「真っ赤な嘘」はなぜ赤いの?【知って得する日本語ウンチク塾】

国語辞典編集者歴44年。日本語のエキスパートが教える〝知ってるようで知らなかった〟言葉のウンチクをお伝えします。

「赤」は「明」と同語源。明るい、明らかなという意味があった

「真っ赤な嘘」「真っ赤な偽物」などと言うときの「真っ赤」ですが、なぜ「赤」なのかご存じですか?

この「赤」は、全くの、はっきりしたという意味を表しています。「赤の」と「の」を付けた形で使われたり、接頭語として名詞の上に付けて使われたりします。「赤の他人」「赤恥」「赤裸」などです。色名である「赤」がそのような意味を持つのは、古くから明るい、明らかなことという意味があったからでしょう。そのため「あか(明)」と同語源の語だと考えられています。

「真っ赤な嘘」は「赤の噓」とも言いますが、ふつうは「真っ赤」と言う方が多いでしょう。この場合の「真っ赤な」は、ごまかしがきかないほどはっきりとしているさま、隠しようのないさまという意味です。

「まっ(真)」は接頭語「ま(真)」の下に促音が付いた形です。接頭語として、名詞、形容詞、形容動詞などの上に付いて、完全である、真実である、すぐれているなどの意を添えます。「まっ黒い」「まっ四角」「まっただ中」「まっ裸」「まっ正直」などがそうです。「まっ」は「ま」よりも語勢を強めた形で、後に続く語をさらに強調している意味合いを持たせています。

「真っ赤」は真実と結びつけて使われることもある

「真っ赤」は冒頭の例のように、「嘘」「偽物」などといったいつわりの事柄と結びつけて用いられることが多いのですが、真(まこと)の事柄と結びつけて使われることもあります。

江戸時代中期に柳沢淇園(きえん)が書いた随筆『独寝』には「地女は真実も真実、真赤な真実なるべき」という文章があります。「地女」は商売女に対して素人の女のことです。淇園は儒者で文人画家だった人で、大和(奈良県)郡山藩の重臣でもありました。ちなみに郡山城は、豊臣政権の時代には、今放送中のNHK大河ドラマの主人公・豊臣秀長の居城でした。

以下余談ですが、「赤」に関するウンチクを少々。

「赤」はアヲ・クロ・シロと並び、日本語の基本的な色彩語です。ただし単一の色に対応する名称というよりも、赤系統である色の傾向を示すために用いられていたようです。そのため漢字表記も多様で、この系統の色彩を表す漢字には「赤」のほかに、「朱・丹・緋・紅」などがあります。また、「くれない・に・あかね」といった語も使われていました。

多くの民族が赤系の色を好んで用いてきましたが、日本人も共通の感覚としてこの系統の色彩を好んできたことがこれらの語彙からわかります。

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記事監修

神永 曉|辞書編集者、エッセイスト

辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。

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