【医師監修】赤ちゃんのうつ伏せが危険と言われるのはなぜ?うつ伏せのメリットと注意点を正しく理解しよう!

乳児の「うつ伏せ」と聞いてまず多くのママが不安に感じる「窒息の危険性」。まだ首や背中の筋肉がしっかり発達していない赤ちゃんは、頭をあげることができず顔が下に埋まってしまい窒息してしまう危険があります。一方、うつ伏せにはメリットもあるといわれています。

今回は、うつ伏せの危険性とメリットの両面から考えて、うつ伏せ練習の取り入れ方を紹介します。

赤ちゃんのうつ伏せは危険?

赤ちゃんがうつ伏せになっている時は大人がそばにいてしっかり見てあげることが大切です。危険となる環境をきちんと理解することで思いがけない事故を防止することができます。

危険なのは「うつ伏せ寝」

赤ちゃんがうつ伏せになると窒息してしまうのではないかと不安になるママは多いようです。危険であるのは、赤ちゃんがうつ伏せで眠ってしまうこと、そしてママやパパがそばにいない環境でうつ伏せの状態でいることです。まだ小さな赤ちゃんは自分で体を自由に動かすことができず、赤ちゃんが眠っているときや目を離した際に赤ちゃんの顔が布団やクッションなどに埋まってしまう危険があります。赤ちゃんがうつ伏せになっているときは、必ず目を離さないのが鉄則であり、それにより窒息などの事故を防ぐことができます。

うつ伏せ寝と乳幼児突然死症候群(SIDS)の関係性

睡眠中に赤ちゃんが死亡する原因として、窒息などによる事故死以外に乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)があります。

SIDSの予防方法は確立していませんが、赤ちゃんがうつ伏せで寝かせたときの方がSIDSの発生率が高いということが研究調査からわかってます。厚生労働省は、医学上の理由によりうつ伏せ寝を勧められている場合以外は、睡眠中の窒息事故を防ぐためにも1歳まではあおむけに寝かせることを推奨しています。

※SIDS=何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が睡眠中に突然死に至る原因不明の病態

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/sids.html

赤ちゃんがうつ伏せできるようになるのはいつ?

では、赤ちゃんがうつ伏せができるようになるのは生後何ヶ月くらいからでしょう。目安となる時期を覚えて赤ちゃんのペースをみてあげながらゆっくりうつ伏せ姿勢に挑戦してみるのもいいでしょう。

寝返りができる生後5ヶ月ごろ

自分の力で自然にうつ伏せになることができるようになるのは、赤ちゃんが寝返りを打てるようになる生後5ヶ月ごろといわれています。生後2ヶ月くらいから遊ぶときにうつ伏せにしてあげることができますが、首が座っていないこともあり赤ちゃんが嫌がることもあります。赤ちゃんの様子をみてゆっくり始めてみましょう。

では、実際にうつ伏せ姿勢ができるようになったのはいつ頃だったのか、1~2歳のお子さんをもつママパパにアンケートをとりました。

Q.赤ちゃんがうつ伏せ姿勢をできるようになったのはいつですか?

今回のアンケート結果では、赤ちゃんがうつ伏せができるようになった時期で一番多かった回答が「生後2~3ヶ月頃」でした。生後4~6ヶ月にかけてうつ伏せができるようになったという回答がそれぞれ20%弱あり、生後6ヶ月までにうつ伏せをするようになった赤ちゃんが約80%を占めているようですね。

一方、うつ伏せができるようになったのが「生後8か月以降」という回答も約15%あり、うつ伏せができるようになる時期は個人差が大きいということがわかります。焦ることなくそれぞれの赤ちゃんの様子をみながら見守ってあげましょう。

初めての寝返り【ママパパ体験談】

赤ちゃんが初めてうつ伏せ姿勢ができたときの感想を教えてもらいました。多くのママパパが赤ちゃんがひとつひとつ成長していく姿に喜びを感じるなか、事故につながらないようにより注意してみてあげる必要があると実感するようですね。

「ずっと寝返りをしていて戻れなくて泣いていたのに踏ん張ってやれたのを見たときは成長したなーと感じたし、すごく嬉しくて一緒に喜んだ」(30代・愛知県・子ども2人)
「嬉しい反面窒息しないようによりいっそう目が離せないなとおもいました。」(30代・埼玉県・子ども2人)
「うつ伏せの練習をしていたころは、首の力がない分すぐ顔が下がってしまって心配でした。 初めて親の支えもなく出来た時は、嬉しい半面まだまだ危なっかしくて、ソワソワしたのを覚えています」(30代・東京都・子ども2人)
「寝返りができたのが3か月と早かったので、窒息しないか、ひっくり返らないか心配で、常に目が離せなかった」(40代・神奈川県・子ども1人)
「つかまり立ちができるようになってからのうつ伏せだったので、一安心でした」(30代・新潟県・子ども1人)

うつ伏せできるようになったら注意すること

うつ伏せができるようになったら特に注意しておくべき点をまとめてみました。以下の注意点をよく覚えておき、ちょっとなら大丈夫と思うことがないよう必ず守るようにして安全にこの時期を乗り越えていきましょう。

うつ伏せをしているときは目を離さない

赤ちゃんがうつ伏せをしているときは、常にママやパパが一緒にいる環境をつくりましょう。赤ちゃんはまだ首や背中の筋肉が発達段階であり思うように動くことができず、顔が下向きになって息ができなくなってしまうこともあります。赤ちゃんがうつ伏せになっているときは必ず目を離すことはないように注意しましょう。

柔らかい場所は避ける

顔が埋もれやすいやわらかいタオルやクッション、毛布や布団の上でのうつ伏せは避けるようにしましょう。顔が埋もれてしまうと窒息する危険性があります。さらにひも状のものは首にからまってしまうことがあります。これらのものを赤ちゃんの頭周りや手が届くところに置かないように普段から心がけておきましょう。

うつ伏せのまま寝させない

赤ちゃんはうつ伏せをしているときに疲れてそのまま眠ってしまうこともあります。しかし、うつ伏せ寝は窒息の危険性がありおすすめできません。寝返りが自分で簡単にできるようになり、1歳を過ぎ、苦しいときに自分で体の位置を変えられようになるまでは、あおむけで眠らせるようにしましょう。

無理にうつ伏せにしない

すべての赤ちゃんがうつ伏せの姿勢を好むわけではありません。体力をいっぱい使って行うためうつ伏せを嫌がる赤ちゃんもいます。赤ちゃんのストレスにならないよう、様子をみながら無理にうつ伏せ姿勢にしないようにしましょう。また、うつ伏せの姿勢を始めてから苦しそうにしたり、泣いてしまったときはすぐにやめましょう。

 

うつ伏せに練習は必要?

では、うつ伏せをするのに練習は必要なのでしょうか。うつ伏せ練習のメリットとともにみていきましょう。

基本的には練習の必要はない

基本的にはうつ伏せの練習は必要ありませんが、うつ伏せの練習は赤ちゃんの体の成長などにメリットがあるともいわれています。うつ伏せが落ち着くと感じる赤ちゃんもいるので普段の遊びに取り入れる程度で、5カ月を過ぎたころから挑戦してみるのもいいでしょう。

うつ伏せ練習をするメリット

無理にうつ伏せの練習をする必要はありませんが、首が座りやすくなる、げっぷがしやすくなるなどといったうつ伏せ練習のメリットも多くみられます。赤ちゃんが楽に呼吸ができるようになるのもそのひとつです。肺が広がりやすいうつ伏せ姿勢は、肺機能が鍛えられることにもつながり、赤ちゃんがより深く呼吸をすることができるようになります。鼻呼吸が習慣化するきっかけにもなり、全身の健康にもメリットがあるとされています。さらに視界が変わることで物に触ってみたいという好奇心が広がり、全身の運動機能の発達にもつながります。

うつ伏せ練習のやり方と注意点

うつ伏せの姿勢は安全に行うことが重要です。生後2~3カ月頃からうつ伏せの姿勢は可能ですが、この時期の赤ちゃんはまだ頭をしっかりと持ちあげることができないので、すぐに疲れてしまうことも。5か月を過ぎたころに、普段の遊びのひとつとして取り入れてあげるのもいいでしょう。

うつ伏せの姿勢は1日1回、10秒程度からはじめ、赤ちゃんが好むようであれば徐々に時間を増やしてみましょう。抱っこした状態、もしくは床の上で赤ちゃんの首と体をサポートしながら行う方法やバスタオルを使ってバランスをとってあげてうつ伏せの姿勢を練習させる方法があります。いずれの場合も、ママやパパが一緒にそばにいてあげて安全な状態で行うことが大切です。しっかり注意してみるようにし必要な時は体を支えてあげられるようにしましょう。

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まずは遊び時間にうつ伏せに挑戦!

今回のアンケート結果からは、生後6ヶ月までにうつ伏せをするようになる赤ちゃんが多いようです。しかし、うつ伏せをするようになる時期やうつ伏せ姿勢の好き嫌いは個人差があるものなので、無理にうつ伏せにすることがないよう赤ちゃんのペースに合わせてみてあげてください。うつ伏せ練習は特に必要はありませんが、遊び時間にちょっとだけ挑戦してみて赤ちゃんの様子を伺うのもいいでしょう。きちんと注意すべき点を確認して安全に赤ちゃんと過ごしてください。

記事監修

すぎたファミリークリニック 院長
杉田 亮

兵庫県三田市「すぎたファミリークリニック」院長。小児科専門医。1979年生まれ、久留米大附設高出身。2006年、大阪大学医学部医学科卒。大学在学中に休学してニュージーランドへラグビー留学した異色の経歴を持つ。先天性心疾患や小児不整脈、小児心臓移植といった小児心臓血管外科医としてキャリアをスタート。周辺地域の小児夜間診療体制が十分とは言えず、クリニックとしては異例の夜間診療も行っている。
すぎたファミリークリニック

文・構成/HugKum編集部

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