「YouTubeばかり観る子ども」をそのままにしてもいい? スマホ依存で失われる恐れがあること【作業療法士・クロカワナオキさん】

『障がいのある子どもを育てながらどう生きる?』の著者で作業療法士のクロカワナオキさんの連載記事シリーズ。
今回は、「YouTubeばかり観る子ども」をそのままにしておくと失われてしまうものがあることについて、論じてもらいました。

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最近、同僚から「子どもがいつも同じYouTubeを観てばかりで気になる」「YouTubeを観るだけで満足して、友達と遊ぶことに関心を失くしているようで不安」などの話を聞きます。

YouTubeに釘づけになる子どもに対して、他のことへの関心が薄くなってしまうのではないかと不安を感じる親は、少なくないように思います。

同じ不安を、私は知的障がいがある子どもに対して感じていました。ネットコンテンツにハマり、物事への関心が薄くなることは、息子の発達においては死活問題であったからです。そこで、いろいろ調べたり考えたりした結果、子育てではネットコンテンツをなるべく控えるという結論に至りました。

なぜ子どものスマホ使用は致命的なのか?

なぜ子どものスマートフォン使用は致命的なのか。大きな理由は2つあります。ひとつは、子どもが一定時間以上にスマホを使用し続けると、学力が低下するという調査報告です。

東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授らが仙台市で行った大規模な調査(※)では、スマホを毎日1時間以上使用している子どもは、1時間以下の子どもに比べて学力が低く、スマホの使用時間が長くなるほど成績が低下するという結果が報告されています。その中では、たとえ勉強をしていても、スマホの使用時間が長いと成績は頭打ちになり、条件によっては勉強をしている子どもよりも、スマホを使用せず勉強もしていない子どもの方が学力が高くなったという結果も報告されています。

海外では、SNSやネットゲームなどを未成年への提供することを制限している国もあります。国策として実施しなければならないほどの社会問題として認識している国もあるのです。

もうひとつは、ネットコンテンツの背景にある「関心経済」の存在です。

多くのネットコンテンツの収入は、広告の閲覧により発生しており、人々の関心を集めることが金銭的価値を生むしくみで動いています。

興味や関心をつかんで離さないために考え抜かれたアルゴリズムは、日々ブラッシュアップされ続け、見ている人の興味を刺激し続けることでコンテンツに釘づけにし、企業に利益をもたらしています。子どもは、まだ発達の途中にあるために自制心が弱く、とうてい太刀打ちできるものではありません。

また、子どもが一度に関心が持てる量や時間にも限りがあり、ネットコンテンツに関心を割いた分、他のものへの関心は失われます。

それでもまだ、ネットコンテンツに刺激を受けて、新しいことにトライしているなら、それほど心配ないのかもしれません。しかし、それを観ること自体に満足している状況は、新しいことに目を向けて行動する機会を失っているとも言えます。

とはいえ、ネットコンテンツを禁止すれば良いというわけでもありません。なぜなら、子どもが成長して大人になったとき、そのことに無知である状況もまた、社会人として不利益をもたらすからです。

子どもをスマホ依存にさせない子育て戦略

この先ある進学や就職のことを考えると、結局は子ども自身がネットコンテンツの利用をコントロールできるようになるということが大切になります。そのために、私が子育てで行ってきたことは2つあります。

ひとつは、ネットコンテンツに触れるより先に、リアルコンテンツにしっかりと触れておくことです。

懸念されるのはネットコンテンツに満足しすぎることで、現実の行動の先にある新鮮なことや楽しいことへの関心がなくなってしまうことです。

そのため、まず先に、リアルコンテンツならではの五感を通じた体験にしっかりと触れておくことで、観るだけで得られることと、実際に行動を起こして得られることの違いを、体験として理解しておくことが大切です。

私は、幼い子どもと一緒に外で遊び、キャンプや野外フェスに出かけ、家族同士の食事会などを積極的に行ってきました。そして現在、子どもは暇つぶしにスマホをいじることはあっても、それとは別の現実的な目的に向かって生活しているように見えます。

もうひとつは、スマホを渡すよりも先に、使用することの弊害を、親子で共有しておくことです。

すでにネットコンテンツにハマり、何時間も視聴している子どもにとって、使用を制限されることは「損失」になります。そうなる前に、スマホを長時間使用することへの弊害を、子ども自身が知識として知っておく必要があります。

私は子どもにスマホを渡す前に、前述したスマホの使用時間と学力の関係性について伝えるだけでなく、「学力」についても説明しました。学力は、あるとたくさんある進路から進みたいところを選べるが、なければ限られた中から選ばなくてはならなくなる。自分が進みたい方向や環境が見つかったとき、学力があったほうが選びやすくなる。そう説明して、トップ画面にスクリーンタイムを映す設定にしたスマホを渡しました。

将来の可能性にあふれている子どもが、スマホを使用することを考える上で大切なことは、制限を課すことよりも、スマホの使用を通じて自制することを経験し、ネットコンテンツよりも楽しいことや価値があること発見していくことになるのです。

親がスマホに興じて失うもの

スマホに興じて、機会損失をしてしまうのは親も同じです。なぜなら子どもが親を必要とする時間は一瞬で、その時間が親子の関係性を形成するからです。

スマホを観ているその時間、自分の視線を子どもに向けなかったことを、後になって後悔したところで、その時間は戻ってきません。子どもがYouTubeを観ている時間、親はSNSに興じている。その時間で失っているものは、実は子どもよりも親の方が大きいのかもしれません。

※「スマホが学力を破壊する」川島隆太 集英社新書 2018. 「スマホ依存が脳を傷つける デジタルドラッグの罠」川島隆太 宝島社新書 2023.

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記事執筆

クロカワナオキ

医療の分野で20年以上のキャリアを持つ作業療法士。広汎性発達遅滞がある子どもを成人まで育てた2児の父。著書『障がいのある子どもを育てながらどう生きる? 親の生き方を考えるための具体的な52の提案』(WAVE出版) はAmazon売れ筋ランキング 【学習障害】で1位 (2025.6.6)。

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