保育士・井桁容子先生に聞いた「絵本の読み聞かせはいつから?子供にもたらす効果は?」

Q . 毎日、絵本の読み聞かせをしていますが、娘はすぐに飽きてしまいます。私の読み方がうまくないせいでしょうか?

A . 読み方の上手・下手より子どもの興味を見きわめて

絵本の読み聞かせは、遊びのひとつと考えよう

まずお母さんに知っておいてほしいことは、絵本の読み聞かせは、たくさんの遊びの中の一つと思いましょう。興味の対象は人それぞれなので、絵本が好きな子もいれば、あまり好まない子もいます。読み聞かせをするときは、子どもを膝にのせてページを開き、「子犬がいるね」「これ、なんだろう?」などと話しかけてみましょう。そのとき子どもがページを見るなら、読み進めてみます。でも、キョロキョロしたり上の空だったりするなら、あまり興味をもっていない証拠です。

絵本の読み聞かせはいつから?始める時期の見極めは

子供自身が興味をもつタイミングを待って

本が好きな子になってほしい、という親としての願いもわかりますが、まずは楽しく親しむことが大切です。無理強いして「読み聞かせの時間=ガマンの時間」となり、おもしろさに出会う前に本がきらいになってしまっては残念です。絵本の場合、まずは絵や色合いから楽しむ子もいます。読み聞かせは子どもが自分から自然に絵本に手を伸ばすのを待ってからでも遅くはありません。人の感性はさまざまで、図鑑が好きな子もいれば物語が好きな子もいます。また、動物好きな子が、動物が出てくる絵本に出会うことから本に親しむようになることもあります。読み聞かせをする前の段階として、いろいろなタイプの絵本を見せ、子どもの好みや興味の対象を探ってみてもよいでしょう。

本当の意味で絵本の「読み聞かせ」を楽しめるのは3歳頃から

また、絵本に書いてあるとおりの文章を読んでもらう「読み聞かせ」を本当に楽しめるのは、3歳を過ぎてからです。最後まで聞いていられることを目的とせず、子どもの「絵本を読んで!」というリクエストには、その子が楽しめる形で応えてあげてください。絵本を一緒に楽しめる時期は、それほど長くありません。忙しいときでも「洗いものが終わるまで待ってね」というように見通しをもてる約束をし、子どものための時間をつくるようにしてみてください。用事や仕事をやりくりして、親が自分に合わせてくれた。こんな体験は、子どもが「人にゆずる」ことを覚えるきっかけにもなるはずです。

子供に絵本の読みきかせるとき、持ち方や歌を歌うなど工夫して

抑揚をつけた読み方で子供の興味を引きつけて

読み聞かせの仕方に決まりはありませんが、まず子どもの興味を引きつけるためには、言葉の抑揚を工夫すると効果的です。場面に合わせて声の大きさを調節する、間のとり方に変化をつけるなど、表現を工夫してみることがオススメです。

膝にのせる、向き合う。どちらの姿勢もおすすめです

また、普段は子どもを膝にのせ、子どもの頭の上から本を読んであげるのが読みやすい姿勢ですが、ときには紙芝居を読むように向き合ってみたらどうでしょうか。ページをめくるたびにお子さんがどんな表情をしているかを確認でき、好みに気づきやすいです。それに、子どもの表情にあわせて抑揚の変化を付けるなどして、絵本の世界に引き込めたら楽しくなりますね。

音楽や歌に合わせるのも、子供が楽しめるポイント

音楽とあわせて物語を読むのも効果的です。まだ歌えないお子さんも、お母さんが桃太郎の歌をうたってから桃太郎の絵本を読み始めれば、気持ちも切り替わり、すんなり読み聞かせの時間に入れますよ。

 

読みきかせをすることが、子供の心に与える効果は絶大

絵本は想像力を育み、子供の世界を広げてくれる

人は実際に行動しなくても、想像力を働かせることで満足したり楽しんだりすることができ、絵本はそれを子どもに気づかせる役割を果たしてくれます。絵本を通して気づいたことや感じたことは想像力を育み、子どもの世界を大きく広げていくのです。

大人とのていねいな関わりが、安心感や満足感に

さらに、だれかに絵本を読んでもらう体験にも大きな意味があります。読み聞かせは、大人とのていねいな心の交流ができる関わりの時間です。大人が自分のためだけに時間を使ってくれたという満足感や楽しさの共有感、膝の上に抱かれた心地よさや安心感は、子どもの豊かな心の成長にとって、大事な栄養源となっていきます。

 

教えてくれたのは

井桁容子|乳幼児教育保育実践研究家

乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。

イラスト/小泉直子
出典:『めばえ』2015年5月号

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