子育ては日々悩みの連続ですね。保育者歴47年、常に子どもに寄り添い、ママたちからの信頼も厚い自主幼稚園「りんごの木」の柴田愛子さんが、豊富な経験を元に、悩めるお母さんにアドバイス。
自分の思い通りにならないと、ものすごい「かんしゃく」を起こす娘。私の育て方が悪かったのでしょうか
娘は小さいときから癇が強く、自己主張が激しいタイプです。今は、狂ったように泣き叫ぶことは減りましたが、自分の思い通りにならないとわめいたり、トイレに鍵をかけて閉じこもったりします。
先日も娘が「運動会が終わったら、回転寿司が食べたい!」と言うのでお店を予約しました。しかし当日、気が変わったらしく「別のレストランに行きたい!」と言うので、回転寿司の予約をキャンセルしました。
夕方レストランに行って、メニューを見ていると娘が「メニューが変わっている!」と怒り出しました。どうやら娘は、食べたいものが決まっていたらしいのですが、メニューが変わったようで…。ほかのメニューやデザートを勧めても聞く耳持たず! 「やっぱりお寿司にする」と言ったり、「何も食べない! このお店を壊したい! 社長を殺したい!」とまで言い出しました。いつもだと怒るのですが、この日は運動会を頑張ったごほうびで来ていたので「食べたくないなら、食べなくていいよ」と伝えました。すると、しばらくして娘が「ママ~」と膝にのってきて甘え始め、機嫌を直しました。
娘が、こんなに怒りっぽく、わがままなのは育て方の問題ですか? 私は厳しく怒ることもありますが、主人は基本的に子どもたちに甘く、滅多に怒りません。(2年生の女の子のママ)
癇(かん)の強いのは気質。育て方の問題ではありません。
運動会の後で、娘さんは疲れていたのではないですか? 小学生になっても、疲れているときは幼児のだだっ子と同じで、お母さんが何を言ってもダメで、グズグズばかり。
とくに癇の強い子は、運動会などのイベントでは緊張しやすくて、頑張り過ぎる傾向があります。そのため、人一倍疲れやすいです。家に帰ってくると、そうした反動から爆発する子は少なくありません。運動会で、たくさんの保護者が見に来て、自分の出番があって…、かなりしんどかったのでしょう。
かんしゃくを起こしたときは、気持ちが切り替わるまで見守って
こういうタイプの子は、イベント後の外食はやめたほうがいいです。いつも通り、家で夕食をとったほうが、子どももリラックスできて気持ちが安定します。まして、事前にその日の食べたかろうものを想定して予約するのは無駄足です。その日、そのときになってみないとわからないのが気性の激しい子の気持ちですから。
また怒りのスイッチが入ってしまうと、何を言ってもダメなので、お母さんは怒りの渦に巻き込まれないようにすることが大切。暴言を吐かれたりすると、叱りたくなるでしょうが見守ってください。
子どもが怒っているときは、自分で自分をどうしていいかわからない状態です。そんなときに叱ると、火に油を注ぐだけです。手をつけられないときは、手をつけずにほっておくか眺めているしかありません。
「“ママ~”と膝にのってきて甘え始め、機嫌を直しました」とありますが、お母さんに甘えたことでやっと気持ちが落ち着いたのでしょう。大泣きして気持ちを切り替えたりする場合もありますが、20~30分ぐらいで気持ちは切り替わります。そのときを待ってください。
癇が強いのは気質で、育て方の問題ではありません。癇が強い子は感性が豊かで、成長するに従い、個性が際立っていくので将来が楽しみですよ。


教えてくれたのは

保育者。自主幼稚園「りんごの木」代表。子供の気持ち、保護者の気持ちによりそう保育をつづけて36年。小学生ママ向けの講演も人気を博している。ロングセラー絵本『けんかのきもち』(ポプラ社)、『こどものみかた』(福音館書店)、『あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます』(小学館)など、多数。
イラスト/海谷泰水