用すると、加害・被害の未然防止になるだけでなく、子どもにも大人にも迷いが少なくなります。子どもの理解度も考慮し、例外時は「入浴介助」として明確に位置づけることがおすすめです。
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監修
健康運動指導士、介護福祉士、保育士、公認心理師。株式会社スプレンドーレ代表。
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