【劔 樹人さんの子育て論】母親じゃなきゃダメは幻想!男にできない育児はない!!

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普通のサラリーマンとは違う変わった職業のパパは、どのように育児参加をしているのでしょうか。勤務時間に縛られない職業の場合は、子どもと一緒にいられる時間が通常の会社員よりも長いかもしれません。前回の漫画家・吉田戦車先生はこちら

今回は、漫画家でエッセイスト、そしてミュージシャンと多彩な活躍をしている劔 樹人さんに、育児にまつわる話をお聞きしました。ちなみに奥様はエッセイストの犬山紙子さん。劔さんは積極的に育児・家事を行う、いわゆる「イクメン」としても有名です。

家事・育児をするのはママじゃなくても構わない

僕が、結婚したのは34の時かな。結婚はすんなりしましたね。「なんとなく面白くなりそう」って感じがしたんで。犬山はTVのコメンテーターなどもしていて忙しいので、うちでは主に僕が家事や育児をしています。

女性の方が働いている家庭があってもいい!

育児や家事を男性がしていることに対して、対外的評価が低いって思うんです。テレビが特にそうなんですけど(苦笑)、僕をどうしても収入を低くしたい空気があるんですよ。メディア取材を受けても、僕が働いていないことになっていたり(笑)。

やっぱりどうしても、妻に食べさせてもらっているヒモ夫みたいなカテゴリにしたいみたいなんですよね。女性の方が働いている家は、男性がだらだらしているように思われているんですよ。家にいて、育児や家事を主に担う男性を世間は低く見たいようなんです。意識が変わっていかないといけないって思うんです。

保育園でもパパが増えている

保育園へは、娘が4か月から通っています。送り迎えは99パーセントくらい僕。でも娘の行っている保育園は、19時とか遅い時間に迎えに来ているパパもいます。保育園の運営委員会の役員も、1年、2年とやりましたね。

あんまり僕みたいな「何してるのかわからない」みたいなお父さんはあまり見かけませんね(笑)。みんな会社員感がやっぱり、あります。うちの妻はテレビに出ているので、それなりに知られていると思うんですよね。でも僕は毎日赤い格好しているし、だいぶやばいと思われているとは感じます(笑)

泣き止まない娘といたら、誘拐犯に間違われ…。

劒さんと言えば、昨年、娘を連れて新幹線に乗っていたら、誘拐犯と思われて警察に通報されたということが、大々的にネットニュースでも話題に。男性の育児参加の難しさなど、パパママにとって考えさせられることが多い出来事でした。その時の心境などを伺いました。

泣き止まない娘といたら、誘拐犯として通報

犬山に激しい猫アレルギーがあって、うちの実家に行けないので、娘(注・当時2歳7か月)と二人で新潟に帰省していたんです。その帰りの新幹線での出来事でした。最初娘は寝ていたのですが、起きたら機嫌が悪くて、ぐずりだしたんです。新幹線もだんだん混んできて「これはまずいな…」って思って。(後ろの席の人から文句言われたりとかもあって)そこでデッキに行ったら、むしろデッキの方が混んでるような状況でした。

娘は”ここで、こんな大声出すのか…”と言う位、発狂したように泣き喚いていました…。大宮で人が降りてデッキからいなくなったんですよ。「あーよかったな」ってホッとしたのも束の間、上野で今度は警察の方が乗ってきて!「誘拐の疑いの通報がありまして」と声をかけられました。誰が通報したのかは、全くわからないです。

その場で子どもの保険証も見せたのに、それでは証明にならなかったんです。妻にも電話したし、娘と一緒に撮った写真も見せたし…。簡単に許してもらえないんだな…っていうのはありました。

でも、本当に誘拐だったことを思うとそれくらい厳重でいいのですが。

世間では、子どもは母親といるもの。育児は母親の仕事というイメージがまだまだ強いのかもしれませんね。娘と公園などに出かけても、オムツ替えスペースが女性のトイレにしかなかったり。そういうことで男性の育児参加に壁を感じることは多々ありますね。

娘と一緒に。(写真提供:劔さん)

夫婦仲の秘訣はコミュニケーションを取ること

夫婦仲なんですが、これがびっくりするほど仲がいいんです。コミュニケーションも多いですし、話もよくするし。育児ストレス的なものをあまり感じないのも、夫婦間のコミュニケーションをよく取ることが大きいのかも。

妻の出産後は育児に専念。産後クライシスを回避!

犬山の妊娠時は事前に仕事のことなど色々夫婦で相談しました。世間で問題となっている”産後クライシス”を避ける方法を調べて、男性の育児参加が一番だと思ったんです。

生まれる前に自分の原稿は3か月分を先に終わらせて、産後3か月はほとんど仕事をしなかったんです。母親がイライラする原因に、「眠れない」というのがあったので、母親が眠る時間を取るために、ローテンションを決めて授乳しました。夜中の授乳は僕がやって、朝は犬山がやりました。こういうのは、フリーランスの強みですね。

僕はその時期は、(音楽活動の)ライブも入れませんでした。育児休暇中に、ちょうどバンドが海外でのライブが予定されていたんですが、代役のメンバーが行ったんです。そういう残念さはありましたけどね。

母親じゃなきゃダメは幻想!イクメンという言葉は終わるべき!

別に母親じゃないとできないこととか、赤ちゃんには母親が必要なんだって、幻想ではないかって思っていて。父親でも事足りるって、僕は思います。授乳だって、冷凍母乳で僕がやっていましたし。それを経験したってことから、できないことはないなっていうのがあるので。なんなら「僕の方ができますよ(笑)」っていう感覚。

娘と寛ぐ劔さん。(写真提供:劔さん)

「イクメン」って言葉も、終わるべき言葉だと思うんです。育児することは普通ですので。男が育児をしないから、「イクメン」と言う言葉があるわけで。もはや、褒め言葉じゃないですよ(笑)

育児で時間がなくても、自分らしさを失わないことが大切

育児の悩みは、妻には話しますね。「ああ、どうしよう(困り顔を見せながら)」とか。あ、僕、昔から困っている顔の評価が高いんですよ(笑)

困り顔の劔さん。

犬山が意識的だったというか、「あまり自分らしさを失わない方がいい」っていう考え方でした。僕にも「我慢してほしくない」って言ってくれるのですが、むしろ、彼女の方が育児で趣味を我慢しているんじゃないかって心配しているところがありますね。

収入が多い方が食べさせているという考え方は、専業主婦の悩みの原因

一般的に収入があるほうが、社会的に力を持ちがちなんです。収入がある夫が「俺の金で食わせてやってる」ってなると、やっぱりハラスメント的になるじゃないですか。専業主婦が千円のランチ食べて炎上するみたいな…。

収入がある側が、ない側に対して配慮することが僕は大事だなって思います。犬山は、「仕事はこれくらいやっているから、お金はこれくらいがフェアだ」とか物凄く考える人。彼女がお金や家事分担など家庭内マネジメントをしてくれて、僕は「わかりました」(笑)って。僕からは「これだけやっているんで、これだけください」とは言えなかったと思うんです。そういうのができないというのが、今、専業主婦が抱えている悩みの原因かなって感じます

「俺の金でお前は食っているんだぞ」っていう考えは、間違えだと思いますね。犬山は「私がなぜ働けているかと言えば、あなたが送り迎えなど育児をしてくれているから」という感覚がちゃんとあるんです。

男性は男性で「自分が稼がなきゃ」という呪縛に苦しめられている部分も

妻の言うとおりにしてみたら、「なるほどな」って発見はありました。夫婦間の収入差は、そこみんな注目しているみたいですけど(笑)男性は男性で、「自分が稼がなきゃ」っていう苦しさに縛られている。男性・女性関係なく、自分の適性っていうのはそれぞれなんで。

僕も自分の適性かはわからないですが、今の状態でやっていけるってことは、これが合っているのかなと思います。僕もそれは彼女から教えられた感覚ではあります。

 

劔樹人(つるぎみきと)

漫画家、エッセイスト。著書は『あの頃。 男子かしまし物語』(イースト・プレス)『今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻のほうが稼ぐので僕が主夫になりました』(双葉社)など。またミュージシャンとしては、『あらかじめ決められた恋人たちへ』のベースとして活動するほか、アイドルのバッグバンドなどでもベーシストとして参加。

劔さんの自伝的エッセイ漫画『あの頃。男子かしまし物語』は2021年に松坂桃李さん主演で映画化される予定!

Twitter:@ tsurugimikito

劔さんの著書はこちら

今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻のほうが稼ぐので僕が主夫になりました

あの頃。 男子かしまし物語

 

劔さんの奥様、犬山紙子さんの新刊も要チェック!

すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある

文・構成/池守りぜね

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