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私立中118校の入試でも漢検を活用
子どもに「漢字をもっと好きになってほしい」「語彙を増やしてあげたい」。そんな思いから、日本漢字能力検定(以下、漢検)に興味を持つママやパパも多いのではないでしょうか?
中には、「中学受験で少しでも有利になるなら」と考えて漢検に挑戦するご家庭もあるでしょう。実際、私立中学校入試で漢検の級が出願要件や加点、合否判定の参考として活用されるケースもあり、2025年度調査では全国の私立中のうち118校が入試で漢検を活用していることが示されています(日本漢字能力検定協会調べ)。
でも実際には「どんな問題が出るの?」「小学生でも安心して受けられる?」と、気になることはたくさんありますよね。
世の中には知られていない漢検の裏側
実は、漢字検定の問題作成には、世の中にはあまり知られていない「裏側」があります。それは、子どもの生活や語彙力にきめ細かく寄り添った問題作りや、字の骨組みに関わらない細かな書き方で不正解にしない丁寧な採点など、長年かけて築き上げられた「安心して受けられる仕組み」。
今回は、取材で明らかになった「知られざる漢字検定の裏側」を徹底的にご紹介します。
なぜ子どもの学びを支える検定として信頼されているのか、そして漢検が「ただの漢字テスト以上」の意味を持つ理由を、一緒にのぞいていきましょう。

漢検の問題はこうして作られている
「小学校1年生修了程度を目安にした10級から小学校6年生修了程度を目安にした5級までを対象とした漢検の問題は、『子どもが無理なく理解できるか』を最優先に問題を作成しています」と日本漢字能力検定協会の石丸達也さんは言います。
しかも、その一問一問の裏側には、半年にわたる検討と、多くの専門家の視点があるのだとか。
「この言葉は今の子どもにとって身近かな?」「どんな生活体験をしている?」 そんな細かな観点からつくられているからこそ、初めての子どもでも安心して取り組めます。
ここでは、漢検の問題作成の視点について詳しく紹介しましょう。
問題作成の代表的な観点
漢検では、子どもの生活体験や語彙力を踏まえて「どんな言葉なら理解しやすいか」を丁寧に判断します。
地域差が出る語句は使わない、書き方が複数存在する語句は避ける、特定の価値観を押しつける内容は問題にしない… といった厳密なルールが存在。
さらに「事実に反しないか」「学年相応の語彙か」など、多角的なチェックを経て、子どもが無理なく読める問題だけが採用されています。

実例:「公衆電話」の激論
作問会議では、たった一つの語句をめぐって何度も議論が交わされます。例えば漢検5級の《コウシュウ》電話の《コウシュウ》の漢字を問う問題。

答えとなる「公衆電話」という語句は、「いまの小学生は知らないのでは?」「防災教育では扱われることもある」と意見が割れ、何度も検討が続いたそうです。
一問を作るために、ここまで子どもの理解を丁寧に考えているのが漢検の特徴です。
小学5年・久冨奏太郎さんのエピソード
今回、漢検の問題作成の裏側を取材する「子ども漢検リポーター」として参加した小学5年生の久冨奏太郎(ひさとみ・そうたろう)さん。
もともと読書は好きだったそうですが、漢検をきっかけに「難しい漢字を探しながら読む」という、新しい楽しみ方が生まれたと言います。
この夏休みには『待ってろ! 甲子園』(ポプラ社)を読み込み、なんと実際に物語の舞台となった学校の試合を応援しに行くほど夢中に。その後、監督に手紙を書くまでに興味が広がったそうで、物語の世界が現実の体験につながるすてきな経験になったそうです。
漢検は「漢字を覚えるための検定」にとどまらず、子どもの好奇心や行動力を後押しし、学びの世界を大きく広げてくれることを実感できるエピソードです。

右は、日本漢字能力検定協会の安彦洋平さん。
漢字検定の採点は「厳しいのに優しい」
年間1億問以上を採点する漢字検定。「うちの子、細かい『はね』や『とめ』で減点されないかな?」と心配する保護者の方も多いでしょう。実は採点の基準はとても「子どもに優しい」ものになっています。
一方で、公平性を守るための厳格なチェック体制も整っており、そのバランスこそが漢検の信頼を支えているようです。
字の骨組みを理解できていれば、とめ・はね・はらいで×はつかない
漢検の採点基準では、「文字の骨組みが正しく読み取れるか」をいちばん大切にしています。そのため、誰が見てもその字と判断できれば、とめても、はねても、原則として不正解にはなりません。
「うちの子、字が雑で…」「とめ・はねが苦手だから心配」という保護者の声をよく耳にしますが、美しい字を書けなくても、丁寧に字を書くことができればOK。その心配は不要です。
採点で見ているのは、細かな筆使いではなく、子どもが漢字を意味のある形として書けているかどうか。
この基準があるからこそ、初めての受検でも安心して挑戦できますし、字の骨組みを理解して丁寧に書けたら、書き方のクセを理由に不必要に落とされることもありません。

二人採点+一致しなければ第三者チェック
採点は厳格な二重チェック方式。一人の採点者の判断で結果が決まるのではなく、同じ解答を二人が別々に採点し、一致した場合のみ結果が確定します。もし意見が割れた場合は、第三者が入り最終判断を行う仕組み。
約6,000字すべてに細かい判断基準が定められており、どの子にも公平な評価が届くよう、緻密な体制が整えられています。
子どもリポーターの「模擬採点体験」から見えたこと
実際の採点現場では、同じ問題の解答を「串刺し表示」し、一字一字の細かい判断基準を参考にしながら丁寧に判定していきます。
取材に参加した久冨さんも模擬採点を体験して、「どのような解答が判定に迷いやすいか」を実感したそう。
「採点って怖いもの」ではなく、公平さと子どもへの温かなまなざしが両立していることを感じられる貴重な場面でした。

うちの子は何級から?「受検級の目安チェック」でわかること
漢検を受けさせてみようと思ったとき、最初に悩むのが「どの級を受ければいいの?」という点。日本漢字能力検定協会が公開する「受検級の目安チェック」では、学年に応じた目安や、実際の問題に挑戦できる「お試し機能」が用意されています。
初めての子でもレベル感がつかみやすく、保護者にとっても級選びの不安がぐっと軽くなりますよ。
学年別の目安

漢字検定は、10級〜5級において「学年の修了程度」という明確な基準があります。10級は小学1年生、9級は小学2年生、8級は小学3年生… といったように、子どもの学年とほぼ対応。
まずは「学年相応の級」を基準にしつつ、得意な子はワンランク上の「チャレンジ級」、初めてで不安な子は一学年下の級を選ぶのもおすすめです。
漢検は個人受検の場合、年に3回のチャンスがあります。無理なくステップアップできるのが漢検の魅力ですね。
また、「漢検オンライン」(2〜10級で実施)であれば、毎週日曜日に受検することができます。
10問で「いまの実力」がわかる
「受検級の目安チェック」では、各級のサンプル問題10問に無料で挑戦できます。ぜひ、お子さんと試してみてください。
実際の問題に近い内容なので、子どもがどれくらい読めるのか・書けるのかを短時間で確認でき、級選びの失敗がありませんよ。
親子で「どれくらいできるかな?」と楽しみながら取り組めるため、漢検へのハードルがぐっと下がる「入り口」としても最適です。
まとめ|漢検は「知識」ではなく「世界を広げる学び」
漢検の裏側には、子どもの生活や語彙力に寄り添った細やかな作問や、公平性を守るための丁寧な採点があり、「安心して受けられる仕組み」が徹底されていることがわかりました。
舞台裏を知るほど、「ただ解いて終わりではなく、問題文そのものを丁寧に読み込みたくなる」… そんな奥深さも感じられたのではないでしょうか。
漢字を知ることは、子どもの世界そのものを広げるきっかけにもつながります。
まずは「受検級の目安チェック」に親子で挑戦してみたり、気になる漢字を一緒に調べてみたり… 今日からできる第一歩はたくさん。
漢字との出会いが、「学びって楽しい!」につながりますように。
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協力/公益財団法人日本漢字能力検定協会
取材・文/末原美裕(京都メディアライン)
