韓国では「金・朴・李」という苗字だけで約半数を占める? 苗字の種類が少ないのはなぜ? 【親子で語る国際問題】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は、お隣の韓国で「金・朴・李」という苗字が多い理由を、小学生にも分かるように解説します。

「金・朴・李」の3大苗字が多い韓国

韓国のドラマやアイドルグループを見渡すと、「金(キム)」「朴(パク)」「李(イ)」という苗字を驚くほど頻繁に目にすることに気づくでしょう。

実際、日本には10万種類以上の苗字があると言われていますが、お隣の韓国では全体の苗字の数がわずか数百種類ほどしかありません。

では、本当に「金・朴・李」の3大苗字だけで国民の過半数を占めているのでしょうか。そして、なぜこれほどまでに韓国では苗字の種類が少なく、特定の苗字に集中しているのでしょうか。その歴史的背景と驚きの理由を紐解いていきましょう。

トップ3の苗字で約45%弱を占める

まず、最初の疑問である「3つの苗字で国民の過半数を占めているのか」という点についてです。結論から言うと、多くを占めているけれど、過半数には満たない、というのが事実です。

韓国の統計庁などによりますと、国内で最も多い苗字は「金」で全体の約2割強を占めています。次に多いのが「李」、その次が「朴」となっています。これらトップ3の苗字をすべて合計すると、韓国の全人口の約45%弱に達します。

過半数とまではいかないものの、人口のほぼ半分がこの3大苗字のいずれかを名乗っているというのは、世界的に見ても極めてめずらしい状態だと言えます。ちなみに、4位の「崔(チェ)」と5位の「鄭(チョン)」を加えた上位5つの苗字で見ると、なんと国民の半分を大きく超えてしまいます。

苗字を持てるのは貴族だけだった

では、なぜこれほどまでに苗字の種類が少ないのでしょうか。その最大の理由は、韓国の歴史にあります。かつての朝鮮半島では、苗字を持つことができるのは王族など特権階級の貴族だけでした。農民など社会的に身分が低いとされてきた人々には、苗字そのものが存在しなかったのです。

しかし、時代の流れに沿って風向きが変わります。高麗時代や朝鮮王朝時代、国が財政難に陥ると、政府は富裕な庶民に対して、お金や穀物と引き換えに貴族の身分や家系図を売るようになりました。また、没落した貴族が戸籍を偽造して庶民に家系図を売るようなことも横行しました。

このとき、人々がこぞって欲しがったのが、由緒正しく権威のある「金」「李」「朴」といった王族や大貴族の苗字だったのです。

どうせ大金を払って苗字を買うのであれば、誰も知らないマイナーな苗字よりも、一目で名門だとわかる苗字を選びたいと考えるのは自然な心理でしょう。こうして、もともとは一握りのエリートのものだったブランド苗字が、徐々に社会全体へと広がっていきました。

1894年に身分制度が廃止。すべての国民が苗字を持つことに

そして、この流れに決定打を与えたのが、19世紀末から20世紀初頭にかけての近代化です。1894年に従来の身分制度が完全に廃止され、1909年にはすべての国民に苗字を持つことを義務付ける法律が施行されました。

これにより、それまで苗字を持っていなかった多くの人々が一斉に苗字を登録することになりました。彼らの多くは、自分がかつて仕えていた主人の苗字をもらったり、やはり当時から人気のあった「金・李・朴」などの名門の苗字を名乗ったりしました。

こうして、身分制度の解放とともに特定の苗字への集中が爆発的に進み、現代の極端な苗字の分布が完成したのです。

韓国の苗字の少なさは、単なる偶然ではなく、過酷な身分社会を生き抜いた人々が、より高いステータスを求めて選択を重ねてきた歴史の証明でもあります。

一見すると誰もが同じ苗字を持っているように見える背景には、平等な社会への憧れと、激動の時代をたくましく生き抜いた先人たちの足跡が隠されているのです。

この記事を書いたのは

国際政治先生 国際政治学者

国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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