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なぜ「なぞなぞ」がことばの発達にいいの?

「うちの子、なかなかおしゃべりが続かない……」「説明するのが少し苦手みたい」。そんな悩みを持つ親御さんに、ぜひ日常の遊びに取り入れてほしいのが「なぞなぞ」です。
遊びながら脳内で「言葉の辞書」のネットワークが育まれます
言葉を覚えたての時期は、単語が一つずつ独立した「点」の状態で記憶されています。なぞなぞ遊びは、この点と点をつなぎ、脳内の「言葉の辞書」を豊かにする作業です。
例えば「はさみ」という言葉に対し、「切る(動作)」「紙(対象)」「道具(カテゴリー)」といった複数の属性を紐付けて整理することで、語彙同士の相互の結びつき、つまりネットワークが強固になります。
単語そのものだけでなく、「何をするものか」という動作や用途をセットで捉える練習を繰り返すと、一つの言葉から関連するイメージを素早く引き出す力が養われます。その結果、日常会話においても「言いたい言葉がスムーズに出てくる」状態へと導かれていきます。
正しい文法の使い分けも学ぶことができます
なぞなぞを出すには、「これは○○なものです」という説明(平叙文)を、「○○なものは、なーんだ?」という疑問文へ作り替えるプロセスが必要です。この構文の変換練習は、自分の発する言葉を客観的に捉える力(メタ言語能力)を養います。
特になぞなぞにおいては、「〜は」「〜を」「〜で」といった助詞を正確に使わなければ、相手に意図した正解が伝わりません。そのため、遊びのルールに則ってやり取りを重ねることで、正しい文法の使い分けが着実に身についていきます。
言語聴覚士が開発した教材では、いきなり出題するのではなく、まずは特徴を説明する練習を行い、その後に問いかけの形に整えるという「スモールステップ」が推奨されています。
相手の立場に立って考えることを促し、社会性を育てる「なぞなぞのルール」

なぞなぞの最大の特徴は、「答えを言ってはいけない」というルールです。これはコミュニケーションにおいてとても高度なスキルを要求します。例えば「ぼうし」を説明するときに「ぼうしを被るもの、なーんだ?」と言ってしまっては、答えが含まれているため成立しませんよね。
肝心な情報をうまく隠し、相手がどの程度のヒントなら解けるかを推測する作業は、相手の立場に立って考える「心の理論」の発達を促します。必要な情報だけを選び、不要な情報を隠す調整力が磨かれるのです。
会話には、相手の発言を待つ、反応を返すといった目に見えないルールがあります。なぞなぞは、この「やり取りの型」を学ぶ絶好の場です。自分が問題を出し、相手が答え、自分が判定する。またはその反対で、自分が聴いて取る、この一連のターンの交代は、会話のキャッチボールを発展させた遊びです。
また、「ピンポーン!」「ブーッ、惜しい!」といった明確なフィードバックがあることで、相手の反応を正しく受け止め、次のやり取りへとつなげる社会性が育まれます。
実践! スモールステップで進める「なぞなぞ」の手順

いきなり出題するのは難しいため、言語聴覚士による指導の場面では、いきなり出題する問題文を作ってもらうのではなく、まずは特徴を説明する練習を行い、その後に問いかけの形に整えるという「スモールステップ」を提案しています。
ステップ1 説明の練習
「ぼうしは、___もの」
型に当てはめ、その物の特徴を説明する文(平叙文)を完成させます。
ステップ2 質問の作成
「___もの、なーんだ?」
型に当てはめ、相手に問いかける文を作ります。
この「型」があることで、お子さんはパターンプラクティスと言って、繰り返し同じ型を練習することができるので、ことばの練習に集中することができます。
お子さんの反応に合わせた「声かけ」と「誘導」のコツ
なぞなぞを出題するとき、お子さんがことばに詰まったり、うまく説明できなかったりするときのための、さらに一歩踏み込んだサポート術です。
ケース1 何から話せばいいか迷っているときは、選択肢のお助けを
「食べるものかな? それとも切るものかな?」と動作の選択肢を提示して、カテゴリーを絞り込む手助けをします。
ケース2 いきなり「答え」を言ってしまっても、肯定的に受け止めます
「正解! よくわかったね。じゃあ、次はその答えを内緒にして、ヒントだけ教えてくれるかな?」と、「秘密にする遊び」としてリフレーミングします。または、スモールステップとして、「なーんだ?」を最後に付けるだけでもよしとします。
ケース3 助詞や文末のまちがいが多いときは、正しい形を復習して聞かせましょう
お子さんが「りんご、赤色のしてる」と言ったら、「そうだね、りんごは赤い色してるよね」と、大人が正しい助詞を補って返してあげることが、耳から学ぶ最良のトレーニングになります。
成長に合わせてステップアップ!

初級:モノの名前とセットの「動作」から伝える
まず初級段階では、モノの名前と結びつきが強い「動作語」をペアで捉えることから始めます。
「はさみ―切るもの」「ボール―投げるもの」「おにぎり―食べるもの」といった、共起性の高い(セットで使われることが多い)表現をなぞることで、説明する力の基礎を固めます。この時期は、専用の練習シートを使い、「ぼうしは、___もの」といった決まった型に言葉を当てはめる練習が非常に効果的です。
中~上級:家電や道具の「役割・機能」を言語化する
モノの様子が説明できるようになった中〜上級段階では、家電や道具などの具体的な役割や機能の説明に挑戦します。
「鼻をかむときに使うもの(ティッシュ)」「字を消すときに使うもの(消しゴム)」など、より複雑な目的や用途を言葉にする練習へと進みます。自分の経験や知識に基づいた「少し長い文章」を自分で組み立てて伝える経験を積むことで、論理的な思考力がさらに深まります。
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教えてくれたのは
慶應義塾大学文学部卒。養成課程で言語聴覚士免許を取得。総合病院、耳鼻科クリニック、専門学校、区立障害者福祉センターなどに勤務ののち独立し「ことばの相談室ことり」を設立。現在、東京都台東区と熊本市中央区に店舗を構える。年間100症例以上のことばの相談・支援に携わる。臨床のかたわら、「おうち療育」を合言葉に「コトリドリル」シリーズを製作・販売。専門は、子どものことばの発達全般、吃音、発音指導、学習面のサポート、大人の発音矯正。著書に、『0~4歳 ことばをひきだす親子あそび』(小学館)、『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』(誠文堂新光社)がある。

