「DJからサーカスまで」フランスの習い事は選択肢豊富…しかし、始めるのは超困難! 待ち構える落とし穴とは【vol.16】

日本とフランスの違いを紹介するこの連載。今回のテーマは習い事の違いについてです。
習い事とひと言でいっても、容姿も含めて厳しい入会審査があるオペラ座のバレエ教室、誰でも入れる区のサッカー教室などピンキリです。
今回は、一般の人にも開かれているものを比べていきます。

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「ゴールはひとつじゃなくていい」DJも学べるカリキュラム 

小学校や学童からは、コンセルヴァトワールへの送迎もある。

一般的なのは「コンセルヴァトワール」と呼ばれる、音楽・ダンス・演劇などを教える公的な機関です。語源は「保存する」という意味のフランス語「conserver」だけあって、カリキュラムは気合が入っています。

たとえば、個別の楽器レッスンはこちら(区によって違いがあります)。

【学べる楽器一覧(個別レッスン)】
・フルート
・オーボエ
・クラリネット
・サックス
・トランペット
・パーカッション
・ピアノ
・ヴァイオリン
・ヴィオラ
・チェロ
・ギター
・ベースギター
・リコーダー
・チェンバロ
・声楽

定番のピアノやヴァイオリンはもちろん、チェンバロやリコーダーといった珍しいクラスも。もっと驚いたのは、楽器以外のクラスです。

【音楽コース(グループレッスン)】
・楽曲分析(アナリーゼ)
・音楽理論(ソルフェージュ)
・楽器体験アトリエ
・現代ポピュラー音楽アトリエ
・ジャズ・アトリエ
・ロック・アトリエ
・古楽アトリエ
・ワールド・ミュージック・アトリエ(日本音楽など)
・弦楽器アンサンブル
・管楽器アンサンブル
・ギター・アンサンブル
・打楽器アンサンブル
・児童合唱団

また、デジタル技術や身体表現と連動した、先鋭的なプログラムも用意されています。

【音響コース(グループレッスン)】
・音への入門(6歳〜)
・デジタル楽器・新しい楽器(7〜10歳)
・音源制作・DJ/DTM(11歳〜)
・芸術教育
・音と動きの感覚育成(5歳〜)
・音と動きへの入門(6歳〜)

友人の息子は「楽器を弾くのは嫌いだけど、音楽そのものは好き」という理由で、「音源制作(DJレッスン)」を受けています。

コンセルヴァトワールの多彩なラインナップから伝わってくるのは、「好きなことを深めて、うまくなろうよ」というメッセージ。日本では、どうしても発表会やコンクールといったゴールがセットになりがちです。そうじゃなくて、ゴールはひとつじゃなくていい、もっと自由でいい--そう感じました。

とはいえ、子どもたちとは「長男と次女はピアノ、長女はヴァイオリンだね」という日本人らしい結論に至り、体験の申し込みをしに電話をしました。

そうしたら、そこに落とし穴が待ち構えていたのです。 

「まずはグループレッスンから」日本と違うフランスの段階的ルール 

子どもたちの年齢を伝えると、返ってきたのは「14歳未満だと、1年目で楽器の個別レッスンは受講できません」という言葉でした。

どうやら、初年度に学べるのはグループレッスンのみとのこと。いろいろな楽器に触れられる楽器体験アトリエか、音楽理論(ソルフェージュ)を勧められました。どちらかを経て、2年目からは好きな楽器を3つ選んだ上で、個別レッスンに進めるそうです。

たしかに「いろいろな楽器を試してから好きなものを決める」「理論を学んでから楽器に触れる」というのは、理にかなっています。でも、日本では3歳からピアノを始める子も珍しくありません。子どもたちもピアノやヴァイオリンを触りたかったらしく、残念そうにしています。

そこで、コンセルヴァトワール以外の習い事を探してみることにしました。

「年に一度のイベントに賭ける」アナログな情報収集 

2024年のパリオリンピックでルブラン選手がメダルを獲得して以来、卓球教室も増えた。

フランスの習い事は、種類がたくさんあります。サーカス、演劇、彫刻教室など、日本ではあまり見かけないものも子ども向けに開かれています。

ただ、その情報を集めるのに、ものすごく骨が折れるのです。

まとまった情報が、日本のようにネット上にありません。口コミか、街で貼られたポスターを頼りにするのですが、問い合わせようにも電話は通じず、メールを出しても返事が来ないことはザラ。

あとは、1年に1回だけ、9月頭の週末に区が開催する「習い事フォーラム」というイベントに賭けるしかありません。それは公園や商業施設で行われて、各区の教室がブースを出展します。

公園での習い事フォーラム。ふだん日曜はガラガラなのに、このときだけはすごい人混み。

そこで紙のパンフレットを集めたり、体験を申し込んだりするわけです。この時代にすごくアナログですが、フランスではこれが一番「効率がいい」のです。

申し込み期間は6月~10月末までの年間契約のみで、この時期を逃すと途中参加はほぼ不可能。去年の5月に長男のために卓球教室を申し込もうとしたら、「今年度はもう終わったから、また9月に来てね」と断られたことがありました。

体験レッスンは日本のように年中受け付けているわけではなく、「9月の第4週だけ」といったように、かっちりと決められていることが多いです。

子どもたちと話し合い、体験レッスンを申し込もうとしたのですが、そこでフランスの別の現実を知ることになりました。

「6歳の壁」があるフランス、ママの孤独を救う日本 

10歳長男、日本では4歳の頃に水泳教室へ通っていた。

なんと、多くの教室は「6歳からしか受け付けていない」とのこと。

うちは長男が10歳、長女が8歳、次女が5歳です。親の本音としては、送り迎えの負担を考えても、できれば同じ場所にまとめて通わせたいところです。「あと数か月で6歳になるのですが、ダメでしょうか」と相談してみたものの、「6歳からじゃないと無理、また来年登録して」と、けんもほろろに却下されてしまいました。

私のフランス語と、ごねるスキル(フランスでは必須)が未熟だから、こんなことになるのか……。そう思ってママ友に話したところ「みんな同じことで悩んでるよ」と。

日本では、もっと年齢の幅が広く、赤ちゃんにも習い事は開かれていますよね。ベビースイミング、リトミックなど、選択肢もたくさんあります。「そこでママ友ができて、今でも続いている」という声も多く、ママの孤独を救ってくれていたのだな、と感じました。

でも、フランスでは「6歳の壁」というルールがしっかりと横たわっています。

「小学校に上がるまでは習い事をせずに、たくさん遊ぶべき」というフランス流の考えもわかります。ただ、私は日本に住んでいた頃、子どもを同じ習い事に通わせていたママ友・パパ友の存在に助けられていました。

育児の話ができるコミュニティ、子どもの所属するコミュニティは、いくつかあった方がいい。私はそう考えています。でないと、逃げ道がなくなっちゃうじゃないですか。

結局、住んでいる区だけでは選択肢が足りず、隣の区まで足を伸ばすことになりました。ひと通りの体験レッスンの登録を終えて、胸をなで下ろしたのも束の間。まだまだ、習い事狂想曲の序章に過ぎなかったのです。

続きは次回、お話しします。

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この記事を書いたのは

綾部まと ライター・作家

三菱UFJ銀行の法人営業、ユーザベースのセールス&マーケティングを経て独立。ビジネスやマネーの取材記事から、恋愛小説まで幅広く執筆。2025年よりフランスに拠点を移し、フランス企業の日本進出支援(ローカライズ)やフィクションの翻訳にも携わる。3児の母。

X:@yel_ranunclus
Instagram:@ayabemato

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