
私は生き物全般が苦手です。ところが息子は蝉を捕まえたり、ザリガニ、カブトムシや、カナヘビやダンゴムシなどが好き。園でお散歩に行ったときによく捕まえて、持って帰ると言うのです。断固拒否しているのですが、一方で子どもの興味や関心を育てなければという気持ちもあり、途方に暮れてしまいます。
親が拒否をあからさまにすると、子どもは興味を失ってしまいます
小さなカエルを見つけた子がいます。お母さんは嫌いなことを知っているけど、どうしても置き去りにはしたくない。そこで、彼女はそっとリュックの中に入れて帰りました。子どもが帰ってきて、リュックの中を見たお母さんは悲鳴をあげました。きゃー‼。見つけられてしまった子どもはしょんぼり。その姿を見たお母さんは、カエルを元いたところに返しに行こう、そのほうがカエルも喜ぶと思うよと子どもを説得して返しに行きました。
多くの子どもたちは虫や小動物が好きです。地面に近いので、見つけやすいこともあるでしょう。動くアリに興味を持って足で踏み、動かなくなったと確認するのは1歳からでもやります。命というより、自分が踏んだら止まったという事実を確かめるような感じです。2歳くらいの子は動くものはちょっと怖い。でも、動かなくなったらじっくり見たり、触ったりできます。そこでカエルやトカゲなどの死骸を拾ったりします。動くから興味を持って観察が始まるのは3歳くらいでしょうか?4歳くらいからは捕獲することにはまり、やがて飼うということに移行していきます。
こんなふうに子どもは地球にいる自然物を受け入れて育っていくのですが、どうしたわけか多くのおとなが嫌がります。
かつて虫取りが好きで、ちぎったり、切ったりしていた子どもたちが4年生になった頃「あなたたち、虫取り上手だったよね。今も潰したりしているの?」と聞いたら「今はやらないよ。気持ち悪いから」と言いました。彼らはいじってたからこそ、潰すと汁が出るとか、臭い匂いがするとか、刺されるとか予測がつくので、もういいですって事でしょうかね。小さい頃は好きだった人は、こんな経験もあるのかもしれません。
覚悟をもって受け入れるか、距離を取って遠目で見るか
それにしても大きくなるにつれ、気味悪がる人が多くなるのは、その環境がないからではないでしょうか?
昔のように家の中にヤモリやクモや、うっかりするとネズミまでがいた頃とは違います。清潔で密閉された地域環境と住環境。人間が清潔を好み、虫などを完璧にシャットアウトしている環境の心地よさに慣れてしまった。
子どもの育ちは昔から変わらず、興味も変わりません。カブトムシを見つけると誇らしげです。ザリガニが釣れるとヤッターと喜びます。子どもとのギャップは大きくなる一方の現代です。
なので子どもへの対応としては二方向あると思います。子どもの興味につきあって、自分の中に埋もれてしまった感性を呼び起こす。もう一つは、拒否はしないで、遠目に見る。冒頭のカエルの話のように子どもと話して折り合うという方法です。
親が拒否をあからさまにすると、「ママやパパが嫌がるから」と、持ち帰るどころか捕まえようともしなくなります。我慢しているうちに、興味さえ持てなくなってしまうのです。「ママが嫌いなことは、しない」と。ちょっと残念ですよね。身の毛がよだつほどでない限りは、子どもってこんなものなのねと、諦めながらおつきあいいただけたらうれしいです。
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記事監修

保育者。自主幼稚園「りんごの木」代表。子どもの気持ち、保護者の気持ちによりそう保育をつづけて半世紀。小学生ママ向けの講演も人気を博している。ロングセラー絵本『けんかのきもち』(ポプラ社)、『こどものみかた 春夏秋冬』(福音館書店)、『あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます』(小学館)など、多数。親向けの最新刊に『保育歴50年!愛子さんの子育てお悩み相談室』(小学館)がある。