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親子旅で「家族の添乗員」をやめたら、子どもが変わった!
――本の「はじめに」の中で「家族の添乗員をやめた」と書かれていました。尾石さん親子の旅が変わるきっかけとなったこのエピソードについてお聞かせください。
尾石さん:私はもともと、仕事でもプライベートでも準備万端を心がけるタイプでした。ですから旅行の際も、子どもが退屈しないように、困らないようにと、まるで添乗員のように準備をしていたんです。「子どもが旅先でご飯が食べられないと困るから、ふりかけを持って行こう」とか、「もしものために予備の荷物を持って行こう」とか…。
でも、そうやって万全に整えるほど、旅が億劫に感じるようになった自分に気づいたんです。それで、添乗員のように先回りするのはやめようと考えるようになりました。
――「添乗員」をやめてみて、親子での旅はどのように変わりましたか?
尾石さん:以前はスケジュール通り行かなかったり、子どもが退屈したりすると「失敗」のように感じていました。でも、本来は旅に成功も失敗もないんです。
スケジュール通りに行かなくても、その土地の楽しそうなことを調べれば、旅は成り立つし、子どもが退屈したらその退屈を楽しめばいいんですよね。失敗もまた旅の要素のひとつであって、全部含めて旅なんだと考えられるようになりました。
――お子さんにも変化はありましたか?
尾石さん:親が何でも用意してくれる世界にいると、子どもは常に「サービスを受ける側」になってしまうんです。「添乗員をやめます!」と宣言したわけではありませんが、親の行動が変わることで、子どもも変わらざるを得なくなるんですね。「お母さんがふりかけを持ってきてくれないなら、次は自分で持って行こう」「退屈だけど、何か遊べるものはないかな」と考えるようになりましたね。
観察力が育まれる「まなざし旅」を。子どもにも大人にも新たな発見がある
――本のキーワードとなっている「まなざし旅」について教えてください。

尾石さん:本の中では、旅を通じて観察力がおのずと育まれる旅のことを「まなざし旅」と呼んでいます。一般的に旅行というと「どこへ行く」「何を見る」「何を食べる」といったことが中心になりますが、「まなざし旅」の場合は、その旅を通して「子どもが何を見ているのか」とか、「私がそこで何を感じたのか」といったことに重きを置いています。
――親にとっての発見もあるのですね。
尾石さん:そうですね。ひとつは自分の価値観への気づきです。例えば、旅先で予定通りに行かなかったり、予想外のことが起こってすごく戸惑ったりしたとします。そうすると「私は予定通りに進まないとイライラするんだな」と、普段は気づきにくい自分のクセが見えてくるんです。
もうひとつは、子どもを見る目です。学校と家を行き来する日常では、「うちの子はこういう子」という固定観念ができあがってしまうものです。でも旅先では、普段の子どもとは違う一面を観察することができます。家事に追われることのない旅先だからこそ、親が余裕を持って子どものことを観察できるんですよね。親が何でもお膳立てせず、ちょっとしたトラブルがあるほうが、子どもの違った側面が見えることもあります。
まなざし旅のポイントは「スケジュールは詰め込まない」「荷物は少なく」
――旅行先はどんなふうに決めていますか?
尾石さん:親も一緒に楽しめる場所を選んでいます。親が楽しくないと「連れて行ってあげている」という気持ちになってしまいますよね。
小学校中学年くらいからは、計画の段階から子どもを巻き込むのもいいですよ。我が家も中2の長男に「この部分の計画を立ててね」「必要なものを調べておいてね」と任せています。子どもは頼られると張り切ってくれますし、「自分もできる!」という自己効力感にもつながっていると思います。
――旅の計画やスケジュールのポイントを教えてください。
尾石さん:私がおすすめするのは、メインの予定を1日1つに絞ることです。次から次へと予定が詰まっていると、途中で子どもが水たまりや石ころ遊びに夢中になってもすぐに切り上げさせたくなってしまいますよね。でも、余白があればいくらでも付き合ってあげられます。
そういう彼らをじっと観察するのも日常ではなかなかできないことなんです。旅は疲れやすいので、スケジュールに余白があれば途中でいったんホテルに戻って休んでから午後に出かける、という選択もできます。
もうひとつは荷物を少なくすること。荷物が多いとパッキングも、宿での荷ほどきも、帰ってからの洗濯も大変で、それだけで疲れてしまいます。荷物が少なければ、移動がラクなうえ、判断も早くなり、旅にも集中できます。
我が家では子どもたちも自分の荷物は自分で準備しています。小さい子なら、持って行くおもちゃをひとつ選ぶだけでもOKです。持ち物を自分で選ぶことで、旅への心構えが変わるんです。
――計画を立てたり、自分の荷物を準備したりと子どもにも役割があると、積極的に旅に参加できそうです。
尾石さん:旅先では、子どもに祖父母へのお土産選びを任せることもあります。私は子どもにお土産を選んでもらったら、手紙を添えて旅先からレターパックで送っています。
お土産が届くと、おじいちゃんおばあちゃんから「このお菓子、選んでくれたの?」と電話がかかってくることも多いかと思います。そうすると、子どもは「自分の行動で喜んでくれる人がいる」と実感できる。絵はがきも、帰ってから書こうとすると忘れてしまうので、旅先でその場で書いて送ってしまうといいですよ。
旅の間、睡眠リズムは崩さず、食事はこだわらない
――旅の中での「こだわり」があれば教えてください。

毎日のリズムを崩さないのが日常に戻りやすくするコツ 写真:『旅をすればするほど子育ては楽になる』より
尾石さん:就寝・起床の時間は崩さないように意識しています。旅先で睡眠時間が乱れると子どもは体調を崩しやすく、帰ってから学校を休むことになったりしてしまいます。また毎日の宿題のように「身に付けるのがちょっと大変で、崩れると一気に崩れるようなこと」は、できるだけ旅の中でも続けるようにしています。
反対に、こだわらないのは、食事の内容や時間、量ですね。旅先は普段と違う食事になりがちなので、1日トータルで量をコントロールできればよいと考えています。
――旅行から帰ってくると、慌ただしく日常に戻りがちですが、余韻はどう楽しんでいますか?

尾石さん:旅行から帰ってきた日か、翌日の夕飯時に「旅行でよかったこと」のトップ3を各自で発表して、アルバムに載せるための写真を選びます。子どもが選ぶものは「それ!?」というものもありますが(笑)。それらを集めたアルバムを夫が手配し、本棚に置いています。今はデジタルでもできますが、手にとって見るものの方が記憶に残るので、家族の視界に入る場所に紙のアルバムを置いておくということを意識しています。
親が気を回しすぎないことで、子どもが自分で楽しみを見つけられるように
――旅先で、子どもに構いすぎそうになってしまうときはどうしたらよいでしょうか?
尾石さん:子どもが退屈そうにしていても、親が手を出さないということが大事だと思っています。つい「どうしたの?」と声をかけたり、何かしてあげなきゃと思ったり、スマホを渡してしまうこともありますよね。でも、そういった大人の行動によって、子どもは「暇そうにしていれば、誰かが声をかけてくれるし、何かしてくれる」と学習してしまっているんですよね。
相手が何かしてくれなければ、子どもは勝手に遊びを作り出します。だから、何かしてあげたくなるところをぐっとこらえて待っておくのがよいと思います。
――日常の生活においても大切なことですね。

尾石さん:そうですね。子どもはだんだん自分で自分の暇を埋められるようになるし、楽しみを見つけるようになって行くと思います。
例えば、我が家の子どもたちはあまりタブレットやYouTubeを見ないんです。「規制しているわけでもないのに、なぜですか?」とよく聞かれるので考えてみたのですが、「タブレットを見れば自分の退屈が埋められる」という成功体験があまりないんだと思います。流れてくる動画を受動的に見続けるより、自分で遊びを作り出すとか、自分で何かをするということを自然に選んでいるような気がします。
――最後に、まなざし旅を続けて感じた、日常での変化を教えてください。
尾石さん:日常生活の中で、子どものことを決めつけてしまったり、「どうせこういうふうに考えてるのだろう」と勝手に判断して怒りたくなってしまったりするとき、立ち止まることができる視点が自分の中にできたことです。それは旅によって、「この子はこういうことができるんだ」「こういうことに興味あるんだ」と、子どもの新しい一面に気づかされたからだと思います。
もうひとつ、親が間違える姿を見せられるのも旅ならではです。電車を予約したつもりが1本違っていた、なんてこともよく起こります。そこから、間違えたときにどう対応するのか、間違えた人に対してどんな対応ができるのかということも学べますよね。「大人だって完璧じゃない」ということを見せられるのもよい経験になっていると思います。
――ありがとうございました。お話を伺うほどに、旅と子育ては共通点がたくさんあるということに気づかされました。子連れの旅はあれこれと先回りしがちですが、次の旅行では思い切って「添乗員をやめてみる」という小さな一歩を踏み出してみたいと感じました。
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1泊2日でも長期旅でも。予定を詰めず、感じたままを大切にする〈まなざし旅〉で、帰宅後の日常がちょっと変わって見える。
中学生と小学生の2人の子どもを育てながら、これまで43回の子連れ旅を重ねてきた著者。なぜそんなに旅に出るのか? それは、旅先でのいつもと“ちがう”ことが、気づけば観察力を上げるきっかけになり、 “いつも”の日常に変化をもたらしてくれるからだと言います。本書では、子どもと旅に出る意味や考え方、スケジュールの作り方、持ち物のヒントに加え、国内・国外/日帰りや1泊の短い旅の具体例も写真とともに掲載。読んで、眺めて楽しい本です。
お話を伺ったのは
(株)POSPAM代表。大学卒業後、外資系メーカーに16年間勤務。2020年に退職し、2年間のサバティカルタイムを経て独立。現在は働きながら、大学院博士課程(感性学)に在籍中。2013年、2016年生まれの男児2人の母。 音声メディアVoicy「学びの引き出し はるラジオ」ではトップパーソナリティとして活躍。ヨガスタジオ「ポスパム」を主宰するほか、母と子のシェアコスメ「soin(ソワン)」や「飲むわたしケアFemCa」「ご自愛ソックス」などを手がける。女性の健康を軸に、日常に無理なく取り入れられるセルフケアプロダクトやサービスを手がけている。著書に『「40歳の壁」を越える人生戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『自分らしく生きている人の学びの引き出し術』(KADOKAWA)、『からまる毎日のほぐし方』(扶桑社)など多数。
この記事を書いたのは
音楽大学卒業後、出版社勤務を経て、現在はフリーライター・編集者として活動中。小学生2人の母。主に教育系、不登校への取り組み、著名人インタビューなどを執筆しています。子育ての中で感じた疑問や発見を活かしながら記事を作成することを心がけています。