大切なことは祖母の食堂で学んだ あさのあつこさん流「のんびり育児」

野球に打ち込む少年たちを描いた大ヒット作品『バッテリー』をはじめ、思春期の子どもたちを鮮やかに描き出す小説家のあさのあつこさん。

三人兄弟の真ん中に生まれたあさのさんが、小学校時代のエピソードから、3人の子育てを経験までを語ったインタビューは、小学館の学習雑誌『小学一年生』サイトで掲載中です。

そんなあさのさんのお話には、子育てのコツがいっぱい。たくさんの素敵な物語を紡ぐあさのさんの育児のこだわりを、インタビューから探っていきたいと思います。

■おばあちゃんの食堂でたくさんのことを学んだ

小学校時代のあさのさんは、祖母の食堂で放課後を過ごすことが多かったそう。

「食堂にはいろんな人が来ていて、世の中にはいろんな人がいるんだ、ということをここで学びました。みんな、おいしいものを食べるときはいい顔をすることも知ることができました」というあさのさん。その気付きは、小説を書いている上でも、大きなベースになっています。

高学年になると、あさのさんは食堂でお手伝いを始めるようになりました。そこで学んだのは、お皿や器の洗い方、野菜の切り方や使い方など。料理のあらゆることを祖母から徹底的に教えてもらいました。最近では、台所のお手伝いや食育の大切さが話題になっていますが、あさのさんの場合は、実際の食堂で小さい頃からしっかり仕込まれ、大人になってからも大変役に立ったそうです。

■大きくなってから気付いた母の一生懸命さ

あさのさんのご両親は共働きで、特にお母さまは高校の教師として忙しい毎日を送っていたそうです。家に生徒さんが訪ねてきたり、時には家出した生徒を探しに行ったりした母を見て、「生徒のほうが大事なんだ」と寂しく思ったことも多々あったというあさのさんですが、大人になってから、お母さまが懸命に仕事に打ち込んでいたということに気付きます。

子どもの時は気付いてもらえなくても、親が一生懸命仕事をしている姿を子どもは見ています。あさのさんのように、小さいときにはわからなくても、大きくなってから気付く時もくるでしょう。

■のんびりでもいい、自分の子のペースで一緒に進む

そして時は流れ、3人の子育てを経験し、今や小学生の孫をもつようになったあさのさん。インタビューでは、自身の子育てをふりかえり、いくつかのルールを決めていたことを話してくれました。

あさのさんご夫婦が決めていたことのひとつが、「子どもの前ではけんかをしない」ということ。そして、あさのさん自身は、「子どもたちの側からものを見ること」を心がけていたそうです。「周りの価値観や評価だけで子どもは判断しちゃいけない。してしまいそうになりますが、ブレーキをかけていました」。児童小説を書く上でも、子どもの視点に立つということは、とても大事なことだったそうです。

そして、現在子育てに頑張っているお母さんたちへ、あさのさんからのアドバイス。

「現代は、成長のスピードが全体的に早まっています。でも、子どもをせき立てるのではなく、その子のペースを尊重できる強さを持ってほしい」

自分がそういう失敗をしてきたからこそ、周りに惑わされず、その家族ごとのペースをもってほしい。そう、あさのさんは語っています。

子育てではつい周りを見回して「うちの子はこれができない」と、できないところばかり目についてしまいます。そんな時こそ、あさのさんの言葉を思い出し、子どものペースで見守ってあげる余裕をもちたいですね。

(ライター/相川いずみ)

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