妊婦さん注目!赤ちゃんを守る「RSウイルス母子免疫ワクチン」の定期接種がスタート。重症化すると、呼吸困難にも…。ワクチンの予防効果や副反応は?

2026年4月から妊婦さん向けの「RSウイルス母子免疫ワクチン」が、無料の定期接種になりました。RSウイルス母子免疫ワクチンは、とくに生後3カ月未満の赤ちゃんが重症化しやすいRSウイルス感染症を防ぐためのワクチンです。感染症とワクチンに詳しい、国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 感染症科 庄司健介先生に、RSウイルス母子免疫ワクチンについて教えてもらいました。

生後3カ月未満の赤ちゃんがRSウイルス感染症になると重症化しやすい

――RSウイルス感染症とはどのような病気でしょうか。

庄司先生 RSウイルスは、感染力が強く、呼吸器症状を引き起こすウイルスです。1歳までに50%以上が、2歳までにほぼ100%の乳幼児がRSウイルスに少なくても1度は感染するとされています。

感染すると発熱、鼻水、咳などの風邪のような症状が数日続きますが、生後3カ月未満の赤ちゃんは、特に重症化しやすいので注意が必要です。

早産、慢性肺疾患、先天性心疾患、免疫不全、ダウン症などの乳児もRSウイルスに感染すると重症化しやすいため、RSウイルスの流行期に「シナジス®」や「ベイフォータス®」という抗体製剤を接種して重症化を防いでいます。しかし疾患のない赤ちゃんは、現在、保険適用で「シナジス®」や「ベイフォータス®」は受けられません。 

赤ちゃんが重症化すると、呼吸困難になり人工呼吸器が必要になることも

――重症化すると、どのような症状がみられますか。

庄司先生 咳が悪化して、呼吸が苦しくなり入院するケースもあります。なかには呼吸困難になり、人工呼吸器が必要になることもあります。

RSウイルス感染症は特効薬がないため、対症療法が中心です。赤ちゃんには、特に注意が必要な感染症と思ってください。

RSウイルス母子免疫ワクチンは、妊娠28週0日から36週6日までの間に1回接種

――RSウイルス母子免疫ワクチンは、どのようなワクチンでしょうか。

庄司先生 このワクチンは妊婦さんが接種することで、母胎内で作られた抗体が胎盤を通じて胎児に移行する母子免疫ワクチンです。接種することで、赤ちゃんは生まれたときからRSウイルスに対する抗体をもちます。

RSウイルス母子免疫ワクチンの接種時期は、妊娠28週0日から36週6日までの間に1回。三角筋という肩の下の筋肉に接種します。

――妊娠28週0日から36週6日以外は、RSウイルス母子免疫ワクチンは接種できないのでしょうか。

庄司先生 妊娠24週未満、または37週以降は接種できません。また、妊娠24週0日から妊娠27週6日までは接種自体は可能ですが、任意接種という扱いになり、費用が3万円~3万5000円ぐらいかかります。効果の面でも28週以降の方がよいとされておりますので、妊娠28週0日から36週6日の間に定期接種として接種することが重要です。

さらに接種後、胎児が抗体を得るまで約2週間かかります。そうしたことを考慮して、接種時期を決めてほしいと思います。

かかりつけの産婦人科で接種できないときは、担当医に相談

――かかりつけの産婦人科で、RSウイルス母子免疫ワクチンを接種できない場合はどうしたらよいのでしょうか。

庄司先生 かかりつけの産婦人科の医師と相談してください。

RSウイルスワクチンは妊婦さん向けと高齢者向けがあり、妊婦さんに接種できるのはファイザー社の「アブリスボ®」というワクチンだけです。高齢者はファイザー社の「アブリスボ®」に加えてGSK社の「アレックスビー®」というワクチンも接種できますが、「アレックスビー®」は、早産のリスクがあるという報告があり、妊婦さんには接種できません(妊婦さんに接種できるのはアブリスボ®だけです)。 

かかりつけの産婦人科以外で、妊婦さんが接種するときは問診票を提出しますが、念のため医師に「妊婦です」と伝えてください。

RSウイルス母子免疫ワクチンの予防効果が特に高いのは生後0~90日の赤ちゃん

――RSウイルス母子免疫ワクチンの予防効果について教えてください。

庄司先生 これまでの研究では、RSウイルス感染症による医療機関の受診を必要とした下気道感染症の予防効果は、生後0~90日では8割程度。生後0~180日では7割程度とされています。 

母体から移行したRSウイルスに対する抗体は、赤ちゃんの成長に従って減少していきますが、先ほどもお話ししたように生後3カ月未満の赤ちゃんが感染するととくに重症化しやすいので、生後0~90日の間でワクチンの予防効果が高いことは赤ちゃんを守ることにつながります。

これまでの研究では、RSウイルス感染症による医療機関の受診を必要とした重症(下気道感染症)の予防効果は、生後0~90日では8割程度。生後0~180日では7割程度とされています。

副反応は、接種部位の痛み、腫れ、頭痛、筋肉痛

――RSウイルス母子免疫ワクチンの副反応について教えてください。

庄司先生 接種部位の痛み、腫れ、頭痛、筋肉痛などがありますが、数日でおさまります。副反応かどうかはわかりませんが、接種後に38度以上の発熱や、おなかの張りなどいつもと違う様子があるときは、かかりつけの産婦人科にすぐに連絡してください。

発熱・体調不良、重篤な急性疾患があると接種できません

――RSウイルス母子免疫ワクチンの接種を控えたほうがよい妊婦さんはいますか。

庄司先生 1)接種当日の発熱・体調不良、2)重篤な急性疾患にかかっている妊婦さんは、接種ができません。

また、この予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシーになったことがある妊婦さんも接種ができません。これまでアナフィラキシーになったことがある妊婦さんは、必ず医師に伝えてください。

次に該当する方も、注意が必要なので接種を受ける前に必ず医師に相談しましょう。

●心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患等の基礎疾患がある方。

●これまでに、予防接種を受けて2日以内に発熱や全身の発疹などのアレルギー症状があった方。

●けいれんを起こしたことがある方。

●免疫不全と診断されている方や、近親者に先天性免疫不全症の方がいる方。

●組換えRSウイルスワクチン(母子免疫ワクチン)の成分に対してアレルギーを起こすおそれのある方。

●妊娠高血圧症候群の発症リスクが高いと医師に判断された方や、今までに妊娠高血圧症候群と診断された方。

●血小板減少症や凝固障害がある方、抗凝固療法を実施されている方。

RSウイルス母子免疫ワクチンは、アメリカ、イギリス、フランスなどで推奨されています

――RSウイルス母子免疫ワクチンの安全性について教えてください。

庄司先生 RSウイルス母子免疫ワクチンは、アメリカやイギリス、フランスなどの欧州各国、オーストラリアなど様々な国で接種が推奨されています。厚生労働省では、海外では妊娠高血圧症候群の発症リスクが増加する可能性があるという一部の報告もありますが、薬事承認において用いられた臨床試験では、妊娠高血圧症候群の発症リスクの増加は認められないとしています。​

RSウイルス母子免疫ワクチンを接種できない場合に気を付けるべきこと

――RSウイルス母子免疫ワクチンを接種できない場合はどのようなことに注意するとよいのでしょうか。

庄司先生 RSウイルス感染症は赤ちゃんの場合、家族からうつることが多く、感染経路は咳、くしゃみ、会話で唾が飛ぶ飛沫や、ウイルスがついた手や物を介しての接触感染です。

そのためRSウイルス母子免疫ワクチンの接種の有無にかかわらず、風邪気味のときは低月齢の赤ちゃんにはなるべく近寄らないようにしましょう。上の子が風邪気味のときは、赤ちゃんと部屋を分けるか、赤ちゃんに近寄らないように言い聞かせましょう。

ママ・パパが風邪気味のときは、マスクを着用して、手洗いをしてから赤ちゃんのお世話をしてください。

RSウイルス感染症は風邪と症状が似ているので、普段から帰宅後は手洗い、うがいをする。人ごみに行くときはマスクをするなどの予防も心がけましょう。

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記事監修
庄司健介先生
国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 感染症科医師。教育研修センター センター長も務める。2005年宮崎大学医学部卒。専門分野は、小児科一般、小児感染症、小児臨床薬理学。

取材・構成/麻生珠恵

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