夏休みの自由研究のヒントにも! 京野菜・九条ねぎ農家に教えてもらった「野菜が食卓に届くまで」子どもが喜んで食べるねぎレシピも

九条ねぎ

スーパーの野菜売り場に並ぶ、みずみずしい「九条ねぎ」。京都の伝統野菜でありながら、今や一年中購入できる身近な野菜ですが、どのように育てられ、私たちの食卓まで届けられているのか、考えてみたことはありますか?

この記事では、京都を代表する京野菜・九条ねぎを生産する、京都府久世郡久御山(くみやま)町の「株式会社 村田農園」を訪ね、お話を聞いてきました。

一本の九条ねぎには、自然と向き合う農家さんの知恵や工夫がたくさん詰まっています。その秘密を知れば、いつもの食卓が少し違って見えるかもしれません。夏休みの自由研究や食育にもぴったりの内容です。

記事の最後には、野菜が苦手な子どもにもおすすめの「九条ねぎたっぷりのクリームオムライス」のレシピも紹介します。親子で「野菜が食卓に届くまで」の背景にある物語をのぞいてみませんか?

そもそも「九条ねぎ」って、普通の「ねぎ」と何が違うの?

京都を代表する京野菜のひとつ「九条ねぎ」。名前を知ってはいても、「普通のねぎと何が違うの?」と思う人も多いのではないでしょうか?

実は、スーパーでよく見かける白ねぎ(長ねぎ)は、土を寄せて育てた白い部分を主に食べる「根深ねぎ」の仲間。一方、九条ねぎは青い葉の部分まで美味しく食べられる「葉ねぎ」の仲間です。

九条ねぎ
九条ねぎ

京都では昔から「ねぎ」といえば九条ねぎを指すほど親しまれ、うどんやそばの薬味はもちろん、すき焼きや鍋料理、焼き物など、さまざまな料理に使われてきました。

九条ねぎの魅力は、やわらかな葉と、とろりとした甘み。葉の内側にある「ぬめり」が甘みやうま味のもとで、霜が降りる冬になると、寒さから身を守るためにさらに糖分を蓄えるため、一年の中でも特に美味しい季節を迎えます。

歴史も古く、平安時代にはすでに京都・九条村(現在の京都市南区付近)で栽培されていた記録が残っています。その後、市街地の拡大に伴って栽培地は京都府南部などへ広がり、現在では久御山(くみやま)町も九条ねぎの一大産地となっています。

今回訪ねた株式会社 村田農園も、その久御山町で九条ねぎを育て続ける農園の一つです。

農家さんに聞いた! 九条ねぎが育つまで

スーパーなどでは一年中見かける九条ねぎですが、実は季節によって育つスピードは大きく変わるそうです。

株式会社 村田農園では、まずハウスで苗を育て、畑の準備が整ったところで植え替えをします。この作業を「定植(ていしょく)」といいます。

定植してから収穫までの期間は、季節によってさまざま。九条ねぎが元気に育つ15〜25℃ほどの時期なら、約2か月ほどで収穫できます。一方、冬は成長がゆっくりになるため、収穫まで5〜6か月かかることもあるそうです。

九条ねぎ

さらに驚いたのは、暑すぎても成長が止まってしまうこと。

「35℃を超えるような暑さになると、ねぎも『これ以上大きくなったら危ない』と感じるのか、成長を止めてしまうんです」

そう教えてくれたのは、株式会社 村田農園の代表取締役・村田正己(むらた・まさみ)さん。人だけでなく、野菜も暑さに耐えながら生きていることに改めて気づかされました。

左が村田農園の村田正己さん。
一番左から代表取締役の村田正己さん、
従業員の松下さんと山口さん。お二人は九条ねぎの生産管理を任されています。

夏は農家さんにとって一年で最も苦労する季節だといいます。特に8月中旬から秋にかけては収穫量が減りやすくなるため、村田農園では暑さの影響を少しでも和らげるために、標高の高い山間部でも九条ねぎを育てているそうです。季節によって場所を変えて栽培することで、一年を通して安定して九条ねぎを届ける工夫をされていることがよくわかります。

普段、私たちが何気なく手に取っている、九条ねぎ。しかし、その一本の裏側には、天気や気温と向き合いながら、「いつもの美味しさ」を届けようと毎日畑を見守る農家さんの努力があるのです。

収穫した九条ねぎの不要な部分を一本一本、丁寧にカットしていきます。
収穫した九条ねぎは、土や葉を一本一本丁寧に取り除き、整えていきます。
最近人気の高いパック詰めの刻みねぎ向けには、根の部分をカットします。

「安全な野菜」はどうやって作られているの?

村田農園の事務所には、経営理念が掲げられていました。
村田農園の事務所には、経営理念が掲げられていました。

野菜づくりで大変なのは、暑さや寒さだけではありません。病気や害虫から九条ねぎを守ることも、農家さんの大切な仕事です。

村田さんによると、九条ねぎが元気に育つ15〜25℃くらいの気温は、実は病気も発生しやすい環境なのだそう。特に梅雨のように湿度が高い時期は、カビが原因となる「べと病」などが発生しやすくなるといいます。また、ねぎを食べる害虫もいて、その種類や発生する時期を見極めながら対策をしているそうです。

「畑の様子は毎日違います。昨日は何もなかったのに、翌日には病気が出始めていることもあるので、毎日畑を見て回ることが大切なんです」と村田さんは言います。

野菜は植えて収穫するだけでなく、日々の小さな変化を見逃さないことも大切であることがわかります。

では、安全な野菜を届けるために、どのような工夫をしているのでしょうか?

株式会社 村田農園では、必要な農薬を、決められた量と回数を守って使用しているといいます。そして、「いつ」「どの畑で」「どの農薬を」「何回使ったのか」という情報を、すべてデータとして記録・管理しているそうです。

「農薬は使えばいいというものではありません。決められたルールを守り、きちんと記録を残すことも、安全な野菜づくりには欠かせないんです」

さらに、安全性や生産管理については第三者機関によるチェックも受け、GAP(農業生産工程管理)の認証も取得。これは、食品の安全だけでなく、環境への配慮や働く人の安全なども含めて、適切に管理されていることを示す仕組みです。

村田さんは、「野菜だけを見ていても、いい農業はできません。働く人が安心して仕事ができる環境があってこそ、美味しい野菜を届けられるんです」と話します。GAP認証には、こうした働く人の安全や職場環境への配慮も含まれているそうです。

農業は「畑仕事だけ」じゃない!

「農家さんの仕事」と聞くと、畑で野菜を育てたり、収穫したりする様子を思い浮かべる人が多いかもしれません。

しかし、村田さんは「実は、それだけではないんです」と話します。

株式会社 村田農園では、九条ねぎを育てるだけでなく、JAやスーパーなどへの出荷や販売、ホームページやSNSでの情報発信、パッケージづくりなど、さまざまな仕事をみんなで分担しているそうです。

「昔は、野菜を作れば売れる時代もありました。でも今は、『どんな思いで作っているのか』『どんな野菜なのか』を知ってもらうことも大切な仕事になっています」

だからこそ、畑だけではなく、パソコンに向かって仕事をする日もあれば、お店や消費者の方の声を聞く機会もあります。農業は、野菜を育てる技術だけでなく、人とつながる力や伝える力も求められる仕事なのです。

熱心にお話くださる、村田さん。
熱心にお話くださる、村田さん。

さらに株式会社 村田農園では、高校生や大学生の農業体験の受け入れにも力を入れています。実際に畑で土に触れ、収穫を体験することで、「農業って面白い」「こんな仕事もあるんだ」と感じてもらえたらうれしいと村田さんはいいます。

農業体験に参加した高校生からは、「採れたての九条ねぎは、普段食べている味と全然違った」「九条ねぎってこんなに甘いんだと驚いた」といった感想も寄せられるそうです。

村田さんは、「実際に畑に来て、土に触れ、採れたてを味わうことで、野菜や農業をもっと身近に感じてもらえたらうれしいですね」と笑顔で話してくれました。

農家さん直伝! 美味しい九条ねぎの「選び方」

せっかくなら、美味しい九条ねぎを選んで味わいたいもの。ここでは、村田さんに教えていただいた「九条ねぎ選びのコツ」を紹介します。

村田さんによると、まず見てほしいのは葉の色です。鮮やかな緑色で、葉先までみずみずしく、ピンとハリがあるものがおすすめなのだそう。反対に、葉先が黄色くなっていたり、しおれていたりするものは、鮮度が落ち始めているサインです。

もう一つのポイントは、葉の付け根。白い部分と緑色の部分の境目がしっかりとしていて、全体にハリがあるものを選ぶと、美味しく食べられるといいます。

買ってきた九条ねぎは、できるだけ早めに食べるのがおすすめですが、すぐに使わない場合は、乾燥しないよう袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存すると鮮度が保ちやすくなるそうです。

村田さんは、「九条ねぎは、火を通すと甘みがぐっと増します。鍋料理はもちろん、炒め物や焼きねぎにしても美味しいですよ」と話します。

優れた品質が保証され、安心・安全と環境に配慮した生産方法に取り組んでいる九条ねぎには、「京のブランド産品」マーク(京マーク)がついています。

野菜嫌いの子にもおすすめ! 「九条ねぎたっぷりのクリームオムライス」

オムレツ

九条ねぎは、火を通すと甘みがぐっと増します。お子さんでも食べやすくなりますよ」と村田さんは教えてくださいました。

「九条ねぎを食べてみたいけれど、子どもがねぎは苦手で……」というご家庭には、「九条ねぎたっぷりのクリームオムライス」がおすすめです。

このレシピは、九条ねぎをケチャップライスや薄焼き卵、クリームソースにもたっぷり使うのが特徴。「緑色が見えるだけでも嫌!」というお子さんでも食べやすいよう、見た目や食感にも工夫を凝らしています。

トッピングには九条ねぎの白い部分を使うことで、生の九条ねぎならではの風味も楽しめます。

【材料】(2人分)

〈オムライス〉
●万願寺甘とうと九条ねぎケチャップライス
・ごはん … 茶碗2杯分
・九条ねぎ … 1本 ※根っこから約5センチをトッピング用にとっておく
・万願寺甘とう … 2本
・玉ねぎ … 1/4個
・コーン … 40g
・ケチャップ … 大さじ2
・コンソメ … 小さじ1/2
・塩 … 少々
・バターまたはマーガリン … 小さじ1
・おろしにんにくチューブタイプ … 1センチ分

●九条ねぎの薄焼き卵
・九条ねぎ … 1/2本
・卵 … 2個
・塩 … 少々

〈クリームソース〉
・九条ねぎ … 1本
・えのき茸 … 1/4株
・ベーコン … 1枚
・バターまたはマーガリン…小さじ1
・小麦粉 … 大さじ1/2
・牛乳 … 100cc
・コンソメ … 少々
・塩 … 少々
・オリーブオイル … 適量

〈付け合わせ用の野菜類〉
・じゃがいも、トマト、コーンなど

【作り方】

【万願寺甘とうと九条ねぎのケチャップライス】

1:万願寺甘とうは種を取り除き1センチ角に、九条ねぎは5ミリの小口切り、玉ねぎはみじん切りにします。
2:フライパンにバター、コンソメ、おろしにんにく、(1)を入れ弱火で炒めます。ご飯、コーン、ケチャップを加え馴染ませながら炒めます。火を止めたら最後に塩で味を調えましょう。

オムレツ

【九条ねぎの薄焼き卵】

1:九条ねぎを細かく小口切りにします。溶き卵、九条ねぎ、塩少々を混ぜます。
2:火をかける前のフライパン(※フッ素加工のもの)に1を半分入れ、卵液を平らにならします。そのとき、九条ねぎが均等に散るよう箸でならしましょう。
3:蓋をし、弱火で加熱します。卵の表面が固まったら火を消し、薄焼き卵にシワができないように、焼き目を下にしてラップの上に移しましょう。
4:残りの卵液でもう一枚作ります。

オムレツ

【九条ねぎのクリームソース】

1:九条ねぎ、えのき茸は4センチ幅に、ベーコンは1センチ幅に切ります。九条ねぎはラップに包んでレンジで1分加熱し柔らかくしておきます。
2:フライパンにバター、オリーブオイル(適量)、1を炒めたら小麦粉を加え粉っぽさがなくなるまで炒めます。

オムレツ

3:牛乳、コンソメを加えよく混ぜます。沸々として来たら塩で味を調え火を止めます。

オムレツ

【盛り付け】

1:九条ねぎの根に近い部分を細かく小口切りにし、水にさらしておきましょう。
2:薄焼き卵の上にケチャップライスを適量のせ、ラップのまま包みます。つなぎ目を下にしてお皿に盛り付けます。

薄焼き卵の上にケチャップライスをのせます。
薄焼き卵の上にケチャップライスをのせます。
ラップを使って包みます。
ラップを使って包みます。

3:クリームソースをかけます。
4:九条ねぎをオムライスの上にトッピング。
5:付け合わせの野菜を添えて完成!

オムレツ
「九条ねぎたっぷりのクリームオムライス」が完成!

九条ねぎを手に取ってみよう

普段、何気なく買っている九条ねぎ。その一本には、季節や天候と向き合いながら育てる農家さんの知恵や工夫、そして多くの人の思いが詰まっていました。

村田さんは、「実際に畑を見て、野菜に触れることで、農業をもっと身近に感じてもらえたらうれしいですね」と話してくれました。

夏休みは、自由研究にもぴったりの季節です。スーパーで九条ねぎを手に取って産地を調べてみたり、畑を訪ねてみたり、親子で一緒に料理を作ってみたりするだけでも、新しい発見があるかもしれません。

野菜の見方が少し変わると、毎日の食卓はもっと楽しく、もっと美味しくなります。この記事が、そのきっかけの一つになれば幸いです。

協力/公益社団法人 京のふるさと産品協会
京都府内には、京野菜など特徴のある農林水産物がたくさんあります。この中で、人にも環境にもやさしい方法で生産され、品質・規格、生産地を厳選したものを「京のブランド産品」として認証し、アピールしています。
ホームページ:https://kyoyasai.kyoto
LINE:https://kyoyasai.kyoto/fanclub/

取材・撮影協力/株式会社 村田農園
京の伝統野菜「九条ねぎ」「賀茂なす」、株式会社 村田農園オリジナル「パールコーン」など四季折々に変化する中で、多種多彩の野菜と600年の伝統を誇る実付き・根付きの良い苗「淀苗」を栽培している農園です。
ホームページ:https://murata-farm.net

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この記事を書いたのは

末原美裕(京都メディアライン) 編集者・ライター

反抗期まっさかりの中3男子を悪戦苦闘しながら育てる、81年生まれのシングルマザー。小学館で11年間、雑誌編集に携わったのち独立し、縁もゆかりもない京都に移住。日本文化や歴史、京都観光から、子育て世代の暮らしに寄り添う記事の取材・編集・執筆を行う。

撮影/貝阿彌俊彦(京都メディアライン)
料理作成/もぱ(京都メディアライン)

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