子どもを伸ばす毎日30分の”語りかけ”の極意とは?【イギリス発の語りかけ育児2】

『0~4歳 わが子の発達に合わせた”語りかけ“育児』(著/サリー・ウォード、監修/汐見稔幸、訳/槙 朝子、発行/小学館、2200円・税別)をご存じですか。同書は、イギリスの言語治療士・サリー・ウォードさんの書籍『Baby Talk』を翻訳したもので、原書はイギリスで評判に! 日本版の『0~4歳 わが子の発達に合わせた”語りかけ“育児』は、テレビや雑誌などで多くの反響を呼び23万部を発行しています。「語りかけ育児」とは、どのような関わり方なのでしょうか。9か月から1歳までの対応の一例を紹介します。

赤ちゃんのことばを豊かに伸ばす”語りかけ“育児とは?【イギリス発!語りかけ育児1】
「赤ちゃんに、どんなふうに話しかけてよいのかわからない」「ことばの発達が気になる」と悩むママ・パパは少なくありません。そうした子育ての悩みを...

「語りかけ育児」を始める前に知っておきたいこと

月齢・年齢ごとのことばの発達、聞く力などをチェック!

同書では月齢、年齢ごとに、発育の様子やことばの発達、聞く力などを解説しているので、まずは発育・発達の目安を確認しましょう。

例えば9か月頃になると、ことばにますます興味を示し、新しいことばをじっと聞くようになります。ほかの人の身振りやことばが何かを表しているということが、以前よりはっきり理解できるようになります。

さらに11か月頃になると、「もっとほしい?」といった簡単な問いかけがわかるようになり、首を振るなど身振りで返事をする子も。また大人の注意を引こうとして呼びかけたり、「○○がしたい!」と主張したくて声を出したりすることが増える時期なので、赤ちゃんが何を伝えたいのかわかりやすくなります。

「語りかけ育児」を行う際の注意点

「語りかけ育児」を行う際、主に注意してほしいのは次の3点です。

●子どもと1対1で向き合う時間を1日30分作ること。

●その時間はテレビなどは消して、なるべく人の出入りは避けて。静かにリラックスできる環境を整える。

●同書の中で紹介されている月齢・年齢に合う言い方で語りかける。無理にことばを引き出そうとするのはNG

家庭で簡単にできる!「語りかけ育児」実践テクニック

子どもの様子をよく見て、声をかける

子どもの様子をよく見て、子どもが興味を示す物やできごとに一緒に注意を向けましょう。子どもがクマのぬいぐるみに手を伸ばしたら「それはクマちゃん」と名前を言ったり、クマのぬいぐるみを棚から落としたら「落っこちた」と動きを語りかければOKです。

ある研究では、子どもが注意を向けているものの名前を言った場合と、大人が勝手に選んだものの名前を教えた場合を比べると、前者のほうがはるかにことばを覚えることがわかっています。

動きとことばを結びつける関わりをする

ことばの意味がだんだんわかってくる時期なので、例えば「高い、高い!」をして遊ぶときは、「高い、高い!」と大人が言うと、抱き上げられる動きと結びつき「これが高い、高いだ」とわかるようになります。

短いことばで、正しい文法で語りかける

語りかけるときは、意味がわかりやすいように短い文が基本。この時期の赤ちゃんは、1語分の理解レベルがあるので、例えば「ネコちゃんだね」「ボールよ」と話しかけましょう。また言い回しは簡単でも正しい文法を心がけて。机の上に、犬のぬいぐるみがあることを伝えるときは「ワンちゃんが机の上にいるわ」と語りかけます。「ワンちゃん、机」はNGです。この時期に、大人が簡潔に語りかければかけるほど、子どもの文の長さがどんどん長くなるというデータもあります。

同じことばを繰り返し伝える

同じことばを何度も繰り返し伝えることも大切です。私たち大人も、新しい単語を覚えて使えるようになるには、いろいろな文の中で何度も繰り返し聞かなければなりません。それは子どもも同じこと。そのため「ワンちゃんがいる。かわいいワンちゃん。ワンちゃんおいで」など、何度も同じ言葉を使って語りかけましょう。

言語聴覚士・中川信子先生からmessage

 大人にできるのは、子どもの力を最大限まで伸ばす手助け

本文にくりかえし出てきますが、子どもは自分から育つ力を持っています。まわりの大人にできるのは、その力が最大限まで伸びるように手助けすることです。

そのためには赤ちゃんのころから、視線の方向や声の出し方など、子どもの行動を注意深く観察し、その行動の底にある意味(興味や気持ちのありよう)を読み取り、子どもの気持ちに沿った対応をしてゆくことが大事です。

この「語りかけ育児」は、実際にやれそうな、具体的方法の提示という点で、親ごさんだけでなく、子どもにかかわる多くの人たちの役に立つでしょう。

昨今、いろいろ取りざたされる思春期の問題も、乳幼児期から子どもに合わせた対応をすれば、その幾分かを、減らすことができるのではないか、とすら思います。(同書・解説より一部抜粋)

中川信子(なかがわ・のぶこ)

言語聴覚士。「子どもの発達支援を考えるSTの会」代表。小児の言語発達遅滞に対する支援を専門として、相談、指導にあたっている。『0~4歳 わが子の発達に合わせた”語りかけ“育児』では、言語聴覚士としての立場から指導に関わった。

   

『0~4歳 わが子の発達に合わせた「語りかけ」育児』

著/サリー・ウォード 監修/汐見稔幸 訳/槙 朝子

発行/小学館、2200円・税別

記事監修

汐見稔幸|東京大学名誉教授。日本保育学会会長。

東京大学名誉教授。日本保育学会会長。一般社団法人家族・保育デザイン研究所理事。専門は教育学、保育学、育児学。NHK Eテレの『すくすく子育て』の出演でもおなじみ。保育者と保護者の交流誌『エデュカーレ』編集長。著書に『新装版 0~3歳能力を育てる 好奇心を引き出す』(主婦の友社)、『3~6歳 能力を伸ばす 個性を光らせる』(主婦の友社)など多数。


構成/麻生珠恵 写真/山本彩乃

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