目次
キャンプは「習い事」。あえて教えない教育で生きる力を育む
――『できるキャンプアカデミー』が他のキャンプや自然体験活動と違う、最大の特徴は何でしょうか。
阪本さん:一つは、キャンプを単発のイベントとしてではなく、「習い事」として継続的に学べる点です。テニススクールや塾に通うのと同じように、毎月スクールに通っていただきます。大阪府を中心に公園など拠点のスポットがあり、毎月のスクールに加えて、夏休みなどには合宿もあります。
もう一つの大きな特徴が、「教えない教育」を実践していることです。
――「教えない教育」とは、具体的にどういったことなのでしょうか。
阪本さん:キャンプや自然体験には、火起こしなど危険が伴う活動もあります。一般的な体験プログラムでは大人がやり方を教えてその通りに進めることが多いですが、私たちはあえて答えをすぐに教えません。
例えば火起こしでも、「こうすれば火がつくよ」と最初から教えるのではなく、「どうしたら火がつくだろう?」と子どもたち自身に考えてもらいます。うまくいかなければ仲間と相談し、試行錯誤を繰り返しながら挑戦します。
もちろん安全面で必要なサポートは行いますが、大人は「先生」というより「伴走者」です。失敗も含めて子ども自身が経験することで、主体性や問題解決力、自ら考えて行動する力が育まれていくものと感じています。

小学生がコア層。異年齢交流の中で育まれるサポートの輪
――考える力が鍛えられそうですね。参加されているお子さんは何歳くらいが中心ですか?
阪本さん:いちばん多いのは小学校2~3年生ですが、対象は年長から小学校6年生までです。卒業した後は、中学生リーダーとして活動に参加することもできます。まだ開設して2年ほどなので卒業生は3人くらいですが、これから増えていくのが楽しみです。
――初めて参加する子や、親と離れるのが不安な子もいるかと思います。そういったお子さんへのサポートはどのようにされていますか。
阪本さん:指導員には元小学校教員や幼稚園の先生、キャンプインストラクターや防災士など、プロの指導員がそろっていますので、一人ひとりに合わせたサポートはもちろん可能です。
ただ、私たちが何よりも大事にしているのは、大人がサポートするのではなく、仲間と一緒に安心できる環境を作ることです。活動はグループごとに行い、必ず子どもたちの中からリーダーを複数人任命します。グループに初めて参加する子がいたら、「その子に誰が声をかけるか」「どんなサポートをするか」を、リーダーを中心に子どもたち自身が話し合って決めるんです。

――年上のお子さんが自然と下の子をサポートするような関係性が生まれるのですね。
阪本さん:そうです。中には、初めての場所が怖くて泣き続けてしまう子もいます。それでも、まずは他の子どもたちが手を引っ張ってあげるなど、子ども同士での解決を促します。私たち大人が介入するのは、本当にどうしようもなくなったときの、最後の最後です。これまでにも泣いてしまった子はたくさんいましたが、最終的にはみんな仲間の中に混ざって楽しく活動してくれています。
「自分でできた」経験が自信に。失敗から学ぶ「生きる力」
――このスクールを通じて、子どもたちに特に身につけてほしい力は何でしょうか。
阪本さん:今の子どもたちは、大人が先回りしてしまうことで、自分で考えて挑戦する機会や、失敗する経験が非常に少なくなっていると感じます。
自然体験では、火がつかなかったり、テントがうまく立たなかったり、ご飯を炊いたらべちゃべちゃになってしまったり…など失敗がつきものです。それでも、自分たちに任せてもらえた、「自分でできた」という経験の積み重ねが、子どもたちの大きな自信につながると考えています。
また、テント設営や調理では必ず役割分担が生まれます。一人だけが頑張ってもうまくいきませんから、その中で「自分は何をすべきか」「困っている仲間をどうサポートするか」を考えるようになります。

――チームで連携する力も育まれるのですね。
阪本さん:はい。こうした経験は、将来大人になって働く上で必要になる「自分で考えてやり切る力」や「チームで連携する力」、いわゆる「生きる力」につながると思っています。活動を通じて得られる経験の積み重ねが、将来の子どもたちを支える土台になるのではないかと。
――実際に、子どもたちの成長を感じる場面はありますか?
阪本さん:たくさんあります! 実は私の3年生の娘も通っているのですが、もともと失敗を嫌って新しいことに挑戦したがらないタイプでした。しかし、スクールでリーダーを任されたり、やったことのない課題に取り組んだりするうちに、今では何でも挑戦するようになりました。
また、スクール生には不登校のお子さんも少なくありません。「子どもに自立してほしい」という思いでいる保護者の方が多いのですが、そうした子たちがスクールでリーダーシップを発揮したり、復学して学校に通えるようになったりするケースもあり、私たちも子どもたちの成長を実感しています。
原点は自身の原体験。「誰でも自然体験ができる社会を」

――阪本さんご自身がこのスクールを開校されたきっかけは何だったのでしょうか。
阪本さん:私自身が神戸の山の中で育ち、学校が終わるとランドセルを放り投げて友達と山へ遊びに行くような子ども時代を過ごしました。親から「行くな」と言われていたダムに行ってみたり(笑)。
決して推奨できるものではありませんが、そうした遊びの中で、これ以上行くと危ないという感覚を身につけたり、仲間とトラブルが起きても自分たちで折り合いをつけたりと、結果的にそれが自分の「生きる力」の土台になったと、大人になってから感じています。
しかし、自分の子どもを含め、今の子どもたちにはそうした自然の中で遊ぶ機会がほとんどありません。学校教育では林間学校くらいしか機会がないのが現状です。
――確かに、昔に比べて外で自由に遊べる場所も減っているように感じます。
阪本さん:そうなんです。また、いざ家族でキャンプをしようと思っても、道具をそろえるのにお金がかかりますし、時間的な余裕も必要です。いつのまにか、自然体験が一部の家庭だけの「高級品」のようになってしまっている。
私は、誰もがもっと気軽に自然体験ができる社会を作りたいと思いました。そこで、塾やテニススクールのように「習い事」として通える形にしたのです。活動場所も、山奥のキャンプ場ではなく、地域にある緑地公園など、自転車で行けるような身近な場所をフィールドにしています。
火やナイフも「本物」を。危険と向き合い、正しく使う術を学ぶ
――子どもたちに特に人気のプログラムはありますか。
阪本さん:やはり火を扱う活動は、子どもたちがとても喜びますね。薪割りや、大人が使うような本物の道具や火を扱うプログラムは特に人気です。今はIHコンロのご家庭も多く、そうした子どもたちは火を見る機会がありません。この間、マッチで火起こしをしたのですが、ほとんどの子がマッチそのものを知りませんでした。
――確かに、マッチの実物を見せたことはないかもしれません…。
阪本さん:火や包丁は、普通は大人が使うものですよね。それを自分たちが使えるというのは、子どもたちにとって大きなやりがいに感じるようです。ナイフを使うワークショップなどもあります。
――危険な道具を扱うことに、不安はありませんか。
阪本さん:もちろん、ただやみくもに使わせるわけではありません。火やナイフがいかに危険なものかをきちんと理解してもらった上で、安全に配慮しながら正しく使うことで、それらが非常に便利なものであることを知ってもらうのが狙いです。
危険なものをただ遠ざけるのではなく、きちんと向き合う機会を提供しています。その結果、家に帰ってから包丁を使って料理を手伝うようになった、という声も保護者の方からよく聞きます。

親子キャンプも始動。サマーキャンプ選びで親が確認すべきポイントとは
――保護者の方からの反響はいかがですか?
阪本さん:実は、入会されるご家庭の保護者の9割がキャンプ未経験者なんです。「子どもに体験させてあげたいけれど、自分たちではできないから」と預けてくださる方が多く、「親向けのキャンプスクールもやってほしい」という声をたくさんいただきます。
そこで、秋からは親子で参加できるキャンププログラムを新しく始める予定です。昨年一度試したのですが、子どもたちが親に「テントはそこを持って!」「椅子はこうやって立てるんだよ」と教えている姿が見られて、とても印象的でした。
――子どもが親に教える経験、貴重ですね。夏はどのようなプログラムがあるのでしょうか。
阪本さん:滋賀の琵琶湖でサップをしたり、イカダ作りをしたり、魚のつかみ取りをしたりと、夏ならではの活動をたくさん用意しています。つかみ取った魚や自分たちで切ったお肉でバーベキューもしますが、火起こしから調理まで、大人は一切手伝わず子どもたちだけで行います。
――最後に、これからサマーキャンプや野外体験を選ぼうとしている保護者の方へ、アドバイスをお願いします。
阪本さん:世の中にはサマーキャンプツアーがたくさんあります。ただプログラムが楽しそうというだけでなく、その団体がどんな教育理念を持っているのか、なぜ自然体験が必要だと考えているのか、といった背景をきちんと確認することをおすすめします。
そして何より大切なのが、安全管理体制です。子ども何人に対して指導員が何人つくのか、アレルギー対応はしてもらえるのか、怪我をした場合に看護師は常駐しているのか。こうした情報はウェブサイトに書かれていないことも多いので、事前にしっかりと確認することが、後悔しないプログラム選びにつながると思います。
ぜひ、お子さんに合うと思うサマーキャンプに参加できるよう、リサーチしてみてください。
――サマーキャンプが増えているからこそ、しっかり調べて選びたいですね。「できるキャンプアカデミー」は大阪・奈良で展開していますが、今後拠点が増えることを楽しみにしています!
■「できるキャンプアカデミー」について詳しくはこちら>>
こちらの記事もおすすめ
お話しを伺ったのは
取材・文/HugKum編集部