子どもの「求めているもの」を見つけに、所属先を増やす
――ご著書で「人間は環境の生き物」という言葉が印象的でした。子育てでは「いい学校に入ること=いい環境」になりますか?
嶋村さん(以下、同):求めているものに対して効果のあるところが「いい環境」でしょうね。だから、いいか悪いかはその子によって違います。
僕の主催するコミュニティでは「個人事業主、ビジネスオーナー、投資家になりたい」という人にとってはいい環境ですが、「サッカーで成功したい」という人にとっては、いい環境ではありません(笑)。

――子どもの求めているものが何か、どうしたら気づけますか?
見て、触れて、感じる。これに尽きます。
最近の若い子は車を持っていませんよね。でも、別に車がほしいと思っていなかった20歳の子でも、高級車に試乗させると「これがほしい!」って言います。そのためにがんばるようになる。
不動産も同じです。「家なんて住めれば何でもいい」と言っていた子も、私の家に来て実際に多様な価値観に触れることで、「こんな生き方もあるんだ」と視野が広がることがあります。
砂漠に住んでいる子どもが急に「サーフィンやりたい!」となりませんよね。たくさんのものを見せて、触れさせて、感じさせてあげるのがいいのではないでしょうか。
そのために、所属先を増やすことが大事になってくるんです。

――子育て中の親は時間も限られています。どう所属先を増やしたらいいですか?
お友だちに頼むのが早いですね。「あなたにとって素敵な人いる?」と聞いて、その人を巻き込んで、ワイン会、日本酒会、BBQを主催してみるとか。
家に呼ぶのに抵抗があれば、キッチンがついてるレンタルスペースを借りて、スーパーで買って持ち寄ればいい。マグロの業者を呼んで、解体ショーをするのも流行っていますよね。
喫茶店で初対面同士がいきなり会うのは気まずいので(笑)、お酒の力を借りるか企画に頼るか、どちらかを選ぶといいですよ。
あるいは、面白そうな人に連絡をすること。SNS、本、YouTubeなど、気に入ったらXのDMで「会ってください」って送るのも手です。
――なかなかハードルが高い気がしてしまいます……。
方法があっても、踏み出さない人が多いんです。ダイエットと一緒で、知っていてもやらない人が多い。
でも、半分詐欺みたいなギラギラ系の人たちには注意した方がいいですね。倫理観や道徳観って、人によって違うので。「この人の存在理由は何だろう?」と考えてみると、変な人にはひっかかりにくいんじゃないでしょうか。
苦手な人は「その存在がウエイトを占めていることが問題」
――学校や習い事など「離れたくても離れられない人間関係」に悩む場合は、どのように距離を取ればよいのでしょうか?
少し厳しいことを言いますが、小学3~4年生くらいになれば、子どもの人間関係は親と切り離していいんです。もう子どもじゃなくて、大人扱いするべきだから。
チームビルディングでも似ていて、新しく入ってきた子に「若いね、入ってきたばっかりだもんね」と言うと、それっぽく振る舞うんです。そうじゃなくて、コミュニティとマーケットにあなたが合わせるようにと(笑) 。ラーメン屋でまずいものが出てきたとき、「今日入ってきたばかりなんで」と店員さんが謝っても、通用しないですよね。
ある程度の年齢になったら、親は関与しない方が早く自立していきますよ。

――子どもに関係なく、職場や近所で苦手な人がいるときは、どうですか。
その人が人生に占める割合が大きくなってしまうから、悩むことになるんです。自分のコミュニティが1000人いれば、1~2人合わない人がいても、やっていけますよね。
つまり、苦手な人の存在がウェイトを占めてしまっている、自分自身の問題。相手は変えられないので、自分が変わる方が早いですよ。
子どもを変えたかったら、まず自分が変わることです。子どもは別人格であって、トロフィーでもジュエリーでもない。何かを成し遂げたとしても、がんばったのはその子であって、親ではないんです。
子どもの人格形成に親が関与する割合は「遺伝が半分、学校でどんな先生や先輩に出会ったかの環境が半分」っていいますしね。

――親ができることは、愛情を与えることとか……。
無条件で愛情ばっかり与えてもダメです(笑)。
たとえば「子どもがタンスからジャンプして、父親がそれを受け止める。何回かやって、あるタイミングで急に受け止めない」という、ユダヤの子育てで有名な話があります。
――それは何を教えているのでしょうか?
すべては自己責任、自分の身は自分で守る。親だとしても信じすぎてはいけない。「人を過信しすぎず、自分の身は自分で守ることも大切」ということです。
まあ、これはやりすぎだとしても(笑)、同じようなことは言えます。子どもが昼ご飯を出されたときに食べなくても、あとで親に「お腹すいた」って言えば、おやつをもらえるって知っていれば、ご飯なんて食べません。「さっき食べなかったでしょ、夜ごはんまで我慢しなさい」と言われて、初めて学習します。
お金は「広い世界を見るために使う」
――親のうち片方が厳しくしたくても、もう片方が甘くなってしまったり、夫婦で子育ての方針を決めるのは楽ではないですよね。
そういう、指揮系統がはっきりしないのが一番よくない(笑)。
ビジネスも同じで、新しいレストランを作るときに「カレー屋にしよう」「いや、オムライス屋にしよう」という意見が対立すると、結局は間を取って「カレーオムライス」という、中途半端なものができるんです。 そうして、組織はつぶれていく。
子育ても同じで、特にお父さんに多いのが、子どもに厳しくすると嫌われるから甘くする。するとお母さんも甘くなる。子どもはやさしい方になつくから、親同士で機嫌の取り合いになります。無難に済んでいるように見えて、子どもはダメになっていきます。
「育児のこの部分は母親に任せる」「勉強は父親が担当」とか、話し合った方がいいですね。

――子育てについて夫婦で話すと、イヤな雰囲気になりがちです……。
家庭はギクシャクしてるくらいがいいですよ。愛情ばかり受けてきた子って、空気が読めない子が多いので(笑)。
僕は複雑な家庭環境で育ったので「不用意なことを言ったら、お母さんの顔がひきつる」「今、この言葉を選んだ方がいいのか」ということを体験で学んできました。それが仕事でも生きています。
メンバーが「絶好調です!」と言っていても、目の動きがおかしいことに気づく。何か抱えているんだろうな、というのが肌感覚で分かるんです。仕事って、ひとりでできませんよね。必ず誰かとします。
人づきあいは、一見ネガティブな体験からも学ぶことができるんです。
――家族というコミュニティからも学んでいるんですね。
お金をどう使うかも、子どもは見ていますよ。稼いだお金をどう使うかって、その人の本質が出るので。
今度、宮崎県の児童養護施設の子たちを、ディズニーランドと東京観光に連れて行きます。みんな県外に出るのは初めてみたいです。スタッフさんもあわせて十数名くらい、予算は約100万円の予定です。
100万円あれば、高いお酒を飲みに行ったり、特別な買い物をしたりもできますが、 それより「こんな広い世界があるんだ」って見て、触れて、感じることをさせてあげたかった。
僕には子どもがいないし、「コミュニティ作りで夢を与える」という目標があるから、そうしました。みなさんも、ぜひ子どもと一緒に世界を広げるために、お金を使ってみてください。
著書をチェック
会社依存から脱却し、コミュニティを軸に「社会・人的・金融」の3資本を築く重要性を説く一冊。著者の実践をもとに、仲間づくりから事業化までの具体的手法を解説している。
お話を聞いたのは
10代で起業し、実業や不動産、映画ビジネスなど、ビジネス領域は多岐にわたる。 現在は投資家として、阪急阪神HD、サイバーエージェント、テレビ東京、朝日放送、オリコンなど数社の大株主であり、保有している株式の評価額は数百億円に達する。著書に『人生100年時代を生き抜くための億万長者のコミュニティ資本論』(プレジデント社)『となりの億万長者が17時になったらやっていること』(PHP研究所)など。
この記事を書いたのは
三菱UFJ銀行の法人営業、ユーザベースのセールス&マーケティングを経て独立。ビジネスやマネーの取材記事から、恋愛小説まで幅広く執筆。2025年よりフランスに拠点を移し、フランス企業の日本進出支援(ローカライズ)やフィクションの翻訳にも携わる。3児の母。
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