みんなで作るから楽しい! キャンプは最高の「食育」体験
――キャンプの魅力は、どんなところにあると思いますか?
速水もこみちさん(以下、速水さん):僕自身、そんなにキャンプ上級者というわけではないので、気軽に行けるデイキャンプが多いのですが…。外に出て、いつもと違う空気の中でご飯を作って食べる、それだけでリフレッシュできるし、気持ちのいい場所でおいしいものを囲んで話す時間って、本当に幸せだなと感じます。

――キャンプでは、やはり料理担当は速水さんですか?
速水さん:もちろん作ります!
レシピも持っていきますが、ただ作って「できました」「おいしいね」で終わりではつまらない。せっかくなら、みんなでスパイスをかけてみたり、焼いたお肉をほぐしたり、「え、これ煮込んだと思ったら崩しちゃうの?」なんて驚きながら作る時間を楽しみたいんです。そうやって一緒に作って、味を確かめ合う瞬間がいちばん好きですね。

――親子でキャンプに行くとしたら、やっぱり“みんなで作る”のがポイントですか?
速水さん:そう思います。外で一緒に作ることは、ある意味「食育」の一環でもあると思うんです。
下ごしらえして持っていくのもいいけれど、地元の食材を使って作ったり、味見し合ったりすることで、同じ味覚を共有できる。それがキャンプ料理の醍醐味じゃないかなと。子どもにとっても、「自分が作った料理を家族みんなで食べる」という体験はきっと特別ですよね。
――少し失敗しても、それも思い出になりますよね。
速水さん:そう、失敗も正解のひとつ。つまみ食いしたり、ちょっとケンカしたり、そんなハプニングも楽しいんです(笑)。

速水さん:僕は家で料理をするときも、必ず味見をしてもらうようにしています。お互いの好みをすり合わせながら「みんなが好きな味」に近づけていく…その過程に、家族が自然と仲良くなっていくヒントが隠れているように思います。
今は、家族みんなで食卓を囲む時間も少なくなっていますよね。だからこそ、キャンプのように外で一緒に作って食べる時間が、改めて“つながり”を感じられる大切な機会になるはずです。
子どもと一緒に作れる簡単メニュー&工夫とは

――今回発売されたキャンプ料理本「最高のキャンプ飯」には、本格的なお料理がたくさん掲載されていますね。
速水さん:少し難しそうに見えるかもしれませんが、実際にやっていることはとてもシンプルなんです。
例えば「豚肉にフルーツのソースを合わせるとおいしいんだ」とか、「これがないなら別の食材で代用してみよう」といった見方で十分。もちろんレシピ通りに作ってもらえたらうれしいですが、肉の厚みを変えたり、スパイスを減らしたりと、アレンジすることで新しい発見もあります。
そんなふうに試していくうちに、家庭の“新しい定番レシピ”が生まれることもあるかもしれません。
――これからの季節に、親子で挑戦しやすいおすすめメニューはありますか?
速水さん:寒くなってくるこの時期は、温かいスープがおすすめです。例えば「チキンスープ~台湾スタイル~」。焼いて煮込むだけなので、難しい手順はひとつもありません。

《材料(3~4人分)》
・丸鶏(2kg程度)…1羽
・塩・こしょう…適量
・五香粉(ウーシャンフェン)…少量
・サラダ油…大さじ4
【A】水…2ℓ
長ねぎ(5〜6cm長さに切る)…適量
しょうが(薄切り)…適量
《作り方》
①鶏に塩・こしょう、五香粉をすり込む。スキレットにサラダ油を熱し、肉の表面を全面焼く。
②煮込み鍋に【A】を入れて沸かし、①を入れて3〜4時間煮込む。
③煮上がったら鍋の中で崩して盛り付ける。
速水さん:僕は台湾料理が好きで、このスタイルにしたのですが、レシピ通りに五香粉を使って、ちょっと異国の香りを楽しんでみてもいいし、もし苦手なら塩とこしょうだけでも十分おいしい。丸鶏を使うとキャンプらしい豪快さが出ますが、手羽元でも手羽先でもOK。気軽に挑戦してみてください。
――「こうしたらどうなるだろう?」みたいな実験的な要素が加わると、子どももより楽しめそうですよね。
速水さん:そうだと思います。例えば「パスタ・ポモドーロ」という簡単なトマトパスタもあるんですが、ポイントはバジルを素揚げすること。バジルを揚げるとパリッとした食感が加わって、シンプルなパスタにぐっと面白さが出るんです。揚げる前と後で食べ比べてみるのも楽しいですよ。

《材料(2〜3人分)》
・スパゲッティーニ(1.6㎜)…200g
・ミニトマト…20個
・にんにく(薄切り)…3〜4片
・鷹の爪…2〜3本
・オレガノ(ドライ)…適量
・塩・こしょう…少量
・オリーブオイル…60㎖
・バジル…2〜3枚
《作り方》
①パスタは塩ゆで(袋の表示を参考に)する。
②スキレットにオリーブオイル、にんにく、鷹の爪を入れて、香りと辛みが出るまで炒めたら、スキレットの端に寄せる。
③空いた端のスペースにバジルを入れ、素揚げし、取り出す。
④半分に切ったミニトマトを入れて軽く崩しながら炒め、オレガノを加えたら弱火にし、とろりとするまで煮る。
⑤パスタのゆで汁を50㎖ほど入れて乳化させ、塩・こしょうで味を調える。ゆであがったパスタを絡めて盛り付ける。飾りに素揚げしたバジルをのせる。
速水さん:あと、素揚げつながりで言うと、ケッパーを揚げるのもおすすめです。油に入れるとパンッと実が開いて、香ばしさが増すんです。ただし、揚げる前に水気をしっかり取ること。お子さんと一緒にやるときは注意してください。
――凝ったソースもたくさん登場していますね。
速水さん:ペッパーソースやマッシュルームソースなど、簡単に作れるソースをいくつか知っておくと、ただ焼いたお肉でも飽きずにおいしく食べられます。
あと、例えば「いんげんとアンチョビのサラダ」に使っているソース。これをベースにすれば、シーザーサラダ風にもアレンジできます。掲載している料理だけじゃなく、いろんな料理にかけてみてほしいですね。

《材料(4〜5人分)》
・さやいんげん…200g
・アンチョビ…5枚
【A】卵黄…2個
マヨネーズ…100g
ディジョンマスタード…30g
バター…20g
にんにく(すりおろし)… 1片
イタリアンパセリ(みじん切り)…適量
白ワインビネガー…大さじ3
オリーブオイル…大さじ3
塩・こしょう…少量
《作り方》
①さやいんげんはヘタを切り落とし、グリルでこんがり焼く。
②【A】をボウルに入れて混ぜる。
③②に①を入れて和えたら器に盛り付け、アンチョビをのせる。
お気に入りの器とスパイスで、食の時間をもっと豊かに
――お料理だけでなく、食器や盛り付けのセンスも印象的です。
速水さん:料理に合わせる食器も、すべて自分で選んでいます。同じ料理でも、どんな器に盛るかでおいしさの見え方や満足感が変わってくるんですよね。器や盛り付けを通して、視覚からおいしさを感じる、それも食育のひとつだと思います。
何より、「このお料理にはどんなお皿が合うかな」と考える時間そのものが、心を弾ませてくれる。そんなところも含めて“食の時間”を味わってもらえたらうれしいです。

――使いやすいお皿の色や形で、おすすめはありますか?
速水さん:まずは白いお皿。これは間違いないですね。形はシンプルに、丸いものがおすすめです。この本に登場する料理も、ほとんどが丸いお皿に盛っているので、スタイリングの参考になると思います。
あとは黒やグレーなどの落ち着いた色も使いやすい。季節によって質感を変えてみるのも素敵です。でも、最終的には自分が好きな器を使うのがいちばん。ピンクが好きなら、ピンクのお皿ばかりでもいいと思います(笑)。
――お皿以外に、キャンプ飯を+αでもっと楽しめるアイテムはありますか?
速水さん:スパイスもキャンプ飯を盛り上げてくれるアイテムです。家で使い切れずに残っているスパイスって、結構ありますよね。僕はそういう“賞味期限が近いスパイス”をかき集めて、少しずつブレンドしてオリジナルスパイスを作るんです。
ボウルに少量ずつ入れて塩こしょうを足し、肉や野菜に振りかけるだけで、味にぐっと深みが出ます。自分だけのスパイスを作ると、香りの違いに驚いたり、新しい発見があったり。親子で試してみるのにもぴったりですよ。
家族と一緒に、五感で味わう幸せな時間をキャンプで

――速水さんは犬を飼われているそうですね。一緒にキャンプに行ったりも?
速水さん:行きます、行きます! ワンちゃんご飯も作りますよ。結構気合を入れて(笑)。キャンプのときは、赤身肉を鉄板で焼いて、塩分のないチーズや野菜を少し加えたり。
外だとワンたちもテンションが上がるんですよ。嗅覚が優れているので、焼いたお肉の香りにも大興奮です。
――家族一緒にみんなで過ごすキャンプは、やっぱり楽しいですよね!
速水さん:大切な人や家族と外でコミュニケーションを取りながら、何かを一緒に作る…それってすごく大事なことだと思います。キャンプは、そんな時間を自然の中で共有できる、最高のコミュニケーションのひとつですね。

速水さん:包丁で食材を切る音、鉄板でジュッと焼ける音、火がパチパチとはぜる音。そうした音の記憶も含めて、キャンプ飯は五感で味わえる。そして寝る前にその光景を思い出して、「また行きたいな」と感じたりして。
家族みんなで笑顔になれる時間に、この本を添えてもらえたらうれしいですね。
作り方はシンプル、焚き火で作ることで一気においしく仕上がる、アウトドアならではの豪快なレシピが満載の一冊。キャンプに行ってから翌日帰るまでのシーン別におすすめレシピを紹介しています。香りや焼ける音など、料理の工程を仲間と一緒に五感で楽しむキャンプ飯を提案。彩りを意識した盛り付けにもこだわった、美しい料理写真も見どころです。
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インタビューカット/黒石あみ その他写真/三浦孝明 取材・文/篠原亜由美
