二宮和也主演映画『浅田家!』が大ヒット中!家族写真を題材にした映画がなぜ響いたのか?【親子で観たい映画】

©2020「浅田家!」製作委員会

二宮和也主演映画『浅田家!』が10月2日に公開され、国内映画興行ランキングで、V2のハリウッド超大作『TENET テネット』を制して、1位をマークする大ヒットを記録しました。メガホンをとったのは、宮沢りえ主演映画『湯を沸かすほどの熱い愛』で、第40回日本アカデミー賞優秀作品賞をはじめ、その年の映画賞を総なめにした中野量太監督。感動の実話を基にした『浅田家!』は、コロナ禍の今、人に優しく寄り添う心豊かな作品に仕上がっています。

二宮さんが演じるのは、実在の写真家・浅田政志役。政志は、自分の家族を巻き込み、ユニークな家族写真を撮っていました。それは、消防士、レーサー、ヒーロー、大食い選手権など、家族がなりたかった職業や、やってみたかったことをテーマに、みんなでコスプレをして撮るという独自のスタイルの写真です。

そんな家族写真が、写真界の芥川賞とされる木村伊兵衛写真賞を受賞したことで、政志は全国の家族から撮影依頼を受けるようになります。ところが、ある日、東日本大震災が勃発。政志は、かつて撮影した家族の安否を確かめようと、被災地に向かいますが……。

二宮和也の役者としての成熟と名優たちとのアンサンブル

©2020「浅田家!」製作委員会

今や日本映画界を背負う逸材となった二宮さん。政志役では、飄々としたマイペースな次男坊キャラが、絶妙にマッチしています。本作では、新鮮なチャラい茶髪姿から、無精髭を蓄えたワイルドな風貌まで、バリエーション豊かな二宮さんが堪能できます。

本作でも、二宮さんの演技は非常にナチュラルで軽やか。でも、東日本大震災の被災地へ赴く中盤からのシリアスなくだりでは、感情のディープなうねりを表現。二宮さんが何度か涙を見せるシーンがありますが、とりわけあるシーンでは、瞳が涙をたたえるダムのようになり、見ているほうの涙腺が崩壊させられそうです。

©2020「浅田家!」製作委員会

また、しっかり者の兄・浅田幸宏役の妻夫木聡、チャーミングな恋人・川上若菜役の黒木華、被災地で出会う小野陽介役に菅田将暉、政志の両親役に風吹ジュンと平田満と、豪華な顔ぶれのアンサンブルドラマが最高です。

本作は、写真家の浅田政志による著書「浅田家」「アルバムのチカラ」がベースになった物語ですが、二宮さんたちが、その写真集にある家族写真の完コピに挑んでます。劇中では、ユーモアたっぷりのなりきり家族写真に、ノリノリで挑む浅田家の舞台裏が描かれ、ほっこりした笑いを誘います。

家族写真を撮ることは、家族への愛情表現にほかならない

©2020「浅田家!」製作委員会

政志は、東日本大震災後に訪れた被災地で、津波によって泥まみれになった写真を洗浄するボランティア活動をしている小野陽介(菅田将暉)と出会います。ここでは、イケメンオーラ封じの菅田さんもすばらしい。余談ですが、小野さんにも実在のモデルがいるそうで、その方は菅田さんと雰囲気が少し似ているそうです。政志は被災者に寄り添いながら、小野たちの手伝いをしていき、家族が一緒にいる時間を切り取った想い出の写真が、いかに大切なものなのかを改めてかみしめていきます。

ある時、津波で父親を失った少女が、洗浄された写真が貼り出された場所を訪れ、在りし日の父親の写真を探しますが、見つかりません。また、政志がカメラマンであることを知ると、「私も家族写真を撮ってほしい!」と願い出るのですが、そこからの展開が実に胸アツです。

ネタばれは避けますが、最後まで観ると、家族写真を撮るという行為自体が、家族への愛表表現だったということを再確認させられます。子を持つ親の目線や、かつて子どもだった大人が、改めて自分の親を想う目線、そして、子どもから見た親への目線と、三方向から、家族の絆の尊さが浮き彫りにされていきます。

折しもコロナ禍で、台風などの自然災害も多かった2020年。家族や知人のことで、悲しい想いをされたり、故郷への帰省も思うようにできなかったりする状況が続いています。そんななかで本作を観ると、自分にとって大切な人々との絆を見直せたり、他人を思いやることの大切さを気づかされたりしてくれそうな気がします。きっとまだまだクチコミでロングラン上映していく気がしますので、ぜひチェックしてみてください。

『浅田家!』は10月2日(金)より全国公開中
原案:浅田政志「浅田家」「アルバムのチカラ」(赤々舎刊)監督・脚本:中野量太 脚本:菅野友恵
出演:二宮和也、妻夫木聡、黒木華、菅田将暉、風吹ジュン、平田満…ほか
公式HP:https://asadake.jp/

文/山崎伸子

©2020「浅田家!」製作委員会

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